瀕死の双六問屋


     「瀕死の双六問屋」(忌野清志郎著・光進社)は、一見、キヨシローが面白可笑しく音
    楽業界を揶揄したエッセイ集のように見えるが、実は彼のミュージシャンとしての信念を
    驚くほど率直に書き綴った書簡だった。キャリアの中で三度も発売中止に見舞われてきた
    キヨシローは、業界の現状に対しての怒りや不信感を隠さない。歌えない奴が偉そうにふ
    んぞり返ってる姿イコール、プロデューサーだと言う。RCはもう古い、古いものばかり
    やらされたんじゃたまらない、と言ってのける。今年3月に行われた30周年記念ライブ
    のステージ上で、彼は終始、現在のバンド名「ラフィータフィー」を名乗り、最新アルバ
    ムの曲ばかりを歌っていた。それは渋谷陽一氏の言うように「過去によって評価されるの
    ではなく、今で評価されたい」という彼の意思の表れなのだろう。この本を読んで、再度
    キヨシローの貫く1本の「筋」といったものを認識したのだった。



                                     2000/10/13
                                       Esme



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