Sweet
Baby
あべちゃん
特集 夜に染まった空 やみが月の影を映す
★1980年、佐野さんのデビュー以来ずっと活動を共にしてきているThe
Heartland、このバンドで
ピアノを担当しているのが"Sweet
Baby あべちゃん"こと阿部吉剛さんです。ステージの上ではいつも
少し奥まったところで静かにプレイしているといった感じ。どちらかと言えば目立たない存在ですが、
私はそのナイーブさ、穏やかさが大好きなので、今回は特集で紹介したいと思います。
阿部吉剛(あべよしたけ)1956年9月27日生 天秤座 静岡出身
●僕が一番最初にあべちゃんに会ったのは、僕がハートランドというバンドの構想があって、そしてあ
ちこちに連絡して、そして一番最初にスタジオの中に入ってきてくれたのが阿部だったんだよね。それ
はね、赤坂の地下に入ってくBACK PAGE
スタジオでね。それでこれから僕の頭の中にはハートランド
という構想があったんだけども、その中で特にキーボードの部分がものすごく大切なパートで、彼がス
タジオに一番最初入ってきて、あの、笑ったのを憶えてて。その時の笑顔を僕は憶えているんだよ。そ
れで何かね、あのサーフィンやってるだろ?で、その時も何か真っ黒でね。波に乗ってきたとか何とか
言ったんだよ。それで何か、てれっとしてた(笑)波に乗ってもう疲れてしまったという感じで(笑)
(中略)毎日どのくらいレッスンしてるの?
「あんまりしないですね。うん、気が向いてやるくらい」
●Favoriteアーティストのところでさ、ミルトン・ナシメントっていうか中南米の、ブラジルのアーテ
ィストがあるけれども、彼のどんなところが好きなのかな? たとえば他のみんなだったらばヘビーロ
ックだとかあるいはポップスやロックンロールだけれども、僕たちたとえば日本にいて中南米の音楽と
いうのは、あまり触れるチャンスがないよね。どんな風にして知り合ったのかな?
「やっぱり聴いた時は最初あんまり憶えてなかったんだけれど・・・不思議で、何もこだわりなく音楽
作ってるみたいなところが・・・」
●たとえば僕なんかミルトン・ナシメント聴いて、すごく素人の聴き方だけれども、たとえばリズムに
してもすごくルーズだよね。実際はものすごくいろんなことやってるんだけども、全体的としてのタッ
チはすごくルーズに聴こえるじゃない?
「うん、やっぱ思い通りにやってるみたいなとこが好き」
●難しい質問だけども、阿部がたとえば自分がステージの上でピアノ弾いたり自分で作曲したりすると
きに、その音楽に求めるものってどんなものなんだろ? 難しい質問だけれども。
「僕はきれいなのが好き」
●たとえば美しい音楽・・・
「そうだね、あと自由な感じ」
●今日彼が持ってきたのは"Will You Love Me
Tomorrow?"、これは一番最初シュレルズのバージョン
でヒットしましたけれども、今聴こえてるのは、これは・・・
「キャロル・キング、僕が高校生のとき。これで、ピアノ弾きたいなぁみたいな感じになってきた」
●キャロル・キングの弾いてるピアノプレイを聴いて。これは「つづれおり」というアルバムに入って
る・・・
「そうそう」
●コピーやなんかしたの?
「うん、した。初めてやり始めた」
●友達とバンドを組んだりした時の思い出とかある?
「う〜ん、最初は何の楽器やるとか考えなかったから音楽できればいいなと思っていたんだけれども、
ま、キャロル・キング聴いてピアノ弾いて歌いたい、みたいな感じになってきた」
●そして今、作曲しているんだろ?
「う〜ん、いろいろやってみてるんだけどなかなか・・・」
●やっぱり自分で―――僕としては、僕はハートランドのメンバーとしてたとえばたかしなんかも今、
曲作っているし、ぜひ自分のプロデュースで一枚のアルバムを作ってもらいたいと思ってる。
「やってみたい、てのはあるけど」
●えーと、ピアノを弾いてくれているSweet Baby
あべちゃんの推薦してくれた曲、 "Will You Love
Me
Tomorrow?" キャロル・キングのバージョンでしばらく聴いてもらいます。
(1982年12月6日放送 NHK-FM MOTOHARU
RADIO SHOWより)
「えーと、ピアノの阿部です。今回はカフェボヘミアツアーに参加して、ライブとか楽しみたいと思い
ます。アスファルトの下に砂浜があるかもしれまい・・・なんつって・・・」
いつもおとなしい、哲学的なSweet
Baby あべちゃん、ふっと目を離すとアジアの国々へと旅立ってし
まうDangerousな男です。
(1986年11月7日放送 NHK-FM MOTOHARU
RADIO SHOWより)
最初に佐野元春に会った日: 1979年ごろ、"バッドガール"の唄入れを見に行く
影響をおよぼした人物: 3つ年上のいとこ
最初のバンド: ジャンク・リバイバル
私の秘密: 秘密はひみつ
好きな色: エメラルドグリーン
好きな食べ物: マンゴスキン(果物)、イカの粕漬のお茶づけ
(ナポレオンフィッシュツアー1989 パンフレットより)
■COMPOSER
ミルトン・ナシメント トニー・ミヨルタ ラオ・ボルヘス 細野晴臣 キャロル・キング
バート・バカラック 矢野顕子 レノン/マッカートニー
■PLACE
静岡 ポカラ バリ コサムイ マンペリエ
■FILMS
2001年宇宙の旅 イージー・ライダー 惑星ソラリス リキッド・スカイ 81/2
明日に向かって撃て! ジョンとメリー
■BOOKS
すばらしい新世界/オルダス・ハクスレー
島/オルダス・ハクスレー
路上/ジャック・ケルアック
ドンファンの教え・呪術師と私/カルロス・カスタネダ
ナチュラル・マインド/アンドリュー・ワイル
裸のランチ/ウィリアム・バローズ
■INSTRUMENTS
YAMAHA ミディCP YAMAHA DX-7
ローランドジュピター ローランドデジタルピアノ
(ピーシーズツアー1988 パンフレットより)
南米ブラジルのソングライター、ミルトン・ナシメントを敬愛する。1980年から1年を費やし、ヨ
ーロッパ、東アジア諸国を放浪。その間に知覚した、輪廻転生の思想とその思想から導かれるカルマの
法則が、後の彼のソングライティングに影響を及ぼしている。
(アルバム"mf VARIOUS ARTISTS
VOL.1"インナーより)
★最初に紹介したのはなんと、26歳の元春とあべちゃんの対談です。(何て口数の少ないあべちゃん
なんでしょう) サーフィンで疲れて「てれっ」としていたというくだりには思わず笑ってしまいます。
「きれいなのが好き」という答えはとてもシンプルで、キャロル・キングにひかれたというのも納得。
今、この文章を書きながら久々にアルバム「つづれおり」(Tapestry)を聴いているのですが、やはり
美しい・・・"Natural Woman"も大好きです。
1989年に発表されたアルバム"mf VARIOUS ARTISTS
VOL.1"(元春のプロデュースによるアーテ
ィスト作品集)の中には、あべちゃんの曲「ルナ・モレナ」と「コサムイの月」が収められています。
元春がプロデュース作業についてすでに82年のこの対話の中で触れていること、あべちゃんのFavorite
Placeに「コサムイ」の名が挙がっていること、いずれも"mf"とのつながりが見えてうれしくなってし
まいます。思えばあべちゃんの歌声を初めて聴いたのは「ルナ・モレナ」が当時の元春のDJ番組で紹
介された87年秋のこと。単なるスローバラードとは違う、とても神秘的なメロディーと詞・・・その
頃からますますあべちゃんファンになっていった私でした。
★「ピアノ、Sweet
Baby あべちゃん!」とステージ上ではいつも真っ先に紹介されるにも関わらず、ピ
アノが右側に位置しているため、運悪く右端の席に当たってしまうとまるっきりその姿が見えないという
悲しいことがよくあります。けれど、See Far Miles Tour Part II
の大阪公演終了後(11/18)、大阪
グランドホテルのロビーであべちゃんにお会いできました。
エレベーターからするっと出てきたところを何人かのファンに囲まれ、ひたすらサインや写真撮影。私
は遠くから眺めているだけで満足、のつもりがついカメラカバーを外し、つい手帳を取り出し・・・ あ
べちゃんは面倒がらずに応対してくれました。私のサインの番がまわってきた時の第一声は
「う・・・出ない」
そう、真新しいボールペンだったので初め出が悪かったのです。The
Heartlandの「The」の部分が薄い
のはそのため。
「あさって(11/20)相模大野に行きます」と私。
あべちゃん「それはすごい」
私「いえ、私関東から来たんです」とこんな会話を。
目がくりっとしていてとても若々しいあべちゃん。黒のセーターの上にいつのまにか帽子とチェックの
ジャケットを着て、堀川さん、たかしさん、小野田さん、スタッフたちと食事に出かけたようでした。ハ
ートランドの中で唯一の独身者と聞きますが、今でもそうなのでしょうか?! それはさておき、また次
のツアーでお目にかかれますように!
濡れた草と風の詩 砂にうまれた足跡 雲と昼のDance
朝にかがやく海 波がふたつの夢映してる 濡れた髪と青い息
かすかにふれるぬくもり 光る水のDance
「コサムイの月」
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