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ビデオ制作ディレクター 林渉さんに訊く
ニュービデオ制作エピソード


過去、ビデオになっていない3曲を残せたこと

ニュービデオの編集を終えたばかりというビデオ・ディレクターの林渉さん。彼は、元春
との出会いがきかっけで今の仕事を始めたという経歴の持ち主、自称"元春フリーク"だ。
気になる武道館、そして横浜スタジアムのビデオ2作品について伺った。


僕は元々CMなどの撮影をやっていたのですが、初めて音楽ビデオを撮ったのが、佐野さ
んのツアーだったんです。そのときにアシスタントでついていたのですが、ライブステー
ジの嘘のない世界を記録できる仕事に魅力を感じたのと、佐野さんの、がむしゃらなパワ
ーに感動して"いつかは佐野さんのステージを撮りたい"という思いを目標にしてきました。
その初めての佐野さんとの仕事が、ニューヨーク行き直前のロックンロールナイトツアー
のコンサート、そして今回がハートランドの解散という、また節目の所で仕事することに
なり、佐野さんとは運命的なものを感じますね。

 佐野さんとの仕事は、佐野さん自身がこのときステージでどういう気持ちで歌ったか、
僕がそれをどんな気持ちで撮ったかを話し合っていく共同作業ですから、仕事していてと
ても楽しかったです。元々僕は "佐野元春フリーク"だから、過去にビデオに入っていない
曲を入れたかった。それが『So Young』『約束の橋(オリジナルバージョン)』『スタ
ーダストキッズ』です。これらが入ったことで、ある意味で今回の僕の仕事は果たせたか
と思うんです。武道館はNHKの放送用(『ライブ・レジェンド』)として全くビデオ化は
考えていなかったんですが、『欲望』から始まるサークル・ツアーは完成度が非常に高か
ったので、ぜひ記録に残そうと佐野さんと話し合いました。


三重苦、四重苦の状況をはねのけて生まれた作品

NHKのTV放送用としては初めから武道館の2日目だけを撮ることになっていました。こ
の日、実は佐野さんは声が出ず、リハーサルを中止したほどだったんですが、お客さんの
熱気にあおられたのでしょうか、結果的には本来の調子が出たとてもいいライブになりま
した。そして、この時点でバンドを解散することはわかっていましたから、ザ・ハートラ
ンドの記録を残すということをテーマに撮った、そういう結果が映像に出ています。

『LAND HO!』は16ミリフィルムでの撮影でした。佐野さん自身がフィルムが好きだとい
うことと、記録を残す意味もあって全曲フィルムで撮影したいと、佐野さんと僕とで希望
しました。了解してくれたエピックソニーには本当に感謝しています。

 選曲については、普通だったらコンサートの最初から最後までの流れを追う構成にすれ
ばいいのだけれど、限られた時間に3時間半のライブを観せるわけですから、そういう次
元でないところで考え、まず『ガラスのジェネレーション』で全体の流れを観せています。
これは佐野さんのアイデアです。そして当然最後の曲はアンコールの『サムデイ』になる
ところですが、この曲は武道館の方が決定版という佐野さんの強い思いがあったのと、こ
れから新しく始まるという意味を持たせて『新しい航海』に決まりました。

 正直いって当日は悪天候のせいで、音の面では電波障害があったり、視覚的にもテント
が邪魔だったり、映像として残すには三重苦、四重苦の状況でしたが、それらをはねのけ、
このビデオとWOWOW(『栄光のマイルストーン』)は、映像として残せるものになった
と思っています。佐野さんも満足してくれているようで、今日も電話で「改めて観て、す
ごくいいビデオだ」と言っていました(笑)。

 僕がこの世界に入ったのは佐野さんのおかげですから今回、ザ・ハートランドとも最後
ということで何かお返しをしたかった。これからの佐野さんの活動にも非常に興味があり
ますし、僕もここで一区切りつけ、方向性をもう一度見直していこうと思っているんです。
(94/11/25)


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