The Circle Tour '93-'94
佐野元春 With The Heartland
1993.12.24(FRI)神奈川県民ホール

      【Set List】


 「元春のコンサートのここが好き!!というのを一言で言うと?」―――会場入口で配布されるリーフレ
ットの中のアンケート用紙にこういうQuestionがある。改めて尋ねられるとどんなふうに答えようかと悩ん
でしまうけれども、こう書いてみた。「元春とハートランド、そしてオーディエンスのPower & Smile に
触れられるところが!」
 いつもの"Green Onion"が流れ始めると、客席の照明が落ち、やがて暗闇の中、メンバーたちと元春がス
テージに登場する。オープニングはニューアルバムの1曲目でもある
「欲望」。まず横浜のオーディエンス
の歓声と熱気に改めて驚かされる。ステージから強いブルーのライトに照らされ、元春の姿が影となって浮
かびあがる。このツアーを見るのは3回目。けれど元春たちの演奏の充実ぶりはすでにこのオープニングで
わかったのだった。音のうねりを全身に感じる。黒人女性コーラス2名が加わっている。おまけに今夜の元
春は、いつものチェックのジャケットではなく、スーツにサングラスだ。(そう、ありふれた夜ではなく、
クリスマスイブなのだから) 大がかりなステージセットはなく、後方に幻想的な光の環が次々と映し出さ
れていく。
 2曲目の
「Complication Shakedown」以降は、いつものように自分の身体が踊りだしていることに気づ
く。遠い遠いと思っていた3階席はぐっと近くに感じられ、すっかりステージに引き込まれていく。ハート
ランドのメンバーがお揃いでグリーン系のスーツに身を包んでいることに気づいたのは、照明のせいもあっ
て随分と先のことだった。
 
「どうもありがとう!クリスマスイブ、こんなに沢山の人たちが集まってきてくれて、僕等とてもうれし
いです。どうもありがとう!――僕等の新しいアルバム「The Circle」アルバムから何曲か歌います。まず
はこの曲から」
「Tomorrow」が始まる。いつか元春は「自分の作品は聴き手との関係の中で初めて完成
する」と言っていた。私にとっても、新作を手にしたあとライブに出かけてこそ、作品の本質に触れること
ができるように思えてならない。CDだけでは決してわからない、この曲のGroove、魅力・・・「あ〜この
曲、こんなにいい曲だったんだなあ」と改めて感じ入る。Tokyo Be-Bop のイントロからイカしている
「新
しいシャツ」
♪あせらない 迷わない 涙も溢れすぎない♪  ビートに合わせて自然に身体が左右に揺れ
ていく
「The Circle」「今までのようには〜しない」と続くこの曲は確かに詞が大変だ。そこで元春は1
枚の紙を左手に持ち、時折それを見ながら歌うのだが、それがいつしか一種のスタイルとなって逆にカッコ
いいから不思議だ。続いて、元春自身ライブで演奏するのが楽しみだと語っていた
「君を連れてゆく」 も
う何度も何度もCDで聴いているのに、まるで初めての曲のようにサウンドと詞が心に響いてくるのは何故
だろう。♪重い荷物は捨てて/遅すぎることはない/光の中の波のように/二人の力を重ねて/これからは
新しいルールを作るのさ♪ 元春と長田さんが並んでギターをかき鳴らしている姿が印象的だ。
 前作「Sweet 16」から、掛け合いも楽しい
「ボヘミアン・グレイブヤード」に続いて「Wild Hearts」
途中「ラジオに流れる・・・The Beatles!」何と
「All You Need Is Love」を演ってくれる。会場も大喜び
だ。
 
「Young Bloods」にのせてハートランドのメンバー紹介。(このところメンバー紹介といえば「Individu-
alists」だったからとても新鮮に感じる) そして間髪入れずに
「So Young」ダンスタイム!前列のカップ
ルも、ひとりぼっちの男の子も、子供連れの夫婦もみんな! やがて
「Someday」が終わると、元春はマー
チの演奏に合わせて、ステージ右袖からクリスマスツリーを引っ張ってきた! まるでマジシャンのような
振る舞いでパッと電飾をつけ、そしてこの夜のための
「Christmas Time In Blue」が始まる。去年のクリス
マスは神戸でのライブだった。今年のクリスマスイブもこうしてこの曲を歌っていられるなんて心からうれ
しい。「ホワイトクリスマス」のワンフレーズをはさむベースの小野田さん、「ジングルベル」をはさむ長
田さん、クリスマスならではのこのひととき。この曲に出会って早8年、
"Tonight's Gonna Be Alright!"
そしてこれまでのツアーでは中野サンプラザホールでしか見られなかったミラーボールからの無数の星たち。
ラストにはステージ後方に流れ星が! ほんの一瞬だけれど、心に残る演出に私からも"Merry Christmas!"
 アンコールの1曲目は
「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」やっぱり私はこの元気なオリジナルバージョン
が好きなんだ。続いてこれもまた「Time Out! Tour」以来の
「Sugartime」、"Rock! Rock! Rock!"と腕を
振り上げる。
「僕等、結成して初めて、みんな同じ服着てみたんだ」の言葉には会場も大受け(笑)「カッ
コいい!」「似合ってるよ!」という声が飛び交う。
「今夜はクリスマスイブ、みなさんの身体もみなさん
の心も僕はとても熱くしたいと思います」
そう言って始まったのは「悲しきRadio」、「オーバーヒート!」
のあとにはギターを抱えたままステージ左に思いきり膝をついてスライディングしていく元春。あ〜なんて
カッコいいんだろう!とどこまでもまた惚れ直してしまう私。
「アンジェリーナ」まではさんで久々のデト
ロイトメドレー、これもあまりにうれしい。ナポレオンフィッシュツアー以来だ。「ここ、そこ、あそこの
君、心の痛みかなぐり捨てて、ここにイヤな奴は1人もいないぜ!」エンディングでステージの中央をくる
くる回っている元春、ハートランドの音を全身に浴びて。
 
「クリスマスイブ、チケットを買ってくれてそしてこのホールに集まってきてくれて、そしてみなさんと
一緒にこの時間が一緒に過ごせたこと、とても光栄に思っています。今夜はみんなどうもありがとう!――
The Circle Tour は今月の初めにまだ始まったばかりで、来年3月、4月、いろいろな街に行っていろいろ
な人たちの前で演奏します。そしてずっと全国一周をしてきて、また関東、東京、横浜に戻ってきて大きな
ところでコンサートできると思います。その時、またみんな集まってきてくれると僕もとてもうれしいです
――そして今夜はクリスマスイブですけれども、2つ、言いたいことがあります。1つは、来年がみなさん
にとってすばらしい1年でありますように! そしてもう1つは、今夜、僕等のこのコンサートが終わった
あともまた、クリスマスイブ、みなさんすばらしい夜を過ごしてください」

 大歓声の中、メンバー紹介――そして最前列の男の子からサンタの帽子を受け取り、握手をして去ってゆ
く。アンコールの拍手は続いていたけれど、もうこれで終わりだろうな、と思っていた・・・つい、コート
まで着かけたところへ、みたび元春が登場!
「彼女はデリケート」がラストだった。
 終演後、ロビーでいつもの仲間たちや、1年ぶりに会う人たちと挨拶を交わしてから足早に関内駅へ向か
う。その時少し私にとっての「The Circle」の意味を考えてみた。元春は「無垢の円環」というヒントをく
れた。私はきっと新しいツアーで元春に会うたびに、イノセンスを取り戻している。元春やすばらしい音楽、
いろいろな人たちに出会えたことに心から喜びを見い出す。この日の座席(3階5列52番)はなんと約6
年前のPisces Tourの時と全く同じだったのだ。そう、いつだって私はここに戻ってくるよ。最高のクリス
マスプレゼントをありがとう。


※12月4日戸田市文化会館を皮切りに、94年4月、初の日本武道館まで全46公演。通算10回目に当
たる全国ツアー"The Circle Tour"はまだまだ続いていく。
 見知らぬ街をひとり、背すじを伸ばして歩いていくのは結構楽しい。ましてそれがコンサート会場に向か
う時ならば尚更。見知らぬ土地のオーディエンスの中に身を置いて、そして同じように声援を送り、やがて
同化していくのはとても楽しい。
 さて、今回ちょっと残念だったのは、一度は発表された地元「よこすか芸術劇場」でのライブが中止にな
ってしまったこと。幻の2月23日となってしまった。Visitors Tourで横須賀に来てくれた85年3月、
私は当時受験生ということもあり、見れずじまい・・・Cafe Bohemia Meetingの時も今回と同様幻・・・
というわけでまだ横須賀で元春を見たことのない私である。
(その後、長年の希望は96年のFruits Tourで叶うこととなる)



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