「エズミ、宝塚の手塚治虫記念館へ行く」の巻



 かねてから一度は行ってみたい!と思っていた手塚治虫記念館へ、休暇を利用して訪れる
ことができた。4月中旬のとある快晴の午後、JR宝塚駅から桜満開の花のみちを通って歩
くこと約10分。シンボルモニュメント「ガラスの地球」の輝く建物、それが宝塚市立手塚
治虫記念館だ。

 私は手塚作品に直接影響を受けた世代とは言えないのかもしれない。むしろ彼が亡くなっ
てから、アトムの本やブラック・ジャックの文庫版を手に入れ、改めて彼の偉大さやヒュー
マニズムに触れていったというわけだ。

 空をこえて ラララ 星のかなた
 ゆくぞ アトム ジェットのかぎり 
 心やさし ラララ 科学の子
 10万馬力だ 鉄腕アトム ♪


 入口を入るとまずはコンパクトな「リボンの騎士王宮風ホール」、床の大きなモザイク自
画像や天井のステンドグラスも綺麗だ。左手から進んでいくとカプセルのような大きなガラ
スの筒が何本も並び、その中に少年時代のマンガ作品や、昆虫採集の記録ノート、様々な作
品の原画、セル画、単行本等、貴重な資料が展示されている。1Fつきあたり奥には映像ホ
ールがあり、この日は「オサムとムサシ」という、自然と少年・平和をテーマとした20分
弱のアニメーションが上映されていた。

 さて階段を上がって2Fへ行くと、まず企画展
示室というスペースがある。ここでは期間毎にい
ろいろと内容が変わるようだが、今回は「鉄腕ア
トム展」(〜6/27まで) 沢山の原画やセル画、
アトムグッズが並んでいた。「あっ」と驚き、う
れしかったのは、このコーナーの一角に佐野さん
の自筆の詩「僕は愚かな人類の子供だった」が展
示されていたこと。小さい子にも読みやすいよう
にという配慮があってかどうか、以前活字で発表
されたものより、ひらがなの部分が多くなってい
たのが印象的だった。

 2Fにはこの他にも、グッズ販売コーナー、手
塚治虫の全作品を自由に読めるライブラリースペ

ースもある。そして一番興味深かったのが「情報検索機」、パソコン画面からアニメ画像を
はじめ、手塚作品に関する様々なデータを引き出せるのである。その中の項目のひとつに
「アーチストたちのベスト5」というものがあり、多くの作家、文化人、ミュージシャンの
名前を見たのだが、ここにも佐野さんの名前を発見! 以下が元春が選んだ5作品およびコ
メントである。

 ◎0マン
 ◎鉄腕アトム
 ◎ロストワールド 
 ◎メトロポリス
 ◎ジャングル大帝

 
 ●0マン     → 僕の幼年期に影響を与えた作品。鉄腕アトムと並んで
            愛すべき主人公。
 ●鉄腕アトム   → 僕の幼年期にもっとも大きな影響を与えた作品。アト
            ムが歩く時の靴ずれの音を何度も試してみたがうまく
            いかなかった。
 ●ロストワールド → 未来への憧憬パート1。
 ●メトロポリス  → 未来への憧憬パート2。
 ●ジャングル大帝 → 「成長するってどんなこと?」この作品のテーマは、
            過去、ロックンロール音楽でもっとも多くとられてき
            た主題と同質。手塚氏の映画アニメーションの音楽を
            担当するのが夢だった。

 パソコンコーナーではこの他にも、鉄腕アトムクイズやブラックジャッククイズなどにも
トライして、時間の経つのも忘れ、すっかり手塚ワールドを堪能したのだった。

 手塚氏が少年時代を過ごした宝塚の町も、大震災で被害を受け、ところどころで痛々しい
傷跡を目にした。そんな中でこの記念館は、小さな「平和の象徴」のように感じていた。ま
たいつか訪れようと思う。



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