ベトカン一人旅
Vietnam & Cambodia
2008年2月22日〜27日

昨年7月に仕事が一段落時にトルコへ1週間の旅行。
その気になれば今の仕事でもしっかり休んで海外へ行けることが分かったのは収穫だった。
今回も2月に一段落する仕事。
昨年11月の時点で早くも2月後半の休みを申請しておいた。
幾つかの候補地の中からカンボジアのアンコールワットへ行くことにした。
それほど遠くなく、2月は乾季で観光に適しているという情報も決め手。
唯一の不安点は卒業旅行生が多そうなことくらいか。
日本からカンボジアへの定期直行便は無い(最近チャーター便が出来たらしい)。
アンコールワットのあるシェムリアップへはベトナムかタイを経由するのが一般的。
タイへは行ったことがあるので、未開の地であるベトナムを経由。
そしてどうせ経由するならベトナムへも滞在したい。
そんなわけでベトナム経由でカンボジア行きの航空券を探すことにした。

 

準備

前回トルコ行きを決めた時は7月下旬の航空券を5月上旬に探し始めた。

今回ベトナム経由カンボジア行きは2月下旬を予定。

ネットで探し始めたのは11月上旬だが早くも満席の所が多数。

トルコのときもキャンセル待ちで取ったが、素直に1回で取れた例がない。

今回は飛行機の経由や発着時間も考慮して航空券を検索。

値段ではマレーシアを経由するマレーシア航空が1番安かった。

しかし経由の時間を見ると深夜にマレーシアに着いて翌朝にカンボジア/ベトナムへ出発。

必然的にマレーシアで1泊、深夜着早朝発だからマレーシアの街へも出られず1日潰れる計算になる。

安い航空券だと時間を犠牲にせざるを得なくなる。

経由や発着時間を考えると安い航空券もあまり魅力的に思えなくなる。

それらを検討した結果これまでは殆ど見向きもしなかった正規の割引運賃料金で目ぼしいのを見つけた。

周遊券で日本−ベトナム−カンボジア−タイ−日本という航空券。

日本からベトナムのホーチミン(サイゴン)に直行。

ホーチミンからカンボジアのシェムリアップへ直行。

帰りはシェムリアップからタイのバンコクを経由して日本に帰国。

日本−ベトナム・ホーチミン往復の航空券を買ってもベトナムとカンボジア間の往復は自力で手配する必要がある。

ところがこの周遊券を買えば全て含めての値段になる。

フライトスケジュールも午前中に日本を出て夕方にはベトナム着で帰国便も夜遅くの出発だった。

値段は格安航空券より数万高かったが、これで飛行機の移動が全て賄えると考えれば決して高くない。

タイを経由しながらタイでは何も出来ないのが惜しいが、タイは以前も行っているのでそこは我慢で。

航空会社も日本を発着する便はJALだし安心…と思ったら往路はコードシェア便でベトナム航空らしい。

ともかくそうした経緯で航空券を確保。

5泊6日(1泊機内)でホーチミンとシェムリアップを2泊ずつ。

ホテルも全て日本から予約して行くことにした。

当初はトルコ旅行のようにホーチミン・シェムリアップの最終日だけ高級ホテルにしようかとも思った。

しかし2泊するので荷物をホテルの部屋に置いて観光できる利点を選択。

ホーチミンの中級ホテルに2泊、シェムリアップの中の上クラスのホテルに2泊することにした。

ホーチミンでは特に予定を考えていなかったのだが、偶然にも地元の友人が同じ時期にベトナム旅行をすることが分かった。

それならば現地で合流しようという話に。

向こうは会社の同僚とホーチミンに4,5泊の予定らしい。

ベトナムは2度目らしいので私よりは慣れているだろう。

目的の無かったホーチミンで目的が出来た。

シェムリアップではひたすらアンコールワットとその周辺の遺跡群を見て回る。

郊外に遺跡が散らばっているらしいのでバイクタクシーかトゥクトゥクか何かをチャーターすることになりそう。

情報収集をすると本来は登ることができるアンコールワットの第三回廊は現在修復中だとか。

早くも再びアンコールワットへ行く口実が出来た。

 

 

2008年2月22日 金曜日

今回の航空券ではインターネットチェックインが出来なかったので従来通りカウンターでチェックインをしなければいけない。

いつも海外へ行く時の往路は電車を使っていた。

電車の方が安いし、渋滞も無いので時間も確実。

しかし今回は地元駅から出ている成田空港直行バスを使うことにした。

早朝に出るので渋滞もあまり無いだろうし、乗り換えに煩わされること無く一気に成田まで行ける利便性を考慮した。

10:30発の飛行機に乗るために2時間前にチェックインするには8:30には成田にいる必要がある。

始発のバスが7:20に成田着、次のバスが8:00に成田着だったので念には念を入れて始発バスで行くことにした。

朝の5:20発のバスだが車内は殆ど満席だった。

事前に予約をしておいて良かった。

当然車内では殆ど眠って過ごす。

電車で成田空港入りすると改札を出たところでパスポートチェックをされる。

バスだったらどうなるのかと思ったら、検問所がちゃんとあって係員がバスまで乗り込んできて全員のパスポートチェック。

トイレの中まで確認する徹底ぶり。

道が空いていたのだろう、バスは思ったよりも早く7時過ぎには成田空港に到着。

しかし私としたことが第1ターミナルと第2ターミナルを間違えていた。

今回使用する日本航空もベトナム航空も第2ターミナルだったが、終点の第1まで行ってしまった。

幸い第1と第2を結ぶ無料巡回バスが出ていたのでそれに乗って第2ターミナルへ。

少し時間をロスして7:30にはチェックインカウンターへ。

ところが今回搭乗する便のチェックインカウンターのオープンは8時〜となっている。

結局30分待たされることになった。

チェックインカウンターがオープンして無事にチェックイン。

チェックインの他に1つやることがあった。

出発の前々日に航空券を買った会社からメールが来ていた。

ホーチミンからシェムリアップへの航空券のスケジュールが変更になったという。

出発時間と便名が変更になったので出発空港のチェックインカウンターで変更の手続きをしてくれというもの。

カウンターでその旨を申し出て手続き自体は大したこと無かった。

しかし出発時間や便名変更は結構重大なことだろう。

今回は出発時間が早まる変更だったので、私がメールを見ていなければ飛行機に乗れなかった可能性だってある。

それを出発の前々日にただメールを送ってくるだけという対応は如何なものかと。

終わったことだし何事も無かったから良いものの。

チェックインも済ませて朝食は朝マック。

旅の始まりがマクドナルドってのも何だかなーと思いつつもまぁ万国共通ってことで。

一通りの手続きを終えるとさっさと出国手続きをしてしまう。

出国手続き後の方が人が少ないので落ち着ける。

搭乗ゲート付近で搭乗を待つ。

搭乗ゲートにある現地ホーチミンの情報を見ると気温30℃と書いてある。

この時点で着ていた上着は圧縮袋で圧縮してリュックの奥底に詰め込む。

日本航空の航空券を買ったが、往路はベトナム航空との共同運航便で機体はベトナム航空。

機内には団体と思われる日本人客が多数。

10:30発でいつものように機内ではヘッドホンをして外音を遮断。

ドリンクサービスと機内食以外は殆ど寝てすごす。

6時間強のフライトで16:40頃にホーチミン(サイゴン)に到着。

日本との時差はマイナス2時間なので、ホーチミン時間では14:40(以降の時間はホーチミン時間)。

飛行機を降りた瞬間ムワッと熱気が。

方々から上がる「暑い」という声。

気温30℃は間違っていなかった模様。

タラップを降りてバスで空港まで。

入国手続きもあっさり、税関にいたっては何も無かった。

とりあえず街へ出るための足を確保しないといけない。

その為にはベトナムの通貨であるベトナムドン(VND)を手に入れなければ。

空港にあった銀行の中で最もレートが良かったところで3,000円分をベトナムドンに両替。

3,000円=435,000ドン、こりゃまたレート計算がややこしい通貨だ。

1円が145ドン、1,000ドンで7円弱、以後のレート計算は1,000ドン≒7円。

ベトナムドンを手にしたのでホーチミン市街へ向かうことに。

手っ取り早い方法はタクシーだが最も安い方法は路線バス。

空港を出ると声をかけてくる客引きタクシーを無視して路線バス乗り場を探す。

バスは次々と出ているがどれも立派なバスで路線バスには見えない。

この旅で初めての英語でのコミュニケーション。

現地人に市街へのバス乗り場を聞くと少し歩いた先の国内線空港にあるという。

少し歩いただけで汗が出てくる、日本の夏と変わらない感じの気候。

バス停のような目印は無かったが、目的のバスは見つかった。

空港と市街を結ぶバスは152番のバスだとガイドブックに載っていた。

見るからにボロそうなバスで日本人旅行者は私だけだった。

市街まで3,000ドン(≒21円)、タクシーだと数万ドンかかるらしいことを思えば格安。

市街へ向かう途中の道は原チャリやバイクの洪水。

車以上に原チャリが多く、2人乗り3人乗りは当たり前で小さい子供含めた一家で4人乗りなんてのも。

空港から30分ほどでホーチミンの中心地であるベンタイン市場のバスターミナルに到着。

バスターミナルに到着したは良いが、バスターミナルを中心にして円になるように車道が走っている。

何車線もある車道を越えないとバスターミナルから出られない。

信号や横断歩道も無い。

現地人を観察していると車道に出て、歩いては止まりを繰り返して原チャと車を避けながら渡っている。

現地人が渡るタイミングで、現地人にくっついてようやくバスターミナルを脱出できた。

原チャバイク原チャ
ベンタイン市場前大通り(右の建物がベンタイン市場)

あとはガイドブックの地図を頼りにホテルまで徒歩。

歩いていても車道の原チャリや車のクラクションや熱気が伝わってくる。

久しぶりにいかにも発展途上な熱のあるアジアに来たなーという感じだ。

ホテルは日本から予約して行ったところ。

ようやく涼しい部屋に辿り着いてホッとしたのも束の間、友人との合流時間が迫っていた。

先に現地入りしている友人が泊まっているホテルのロビーで待ち合わせになっていた。

自分のホテルには不要な荷物だけ置いて身軽になってすぐに外出。

友人の泊まっているホテルはホーチミンでも屈指の高級ホテル。

1泊の値段で私が泊まるホテルが4泊は出来る。

場所はすぐに分かったのだが、そこへ辿り着くには幾つかの車道横断を伴う。

次第に慣れてきて感覚がつかめるようになってくる。

基本的には車やバスに注意をしていればなんとかなることが分かってきた。

原チャリに関しては小回りがきくので勝手に避けてくれる。

それでも毎回の道路横断が命がけ、これも発展途上アジアの醍醐味か。

約束の時間を5分ほど過ぎて待ち合わせのロビーに到着。

屈指の高級ホテルだがロビーはそう広くなかったので友人とはすぐに合流できた。

「おー、こんな所で会うとは思わなかったなー」

友人は会社仲間と十数人で来ているといい、この夜も翌日も食事やツアーの予定が入っているという。

少しだけ街をウロウロするかということで友人の案内で近くのベンタイン市場へ。

ホーチミンの中心にある巨大な屋根つき市場。

アジア的雑然さを体現したようなマーケット。

ムワッとする熱気やフルーツを売る一角のドリアン臭などまさにアジア。

方々から片言の日本語で話しかけられ、ときには手を引っ張られそうにもなる。

友人曰くここでは何度かスリに遭いそうだったという。

気をつけながら冷やかしつつ路上の物売りからビール1米ドル(≒110円)を購入して飲む。

ベトナムでは米ドルも普通に流通しているのでベトナムドン代わりに使うこともできる。

333ビール(バーバーバービール)、暑い中歩いてきたので実に美味い。

一通りぶらつき、エアコンの効いたホテルのラウンジでモスコミュールを1杯。

1杯8ドル(≒880円)、路上のビールとえらい違いだ。

ホーチミンの情報を幾つか仕入れた後に、予定が詰まっている友人とはそこでお別れ。

短い時間ではあったが、海外でこんな風に合流が出来て良かった。

続きは地元に帰ってからだな。

時間は18:30、だいぶ暗くなってきた。

ホーチミンに着いてからまだ酒しか口にしていない。

とりあえずベトナムと言えばフォー、ということでフォーの店へ。

フォー24なるアチコチに支店があるフォーの専門店。

牛肉フォーと333ビールで5万ドン(≒350円)。

5万なんて数字を見せられると高っ!と思えるが日本円にすると350円弱。

米の麺であるフォーと牛肉ベースのアッサリスープ。

付け合せの唐辛子を入れるとピリ辛になって美味しい。

ただし晩飯にするには1品だけでは物足りない。

飲み屋の帰りに1杯、がちょうど良い感じのアッサリさと量だった。

ブラブラ歩き、ハッピーアワーでビール1杯1万ドンとガイドブックに載っていたバーがあったので入ってみる。

店員に聞いてみるとハッピーアワーだけどビール1杯2万5千ドン(≒175円)。

ガイドブックに載っている値段とだいぶ違う。

西洋人だらけのスポーツバーでワイワイガヤガヤ実にうるさかったので1杯だけ飲んで退散。

まだ夜は長いが何せベトナムに着いた初日、今日はこれくらいにしておくか。

ホテル近くの路上の物売りからビールとミネラルウォーターを購入。

あまり意識せずに4万ドン(≒280円)と言われて払ったが後から考えたら完全なボッタクリ。

ビールと水が同じ値段で共に2万ドン(≒140円)なんて考えられない。

後でホテルのミニバーの明細見てみたらビール1本1万6千ドン(≒112円)。

ホテルのミニバーより路上の方が高いなんてありえない。

ベトナムの通貨感覚が身についていなかったがためのミス、次から気をつけよう。

ホテルは日本から予約していった中級ホテル。

到着したときは荷物だけ置いてすぐに出たので殆ど中を確認していなかった。

やや古めかしい感じはしたが1泊5,000円強にしては悪くない部屋。

ただ風呂のシャワーの出が弱くて困った。

チョロチョロしたシャワーでチマチマと頭と身体を流す。

ついでにTシャツや下着の洗濯も済ませる。

ボッタクリ缶ビール飲んで就寝。

 

 

2008年2月23日 土曜日

7:00過ぎに起床。

適度な緊張感を保っているからか旅先での目覚めはいつも良い。

ホテルの朝食は典型的なビュッフェタイプ。

その中にフォーがあるのがベトナムらしい。

アッサリスープに米麺はかなり朝飯向きだ。

行動開始は8:30、この日は1日ホーチミンをブラブラの予定。

外へ出ると曇り空、ムッとする暑さは相変わらず。

私の旅の基本形である徒歩でホーチミン観光を開始。

ホーチミンの目抜き通りを歩いているとバイクタクシーの兄ちゃんおっちゃんが次々に声をかけてくる。

バイクに乗っている人は半分くらいがバイクタクシーなんじゃないかってくらいアチコチから声をかけられる。

「ハーイ、オニイサン、オハヨ、ドコイクノ、バイクタクシー、シナイカンコー、ドンダケー、オッパッピー」

どこで覚えたのか怪しげな片言日本語を連呼。

基本的に苦笑いしてNo Thankyouと言って無視していれば勝手に離れていく。

イスタンブールでの勝手に観光案内しようとするヤツに比べればだいぶ良心的。

ホーチミン像のある人民委員会庁舎を経てサイゴン大聖堂と中央郵便局へ。

ホーチミン主要スポット
サイゴン大聖堂(左)と中央郵便局(右)

フランス統治下時代に作られたサイゴン大聖堂はどことなくノートルダム寺院を連想させるつくり。

中に入るのは無料だったので大聖堂内へ。

単なる観光地ではなく教会としても機能しているので中にはお祈りをしている人も。

続いて大聖堂の隣に立っている中央郵便局。

郵便局ながら駅みたいな外観でここもフランス統治下時代に作られた建物。

こちらも単なる観光地ではなく郵便局としての役目も果たしているため入場無料。

どちらもホーチミンの主要観光地だが、午前中だからかあまり人もいない。

郵便局をウロウロしていると外は霧雨になっていた。

見たところ長続きする感じの雨でもなかったのでしばし休憩しつつ雨が上がるのを待つ。

案の定数分で雨が上がり、再び行動開始。

しばし歩いてベトナム戦争証跡博物館へ。

1万5千ドン(≒105円)払って中へ。

ベトナム戦争での写真や展示物などが多数。

展示の説明文には日本語でも記載があった。

教科書でも見たことがあるようなベトナム戦争の写真が多数。

犯罪者を処刑したギロチンや牢獄などが再現されたコーナーもある。

施設内には米軍が使っていた戦車や戦闘機の実物?なども展示されている。

日本人団体客や西洋人客も大勢。

例えばアメリカ人などはどんな気持ちでそれを見たのだろうか。

日本の展示物もあり、その殆どが共産党による「ベトナムから撤退せよ」みたいなビラだった。

それを見てベトナムは共産主義の国なんだなということを思い出した。

それほど広くはない敷地内だったが見所はそれなりにあった。

戦争の悲惨さを伝えるような施設のはずだが、売店には戦車や戦闘機などの戦争グッズが売られていて苦笑。

1時間ほどウロウロした後で少し早いが昼食を食べに行くことに。

前日に友人との会話でお勧めという話だったベトナム風お好み焼きのバインセオ。

ガイドブックにそれが名物だという店が載っていたので歩いて行ってみることに。

ホーチミン中心部からやや距離はあったが歩けない距離ではない。

20分ほど歩いて到着した店は外に長机とプラスティック製の椅子を並べただけの粗末なつくり。

だけどさすがに日本のガイドブックに載っているだけに店内には明らかな日本人客が。

メニューを見ると日本語の表記もあった。

名物のバインセオ3万ドン(≒210円)とサイゴンビール1万1千ドン(≒77円)を注文。

バインセオはパリパリの薄い皮に豚肉・海老・モヤシが入り、キャベツにくるんで甘酢ダレにつけて食べる。

パリパリの食感とシャキシャキの野菜に肉と海老、まさにベトナム風お好み焼きという感じで美味。

ビールを2本飲んで合計5万2千ドン(≒364円)と値段も実に良心的だった。

再び徒歩でホーチミン中心に戻った後はバスに乗ってホーチミンの外れにあるチョロンという中華街へ行くことに。

相変わらず声をかけてくるバイクタクシーを振り切ってバス乗り場でチョロン行きのバスを待つ。

1番と番号が振ってあるバスがチョロン行きとのガイドブックの情報。

それっぽいバスが来たので手を上げて止める。

バスに乗って「Go チョロン?」と尋ね「Yes」と。

ホーチミンのバスには運転手の他に乗務員みたいなのも乗っていてその人からチケットを買う。

チョロンまでの値段も空港から街までと同じ3千ドン(≒21円)。

バスから眺める道は相変わらずバイクの洪水。

常にどこかでクラクションが鳴り響いているような状況。

その車道の状況を見ただけでバイクタクシーには絶対に乗りたくなくなる。

毎日かなりの数の事故が起こっているような気がする。

30分ほどかけてチョロンに到着。

どこの国へ行ってもそうだが、30分もバスで移動するとこんな所まで来てちゃんと戻れるのだろうかと不安になってくる。

チョロンの目玉はホーチミン最大のマーケットというビンタイ市場。

ホーチミン中心部にあるのがベンタイン市場でチョロンにあるのがビンタイ市場。

似たような名前でややこしい。

ベンタイン市場が観光客も多く訪れる所というのに対し、ビンタイ市場は卸業者が多いらしく観光客は少なめ。

散策してみたがベンタイン市場であったような日本語での呼び込みなどは一切無し。

ベンタイン市場よりもさらにゴミゴミしていて店がギッシリ。

観光客である私には興味も示さず、訝しげな視線で眺めてくる人ばかり。

ビンタイ市場はプロ向け、一見さんお断りみたいな雰囲気が感じられた。

一通りウロウロはしてみたが、殆ど周りの反応がないとそれはそれで何だか寂しい。

「場違いな者がなんかスイマセンでした」みたいな感じでそそくさと市場を出る。

次に行ったのはビンタイ市場から歩いて数分の所にある天后宮なる華人寺。

ここは常に線香が焚かれている寺で、行ってみると線香臭くてつねにモクモクしている。

吹き抜けの中心部には渦巻き型の線香が無数に吊るされている。

あれが全部蚊取り線香ならここら辺一帯に蚊はいないんだろうなーなんてこと考えつつ境内で休憩。

ウロウロ歩いて汗臭くなっていた身体が線香の匂いで消毒になっただろうか。

チョロンでの目的はビンタイ市場と天后宮、あとは適当に街をぶらついて戻ることに。

意識をすれば漢字表記が目に付いたがそれ以外はあまり中華街!というイメージは無い感じだった。

帰りのバスに乗るためにバス停を探して歩いているとちょうど前のオッサンが一台のバスを呼び止めた。

それがたまたまホーチミンとチョロンを結んでいる1番のバスだった。

運良く来たバスに乗り込んでホーチミン中心部へ戻る。

チョロン滞在は2時間にも満たなかったが、無事ホーチミンに戻ってこられたなーとホッとする。

ツアーじゃない旅は一瞬一瞬が緊張感に満ちている。

一旦ホテルへ戻って小休止。

翌日の夕方にはカンボジアのシェムリアップへ向かうことになる。

ホーチミンの夜はこれが最後だ。

晩飯に何を食おうかとガイドブックを眺める。

どうせなら珍しいものをと思い「地元で人気のヤギ肉専門店」とあったのでそこへ行ってみることにした。

ガイドブックには大衆食堂の欄に書いてあり、予想通り地元民が行くような店で綺麗とは言い難い。

ヤギ肉のグリルセットみたいなのを注文。

七輪に炭火がセットされて出てきて、皿一杯のヤギ肉を焼いて食う。

まさかホーチミンまで来て一人でこうして焼肉を食べることになるとは思わなかった。

衛生的とは言えない店で得体の知れないヤギ肉をヤキ肉で食べようとしている。

最初は必要以上にしっかり焼いて食べる。

クセが強いものかと思ったが、ヤギ肉のクセよりもツケダレのクセが強くて全部そっちに持っていかれる。

殆ど油だけなんじゃないかというようなタレと甘辛いんだけどパクチーとは違う草臭さが漂う妙なタレ。

美味いとも不味いとも言えない何だか不思議な感じ。

ヤギ肉だけで食べてみても味が無いから味気無い。

必然的にその妙なタレにつけて食すことに。

最初は不安だったので必要以上によく焼いて食べていたが次第にどうでもよくなってくる。

ビールと共にヤギ肉ヤキ肉を完食。

得体の知れない肉とタレはともかく、つけあわせで出てきたオクラは美味しかった。

合計で7万7千ドン(≒539円)。

しっかり焼き肉食ってビールも飲んでこの値段。

やはり地元民が行くような大衆食堂なだけに物価も安く感じる。

ホーチミン最後の夜なのでこれだけでは終わらない。

ベンタイン市場の脇には夜になると屋台が多く並ぶ。

ベトナムの屋台にあるという料理で興味本位で食べてみたいものがあった。

ホビロンという孵化寸前のアヒルの卵をゆで卵にしたもの。

高校時代の友人がそれを食べたってのを旅行記で見た記憶があった。

初日に合流した地元の友人は「孵化寸前のアヒルの卵」ってイメージだけで食べられないと言っていた。

それならば私もチャレンジしてみようとベンタイン市場脇へ。

一通り屋台街を眺めてホビロンがあるのかどうか確認。

すると表にメニューが出ている中にあった「Hot Vit Lon」。

正式な表記は忘れたが「Half Duck Egg」みたいな英語も書いてある。

半分アヒルの卵、まさにコレだ。

その店には店頭の写真入メニューに「Grilled Frog」(焼き蛙)なんてものもあった。

まさに蛙を焼いて開きにしたような写真が載っていた。

興味はあったがさすがに姿がもろに蛙だったので注文することは躊躇われた。

料金も5万ドン(≒350円)くらいしたので注文して全く食べられなかったら失礼だとも思った。

とりあえず初ベトナムなのでホビロンくらいにしておくことに。

ホビロン5千ドン(≒35円)と生春巻き(Fresh Spring Roll)5千ドン(≒35円)、ビール1万ドン(≒70円)を注文。

ビールを飲みつつ待つこと数分、やってきましたホビロン。

見た目は日本で見るのと同じ何の変哲も無い単なるゆで卵。

半熟卵を食べる時のような卵を起く台座に乗せられている。

これは半熟卵を食べるようにするのだろうか。

食べ方がイマイチよく分からない。

とりあえず卵の上部分を少し割ってみるとドス黒いものが出てきて汁が浮いている。

汁をすすってみるとアッサリした鶏がらスープみたいな味で悪くない。

とりあえず割ってみる
殻の中がドス黒い…

内部は半熟のようにトロトロしているのかと思ったがそうでもない。

殻を全部剥いても問題無さそうだったのでやってみる。

殻を剥ききったそれは私の知っているゆで卵とは似ても似つかないものだった。

パッと見では分かりにくいがよく見ると目を閉じて丸まったアヒルの形が視認できてしまう。

1度しっかり確認してしまうと衝撃的、これを食うのか…

丸裸
直視できない

一緒に出てきたライムを搾り塩をまぶす。

さすがに噛み切る度胸はなく一口で一気に食べる。

咀嚼咀嚼咀嚼。

ん、ゆで卵より濃厚な味付けで何の問題も無い。

少し口の中に筋みたいなものが残ったのは骨だったのだろうか。

いずれにせよ見た目の印象と比べれば拍子抜けするほど普通だった。

もっと珍味的で賛否両論な味を想像していたのだが。

しかしベトナム人(?)はよくこの中途半端な状態で卵を食べようと思い立ったものだ。

生春巻きは文字通り生春巻き。

日本で食べるものよりも香草の味がきつく、皮がベタッとした感じがあった。

ビール2本とホビロン・生春巻き等で4.4万ドン(≒308円)。

ヤギ肉と屋台で腹を満たしてから向かったのは高級ホテルのバー。

ホーチミンでの最後の夜なので雰囲気のある所で軽く飲もうと思った。

カラベルホテルにあるサイゴンサイゴンバーへ。

早い時間帯だったので空いている店内。

窓際のオープンテラス席に座りギムレットを注文。

これもただ雰囲気で「高級ホテルのバーでギムレット」をやってみたかっただけ。

まぁ普通にジンライム。

生暖かい夜風を浴びながらホーチミンの夜景をバックにチビチビとカクテルを飲む。

その雰囲気にほろ酔い…ってか既に昼から飲みまくっているわけだが。

1杯だけでサラリと店を後に。

ギムレット1杯7.97米ドル(≒876円)。

さすがに路上とは比べ物にならないが、前日に友人と飲んだモスコミュールも8ドルだったんで想定の範囲内。

ほろ酔い
ホーチミン像と人民委員会庁舎

だいぶ酔っ払ってきてホテルまで徒歩。

夜になっても声をかけてくるバイクタクシーのおっちゃん兄ちゃん。

「オニイサン、オンナ、オサワリ、ストリップ」

さらにはバイク2人乗りの女性が並走してきて「オニイサン、ホテル」。

いずれもあからさまな夜の誘い。

バイクタクシーにも昼の顔と夜の顔があるらしい。

車道の喧騒といい、夜の誘いといいタイのバンコクのようだ。

まだ1日を終えるには早い時間、ということで泊まっている中級ホテルのすぐ近くにある高級ホテルへ。

ホーチミンの老舗ホテル、マジェスティックホテル。

そのホテルの上にあるバーからサイゴン川を見下ろす夜景が見えるという。

ガイドブックには窓際川沿いの席は予約をして行ったほうが良いと書いてあったが店内はガラガラ。

ジントニックを注文して窓際川沿いの席でチビチビ。

ジントニック1杯5.78米ドル(≒635円)。

川を見下ろす良い席だが川と平行している車道ではクラクションがひっきり無しにプープー。

ホーチミン最後の夜の感傷はクラクション音と共に。

もっとも、ひっきりなしのクラクションはホーチミンのいたるところで聞こえる。

これがまさに今のホーチミンか。

夜でもホーチミンは元気だ。

 

 

2008年2月24日 日曜日

前日同様7:00過ぎには起床。

ある程度予想はしていたが腹の調子が下り気味。

前日に食べたものを挙げると心当たりがありすぎて何が原因かも分からない。

バインセオや生春巻きの生野菜、ヤギ肉、ホビロン、よく分からないツケダレ、そしてアルコールも大量。

幸い完全に下っているわけではなく、やや緩い大が出る程度だったので行動に支障は無し。

日本から持参した下痢止めを服用して行動開始。

ホテルの朝食はフォーやお粥がお腹に優しく良い感じ。

夜にはシェムリアップへ向かうので、飛行機の時間から逆算して何時に空港に着けば良いかを計算。

それほど慌てて行動する必要は無い時間だったので少しホテルでゆっくりしてからチェックアウト。

ベトナム最終日にして綺麗に晴れた空の下を行動開始。

この日の予定は前日に通り過ぎただけだった統一会堂(旧大統領官邸)へ。

前日と同じようにブラブラ歩きつつサイゴン大聖堂と中央郵便局を経て統一会堂へ。

ベトナム戦争ではここに北ベトナム軍(?)の戦車が突入してサイゴン陥落、事実上の終戦を迎えたとか。

そんな面影は無く緑豊かな広大な庭と綺麗で大きな建物。

入場料1.5万ドン(≒105円)払って中へ。

ベトナムの歴史上でも重大な建物なのだろう、観光客の他に現地の社会化見学のような子供の団体もいた。

建物の地上部分には大統領接見室や執務室や娯楽室など煌びやかな部屋がいっぱい。

ところが建物の地下に行くとベトナム戦争時に司令室として使われていたことを窺わせるものが沢山。

作戦司令室や無線室やらそういった類のもの。

煌びやかな地上部分と対照的にコンクリートも剥き出しで薄暗いの地下フロアー。

華やかな建物の裏(地下)に隠れている戦争、その対比が興味深い。

統一会堂を出て昼飯はガイドブックに載っていた春巻きの専門店へ行ってみる。

ガイドブックに載っているだけあってメニューには日本語表記もあった。

生春巻きと揚げギョーザのようなものとビール。

前夜にも生春巻きを食べたがこちらの方が専門店だけあってしっかりした作り。

皮もベチャっとしていなくて適度に歯ごたえもあり野菜もシャキシャキしている。

ただ香草のクセは好みが分かれそう、基本的にホーチミンで食べた殆どの料理に言えることだが。

揚げギョーザは実に普通に日本の居酒屋なんかでも出てきそうな無難に美味しい揚げギョーザ。

ベトナムと中国はそれなりに友好国なイメージ、中国産ギョーザだったらタイムリーだな。

ビール飲んでお会計になって気が付いたのはベトナムドンが僅かに足りないこと。

お会計は全部で7万ドン(≒490円)強。

ホーチミンの一般的な店なら米ドルも使えるはずなので米ドルでも良いか聞いてみる。

バイトっぽい兄ちゃん、その場で考えて「OK、ンー…6ドル(≒660円)」と。

オイオイ1米ドルって1万5千ドンくらいのはずだぞ。

ちゃんとレート計算してくれよ、と思いつつもこっちはベトナムドンを持っていない弱みがある。

200円もしない値段の違いでブーたれるのも大人気ない。

結局6米ドル(≒660円)も無く、10ドル札で払ったらお釣りがベトナムドンで来た。

もう少しでベトナムを離れるっていうのにベトナムドンが増えちまった。

統一会堂見て生春巻きも食べたら事前に考えていたベトナムでの予定を全て消化。

あとは空港へ行くまでいかに時間を潰すか。

相変わらずバイタクに声をかけられて街をウロウロ。

時間潰しと休憩を兼ねてホーチミン像がある広場の横にあるレックスホテルへ。

ここのホテルの屋上バーが24時間営業なのだ。

昼過ぎのバーはほんの少し西洋人がいるくらい。

大通りを見下ろす席でビールを飲みつつ時間を潰す。

天気が良くて気持ち良いが陽射しが強くて暑い。

2本目のビールも行きたかったがもう1本注文するとまたベトナムドンが足りなくなりそうだったので自制。

さすがはホテルのバー、ビール1本でもサービス料込み5万6千ドン(≒392円)。

時間潰しと休憩とベトナムドン消化にはちょうど良かった。

バーのあるレックスホテルを出てすぐ近くにあるベトナムの国営百貨店へ。

特に目的は無かったが、市場へは行ったがデパートなどへは行ってなかったなーと思い寄ってみた。

ベトナムだからと国営だからと何が秀でるでも劣るでもない普通のデパート。

1階に化粧品売り場があり、2階以上に衣類や土産やCDやら何やら。

適度に冷やかしてデパートを後にしてバスターミナルのあるベンタイン市場へ。

残っているベトナムドンを消化するのと、ベトナム最後の飯はフォーで締めくくろうとフォー2000なる店へ。

フォーとビールで4万7千ドン(≒329円)。

フォーだったらいくらでも食べられそうなくらいアッサリしている。

その気になって探せば油ギトギトのコッテリフォーなんてのもあるのだろうか。

最後にもう1度ベンタイン市場内をウロウロ。

やはりデパートのような整然とされた所よりもこういう雑然市場の方が雰囲気があって良い。

バスターミナルから空港行きのバスに乗り込む。

結局ホーチミンでの交通手段は全てバスで通したことになる。

3千ドン(≒21円)で空港にもチョロンにも連れて行ってくれるわけだから安い。

バイクタクシーも興味があったがバイクの洪水の車道を見ていたら恐くてとてもじゃないけど乗れなさそう。

15:30にはホーチミンの空港に到着。

とりあえずカンボジア・シェムリアップ行きの飛行機にチェックインを済ませる。

搭乗までにはだいぶ時間がある。

しかしホーチミンの空港は特に何があるわけでもない。

新しい感じの綺麗な空港ではあるが時間を潰せるようなものは特になし。

2万ドン(≒140円)ほど余っていたので空港内の飲食店に入ってみる。

ちょうど1番安いビールが2万ドン(≒140円)だったので注文したら売り切れ。

3万ドン(≒210円)のビールならあるというが3万ドンも持っていない。

結局2万ドン(≒140円)でコーラを注文。

ベトナムで最後に口にしたものがコーラか。

これなら売店で缶ビール買えば良かったな。

空いている店内でコーラ飲みながらこれまでの旅日記などを執筆。

なんとなく旅が終わったかのような心地良い疲労感。

イヤイヤ、どちらかというとこれからが旅の本番だ。

飛行機の搭乗時間が近づき、出国審査やらを済ませて搭乗。

カンボジアのシェムリアップへ向かう機内は半分程度の入り。

私のいる横の列には誰も座らず、ゆったりと席を使えた。

飛行機は18:35出発予定のはずが18:25にはもう動き出した。

これまで何度も飛行機に乗っているが遅れることこそあれ時間より早く動き出したのは初めてではなかろうか。

離陸してシートベルト着用サインが消えたと思ったらすぐに機内軽食が運ばれてきた。

サンドイッチとチョコレートウェハース。

食べ終わったら慌しく回収に来て一息つく暇も無く飛行機は高度を下げ始める。

飛行機の窓から眺めるシェムリアップはこれまで夜に到着したどの都市よりも暗かった。

殆ど灯りが見えない暗さ。

19:20、結局1時間もしないうちにシェムリアップ国際空港に到着。

飛行機もタラップから直接地面に降りて徒歩で空港施設まで向かう。

トルコのカッパドキアへ行った時のカイセリ空港を思い出した。

飛行機では前の席に座っていたので(ビジネスクラスなどは存在しない小さな飛行機)すぐに出ることができた。

カンボジアでは入国にビザが必要。

日本で事前に取得することも出来たのだが、現地で取得するのが1番安上がりだという情報だった。

空港にビザ取得カウンターがあり、そこで取得する。

場合によっては並んで待たされることもあるとのらしいので急いでビザカウンターへ向かう。

ビザ申請用紙は事前に日本でネットからダウンロードして記入しておいた。

ビザ申請代金20米ドル(≒2200円)を払ってパスポートと顔写真(昔撮ったスピード写真)を提出。

2,3分待ってすぐにビザが支給された。

パスポートの査証ページを丸々1ページ使った立派なビザだった。

同じ飛行機で到着した人の中では最も早くビザを取得してさっさと入国手続き。

入国手続きカウンターには小型カメラがあり、恐らくは顔写真を撮られたような気がする。

有料なビザといい、入国時に写真撮られたりと今までの国とは違う雰囲気。

無事に入国手続きを終えて誰もいない税関を越えるともう半分外。

時間は19:30(ベトナムとの時差は無い)で周りは暗い。

シェムリアップ空港から街までは路線バスなどが出ているという情報は無し。

初めての街でしかも夜なので安全に空港のカウンターでタクシーを頼むことにした。

エアポートタクシーのカウンターがあるのでそこで依頼。

タクシーを頼むと言うと、バイクタクシーの方が安いけどどうする?と。

確かにタクシー5米ドル(≒550円)、バイクタクシー1米ドル(≒110円)。

ホーチミンでは乗れなかったバイクタクシー、これをきっかけに乗ってみるのも良いかもしれない。

OK、バイクタクシーで行こう。

呼ばれて登場した運転手は私より若そうな兄ちゃん。

ホテルの名前を言うと「OK、さぁ乗れ」と。

運転手も私もヘルメット無し。

運転手の腰を抱くのは気が引けたのでシートを掴んで足にもしっかり力を入れて体勢を整える。

シェムリアップがホーチミン並みの交通量だったらどうしようという一抹の不安のなか出発。

不安をよそにホーチミンよりは明らかに交通量も街灯も少ない通りをバイクは疾走。

生ぬるい夜風が心地良い。

予想はしていたが運転手の兄ちゃんが運転しながら話しかけてくる。

もうホテルは予約したのか、遺跡巡りの足は確保したのか等々。

明らかにセールスに繋げようとするトークを繰り広げる。

バイクを運転しながら英語で話しかけてくるので実に聞き取りづらい。

聞き取りづらいから聞き直すと振り向いて話しかけてくるのでその度にバイクが揺れて恐い。

イイから黙って前向いて運転してくれよ!と叫びたくなるのを堪える。

幸い交通量が多くは無かったので危険なことは無かったが冷や冷やした。

バイクで走ること20分ほど、無事にホテルまで到着。

身体中に力を入れてバイクに乗っていたので身体がガチガチに固まっていた。

バイクタクシーの兄ちゃんに1ドル払ってさっさとお別れ。

「待て待て、明日からの予定を考えよう」と親しげに話しかけて来る兄ちゃんを苦笑いでやりすごす。

ここで下手に仲良くなっちゃうと翌日もバイクタクシーで遺跡を回らないといけなくなる。

今回泊まるホテルは街の中心部にある中級〜上級くらいの大型ホテル。

日本からそれなりに良いホテルを予約して行った。

ホテルに入ろうとするとドアマンがドアを開けてくれる。

豪華なロビー内に入ると脇から何やら日本語で挨拶の声と拍手。

どうもツアーの団体日本人が1日の反省会なのか1人1人挨拶をしては皆が拍手をしている。

いきなり団体日本人の洗礼だ。

チェックインを済ませてフロントの人が部屋まで案内してくれる。

「このホテルに1人で泊まる日本人は珍しい」と言われてしまった。

街中にある大型ホテルなのでツアー客の利用が多いのだろう。

少し場違いな所へ泊まってしまった気がした。

シェムリアップ中心部にある中級〜高級程度のホテルだとここが第1の選択肢に挙がったもので。

ホテルの部屋は値段相応にしっかりしていて文句なし。

時間は20時すぎ、ホテルでゆっくりするには早すぎる。

不要な荷物を部屋に置いて早速外へ。

ロビーではさらに「今着きました」という日本人団体ツアーがチェックインを待っていた。

ホーチミンでも日本人はアチコチ見たけど少人数グループが多かった。

シェムリアップではホテルに着いた僅か数分でそれを上回るような団体日本人を見ることになった。

アンコールワットという分かり易い観光地があるからだろう。

ともかく外へ出て事前に調べておいた飲食店が集まるバー・ストリートへ向けて歩き出す。

初めての街で夜に出歩くのは結構不安。

バイクや車は明らかにホーチミンより少ない。

比例して街灯も少なく、メインストリートを少し外れるとだいぶ暗い。

夜でも声をかけてくるバイクタクシーはホーチミンと変わらず、ただ絶対数は少ない。

15分ほど歩いてバーストリートへ着くとそこだけ急に明るくなり、西洋人が増えたのですぐに分かった。

適当にブラブラして「Beer 1Buy 1Get」と書かれた店へ入る。

とりあえずビール、カンボジアで是非飲みたかったのはアンコールビール。

カンボジアの定番ビールだが何よりも名前が良い。

1杯飲んだらアンコール!アンコール!もう1杯、もう1杯、みたいな。

味は普通のビール。

気分の問題もあるだろうが個人的にはベトナムのビールより美味しい気がした。

食べ物はカンボジアの名物料理と言うアモック(雷魚のココナッツミルク煮)。

アモックはココナッツミルクのまろやかな甘みと唐辛子のピリ辛、そしてここでも登場する香草。

それらが微妙に合わさったスープに雷魚が煮込まれてなんとも不思議な味。

日本の居酒屋感覚で1品だけじゃ物足りないかと思って2品頼んでみた。

平たい麺を空心菜と卵と豚肉で炒めた何ちゃらヌードル。

香草のクセもなく、普通に日本の居酒屋なんかでも「豚肉と野菜の炒め物(平麺入り)」みたいな感じで出てきそう。

2品頼んではみたものの、合わせると結構な量になった。

アンコールビール2本と2品を食べ終えた時はかなり満腹になっていた。

料金は全部で8米ドル(≒880円)。

アモック2.5米ドル+炒め物1.5米ドル+瓶ビール2本4米ドル

カンボジアでは米ドルが普通に流通していて、値段表記も殆ど米ドルだとか。

満腹と酔いを落ち着けるために少し夜のシェムリアップを歩き回る。

近くにナイトマーケットがあるというので行ってみる。

地元民が集まる市場ではなく、明らかに観光客向けに作られた人工的なマーケット。

整然と並んだ土産物屋の数々にアジア的雑然さは無く上品な感じがした。

ホテルへ戻る途中に24時間営業のコンビニがあったので寄ってビールを購入。

ここでも値札は米ドル表記で0.55米ドル(≒60円)。

1米ドル札を出したらお釣りが1,500カンボジアリエルで戻ってきた。

初めてカンボジアの自国通貨を見た。

ちなみに1米ドル≒4,000カンボジアリエル。

ホーチミンから始まった1日が国を跨いでシェムリアップで終わる。

 

 

2008年2月25日 月曜日

シェムリアップの朝、7時には起床。

そしてやはり下り気味の腹、もうこれは恒例だから仕方ない。

朝食をとりにレストランへ行くが予想通り明らかに日本人が多い。

色々な朝食メニューが並んでいるのに下り気味の腹に優しそうなものしか食べられないのが残念。

この日のテーマはこの旅のメインテーマでもあるアンコール遺跡群観光。

アンコール遺跡はシェムリアップの中心部から距離がある。

ホーチミンやこれまでの旅のように歩いて行ける範囲ではない。

個人レベルだとタクシーなどをチャーターして行くのが一般的だとか。

タクシーだとか味気ない。

バイクタクシーだと危険が多そう。

間を取ってそれなりに風情もあって危険も少なそうなトゥクトゥクをチャーターすることにした。

バイクの後ろに屋根付きの荷台を席として取り付けたトゥクトゥク。

3輪なので転ぶ心配は少ないし、落ち着いて座って行けるし、タクシーほど高くは無い。

この旅最大の目的であるアンコール遺跡観光を確実かつ安全に遂行するために割高になるのを覚悟でホテルのフロントで依頼。

1日チャーターで幾らか尋ねると15米ドル(≒1,650円)。

バカ高いわけでもないし、ガイドブックにも目安はそのくらいと書いてあったので2つ返事で了解。

するとホテルの従業員はホテルの敷地内で客待ちをしていたトゥクトゥクドライバーに声をかける。

敷地内で客待ちしてるってことはそれなりに信用して良いのかな。

バイタク以上タクシー未満
トゥクトゥク

行きたかったポイントは3つ。

アンコールワットとアンコールトムとタプロム。

トゥクトゥクドライバーにそれを告げていざアンコール遺跡へ。

アンコール遺跡へ向かう車道は舗装されているが、歩道にあたるような部分は未舗装で土埃が舞う。

シェムリアップ中心部から10分ほど走るとアンコール遺跡の入場口に到着。

遊園地の入場券売り場のようになっている。

アンコール遺跡の1日入場券20米ドル(≒2,200円)、3日通し券40米ドル(≒4,400円)。

1日券以外は使い回し防止のために顔写真入りになるという。

どうせなら記念になる顔写真入りが良い、3日券を買えば明日も気兼ねなく来ることが出来る。

少し迷った末に3日券を購入。

その場で小型カメラのようなもので撮影されてアッという間に入場券がプリントアウトされた。

写真の画像はだいぶ粗い、まぁこんなもんか。

それにしても1日20米ドル(≒2,200円)って結構高い。

入場口から5分ほど走るとなんとなく見覚えのある景色が見えてきた。

お、あれか?あれか?!という感じで到着、アンコールワット。

ネットやガイドブックで散々見たことがあるアンコールワットが遂にそこに。

トゥクトゥクドライバーの兄ちゃんはアンコールワットまでは入ってこない。

アンコールワット前の土産物屋や駐車場がある広場で待っているという。

ここからは1人でアンコールワットの観光。

アンコールワット敷地内に入る一本道の入口で係員に入場券を提示。

周りは堀のように水に囲まれた中をアンコールワットへ続くまっすぐな道を歩く。

最初の門を越えると眼前に広がるアンコールワットの威容。

ガイドブックなどでお馴染みのシーンを生で見るとそれだけでやはり感慨深いミーハー観光客。

アンコールワットは東を背に立っているので午前中は逆光になって写真撮影には向かないとのガイドブックの情報。

オイオイ、こっちは写真を撮りに来たんじゃなくて生でアンコールワットを見に来たんだぜ。

本体に辿り着くまでの長い1本道が良い。

敢えてゆっくり歩いてジワジワと気持ちを昂ぶらせる。

中に入り順路に沿って回廊を見て回る。

回廊の壁にはレリーフ(彫刻)が施されていて、それらがストーリーになっているという。

回廊の壁だけではなく、柱にも天井にも疲れて腰掛けた石にもレリーフレリーフ。

最初のうちはじっくり見ていた回廊のレリーフも後半は目が離せないと言うよりもキリが無い。

外回廊の他に内回廊もあり、本当にじっくり見ていたら何時間あっても足りなさそう。

それでも今回の旅のハイライトとなるアンコールワットなのでじっくり鑑賞。

3時間くらいかけて休み休みアンコールワット内をグルグル。

アンコールワットの一番高い所である第三回廊は工事中で立入禁止。

こればかりは次の機会だ。

アンコールワット脇の露店でアンコールビール1米ドル(≒110円)を購入して休憩と燃料補給。

アンコール!アンコール!
ビールとワット

12時過ぎにトゥクトゥクへ戻る。

戻った時に果たしてトゥクトゥクドライバーの兄ちゃんを視認出来るか不安だった。

カンボジア人は皆同じに見えてしまう。

トゥクトゥクドライバーの方はどうやら覚えていたらしく「コッチコッチ」と手招きする。

もしかしたら単なる客引きのトゥクトゥクドライバーかもしれない。

あぁ確かこんなヤツだったような気がする、みたいな曖昧な記憶でついていく。

公式のトゥクトゥクドライバーには着用が義務付けられている(?)番号入りベストの番号を見てようやく安心できた。

5分ほど走って到着したのはアンコールトム。

アンコールワットはそれ自体が1つの遺跡だったのに対してアンコールトムは複合的に色々な遺跡が点在する敷地。

アンコールトムで最も有名なのが「宇宙の中心」たる壮大なキャッチフレーズをもつバイヨン。

建物と言うよりも石造りの四面仏がアチコチに立てられている集合した石の山のような感じ。

面積はそう大きくないが、中は石造りの迷路のようになっておりどこから入ったのか分からなくなる。

アッチにもコッチにも四面仏が穏やかな微笑を浮かべている。

アレも顔、コレも顔、よく見りゃソレも顔という感じでよく分からずともなんだか神秘的。

四面仏なので倍4
宇宙の中心で愛を叫…

バイヨン近くの露店で昼飯とビール。

レストランなどと呼べる代物ではなく、運動会で建てられるテントみたいな屋根だけある殆ど外。

足元を野良犬(?)がウロウロしているような環境。

鶏肉と野菜炒めみたいなのにライス。

観光地にある観光客のための食事処、味は可も無く不可も無く。

燃料補給後にアンコールトム内を一通りブラブラ。

象のレリーフがズラリと並んだ象のテラスを経由して階段ピラミッドのようなピミアナカスへ。

階段ピラミッドは凄く急な階段ながら上には人の姿が見える。

看板には自己責任で登れ的な文言が。

傾斜70度!?
カイダンというよりダンガイ

警告
自己責任

目の前で西洋人カップルが登るのを諦めているのを見て「よし、行ってやろうじゃないか」と。

ロッククライミングのように両手も使って登り始める。

半分くらい行ったところで後悔し始める、怖ぇ…

アンコールワットやトムで結構歩いているので足も疲れている。

遺跡だから足元がいつ崩れるかも分からない。

おまけに登ったら降りなきゃいけないってことだし(当たり前)。

かといって止まるわけにも行かず足が震える前に登りきった。

後でガイドブックを見たら最大傾斜は70度近くあったらしい。

上から見下ろす景色
自己責任後

登ったは良いが特に絶景があるわけでもなくただ少し高い所に来たな程度。

ただ登ることが1つの経験になっただけのような。

さて問題は下りだ…と思っていたら違う側面にはちゃんと手すりつきの整備された階段があった。

なんだよ、最初っからこっち登ってれば良かったのかよ。

それでも急勾配に変わりは無く、手すりを掴んでゆっくり降りる。

次が三島由紀夫の戯曲で有名なライ王のテラス。

もっとも私は今回アンコールトムへ来るにあたって初めて知ったのだが…。

迷路みたいな細い通路の中に入ると高い壁一面にびっしりと神々の像が。

棚に並んで飾られているかのような錯覚を起こす。

コイツらをいちいち壁に彫っていったのだとするとそりゃ大したものだ。

アンコールトムは全体的にタイのアユタヤ遺跡のような雰囲気。

広大な敷地の中に半分廃墟と化した遺跡が点在。

ワットでもそうだったがトムもその気になれば1日いても見尽くせないくらいの規模。

アンコールトムの主要スポット巡りを終えてトゥクトゥクへ。

ようやく兄ちゃんの顔もトゥクトゥクの特徴も覚えたので間違えずに済んだ。

5分強走ってタプロム寺院へ。

ここは長い年月をかけて巨大な木が石造りの建物を侵食していることで有名な寺院。

崩壊した寺院とそれに絡みつく巨木、なんだかファイナルファンタジーにでも出てきそうな風景。

木が侵食していることによって建物は徐々に痛んでいるらしいが、木を取り除くと建物自体が崩れる恐れがあるという。

人間が作ったものでも長い眼で見れば自然には勝てないというのを見せ付けられているよう。

自然の驚異
人造<自然

アンコールワット・トム・タプロムと遺跡見物三昧。

この周りには他にも色々と遺跡が点在しているが、今回はこれくらいにしてでシェムリアップの街へ戻る。

ホテルへ戻る前にシェムリアップのオールドマーケットへ。

前日の晩飯を食ったバーストリートのすぐ近くにあるオールドマーケット。

観光客向けの土産物屋だけでなく、地元民向けの食材の店や雑貨屋などが所狭しと並んでいる。

ホーチミンのベンタイン市場に比べると規模は小さく、店員もガツガツしていない(日本語で呼び止められることが無い)。

それでも生魚や生肉、野菜、フルーツなどを売る一角や雑貨を売る一角。

ムッとした熱気とナマモノのニオイ、規模は違えどやはりアジア的雰囲気。

一通り冷やかした後にトゥクトゥクでホテルに戻り、そこでトゥクトゥクを終了に。

9時前に行動を開始して17時に終了、時間的にちょうど良いくらいか。

遺跡間移動に関してはトゥクトゥクだったが、遺跡の中は徒歩なのでだいぶ疲れた。

ホテルにはプールもあり、入れるように水着も持ってきていたが疲れていたのでパス。

何日か余裕を持ったスケジュールでないとプール入って落ち着くってのは難しいことが分かった。

部屋に戻ってシャワーを浴びる。

午前中は曇っていたが午後は晴れて炎天下。

だいぶ日に焼けて殆ど水のシャワーを浴びる。

小休止の後にこの旅最後の晩飯を食うために街へ出る。

ガイドブックに載っていたカンボジア名物と言う鍋料理のチュナンダイを食べさせる店へ。

しかし暑い国で鍋料理が名物って本当かね。

前夜にも行ったバーストリート、基本的に観光客向けだから入り易い。

そろそろ暗くなってきた18:30頃、まだ半分くらいの入り。

ビールを頼むと19:30までハッピーアワーでビールが0.7米ドル(≒77円)だとか。

これで遠慮せずにビールが飲めそうだ。

名物という鍋料理のメニューを見ると、基本となるスープに好きな具材をオーダーする方式らしい。

基本となるスープの値段が3米ドル(≒330円)で具はどれも1米ドル(≒110円)以下。

スープと肉、野菜、卵、キノコを注文。
(肉はメニューに"meat"としか書いていなかったので何肉かは分からず)

1品あたりの値段が安いので調子に乗ってポンポン頼んだが出てきた量は結構なもの。

卵なんか4つも出てきた、1人で食べ切るには結構頑張らないといけない量。

カセットコンロと土鍋は日本の居酒屋で出てくるのと遜色ない。

店員から具材を入れる順番などを聞き、1人鍋開始。

寂しく1人鍋
暑い国で熱い鍋

片っ端から鍋にぶち込んで適当なタイミングで食べる。

スープ自体に味がついているのでそのままでもいけるがツケダレみたいなのもある。

店員がソース+チリソース+ニンニク+香草みたいなのを混ぜて作ってくれた。

香草にややクセがあるが、濃い味付けが良ければつけるのも良し。

個人的にはタレをつけなくてもスープのダシだけでいける。

暑い国で熱い鍋、必然的にビールが進む。

1人で食べきれるかと不安になる量だったが、ビールと共に流し込むと結構いける。

結局食べきって締めは麺でしょ、ということでヌードルまで注文。

これも日本の居酒屋感覚で頼んだのだが1人分の量が多い。

最後の麺もビールと共に流し込んで完食。

美味かったので満足満腹。

ただカンボジアまで来て1人でひたすら鍋食い続けてるってなんだか…

そういやホーチミンでは1人で焼肉食ってたし。

1人旅だと食事時がどうしても寂しくなってしまう。

ビールは全部で5本、それでもハッピーアワーということもあって会計は合計9.1米ドル(≒1000円)。

観光客向けの料理店でもこの値段なわけで、やはり物価は安いだろう。

店を出てビール5本分の酔いも手伝って真っ暗なオールドマーケットへ行ってみた。

通路以外はシャッターが下りていて、昼間の喧騒が嘘のように静か。

日本でこういうところがあったら確実にホームレスが寝床にでもしていそうだが誰もいなかった。

昨夜も行ったナイトマーケットも冷やかし。

冷やかしている間に3,4回停電が起きてマーケット中の電気が消えた。

電気が消えると完全に真っ暗になる。

1回目の停電では小さく悲鳴があがったがすぐに復旧。

2回目以降はまたかよ…みたいな空気が流れる。

しかしあれだけ頻繁に停電するのはまだ電力事情に難ありか。

満腹と酔いを醒ますために必要以上にウロウロしてホテルに戻る。

日焼けが痛いので極限までぬるくした風呂に浸かりこの旅最後の夜が終了。

 

 

2008年2月26日 火曜日

夜にはシェムリアップ空港から帰路につく。

19時頃には空港にいる必要があると考えて18時頃までは時間に余裕がある。

この日の予定をどうしようか考え、折角3日間有効のアンコール遺跡入場券を買ったので再度行ってみることに。

今度はトゥクトゥクと直に交渉してアンコール遺跡を目指すことにする。

早速ホテル前にいたトゥクトゥクドライバーと交渉。

私「アンコール遺跡を周遊していくらだ?」
ト「15ドルだ」
私「高いな、5ドルで行ってくれ」
ト「そりゃ無理だ、12ドル」
私「いや、5ドルだ」
ト「分かった、10ドルにしよう」
私「んー、6ドルだな」
…なんて交渉をやっていると別のところからバイクタクシーが登場。
バ「よし、オレなら5ドルで行くぜ」
私「バイクタクシーなら1ドルだな」
もともと荷物が多いのでバイクタクシーに乗る気は無かったが敢えて交渉。
するとトゥクトゥクドライバーが
ト「8ドルにしよう」
私「よし7ドルでどうだ」
…で交渉成立。

基本的には英語でドルを連呼して苦笑いやジェスチャーでの交渉。

それ自体がなかなか楽しく、結果的に前日の半額以下になった。

初日からホテルを介さずに交渉していれば良かった。

もっとも初日は相場も分からなかったし確実にアンコール遺跡へ行くことがテーマだったのでそれはそれで良いが。

前日とは逆にこの日は最初にアンコールトムへ行くことにする。

トゥクトゥクに乗っていると雨が降ってきた。

ホーチミンで少しだけ降ったことはあったが、今回のはそれよりも本格的な雨。

最終日にして雨に祟られたか。

つくづく前日にアンコール遺跡へ行っておいて良かった。

結構本格的な雨の中をアンコールトムのバイヨンに到着。

傘や雨具は持ってきていなかったのでタオルを頭に巻いて雨のバイヨンへ突入。

雨の観光地と言うのもそれはそれで悪くない。

ガイドブックや絵葉書では決して見ることが出来ない雨の観光地。

晴れているに越したことはないけれど、観光地で雨に祟られたらそう思って自分を納得させている。

雨のバイヨンでも観光客はちゃんといる。

下が濡れているので足元が滑りやすく危ない。

バイヨン内部などの雨が当たらないところで適度に休憩しつつバイヨンをウロウロ。

次第に雨も弱くなってくる。

乾季のこの時期はそうそう降り続くことはないっぽい。

バイヨン脇にある売店でビールでも飲みながら雨宿りをすることに。

カンボジアにはアンコールビールだけではなくバイヨンビールもある。

前夜の鍋料理のときにバイヨンビールがメニューにあり、バイヨンでバイヨンビールを飲めば良かったと変な後悔をした。

売店では小学生くらいの女の子が店番をしている。

「Beer?」と聞くと元気よく「2dollers!」と答えられた。

オイオイ、ビールは相場からいって1ドルだろ…

苦笑いして「2dollers?No〜」と言って行こうとすると「Nonono 1doller!」と慌てて訂正した。

抜け目無いけど憎めない。

とりあえずバイヨンを眺めつつバイヨンビールを飲むという小さな目的を果たす。

倍4!倍4!
バイヨンバイヨン

ビールを飲んでいるうちに小雨になり、トゥクトゥクに乗ってアンコールワットを目指しているうちに上がった。

前日と変わらないアンコールワットだったが、雨上がりのせいか昼過ぎのせいか観光客がだいぶ少ない。

なんだか得した気分。

主に前日の後半部分で疲れて眺めていたところを中心に見て回る。

アンコールワットを出てシェムリアップに戻る頃にはすっかり青空と強烈な陽射し。

アンコール遺跡の次はシェムリアップ最大のマーケットであるプサールーマーケットへ。

シェムリアップ中心部からはやや離れた所にあるマーケット。

こちらは地元民用の市場らしく、観光客は殆ど見られず。

当然観光客相手の店らしきものも無い。

ホーチミンでビンタイ市場へ行った時のような場違い感。

ただホーチミンの時よりも地元に根ざした市場のような感覚。

市場内を一通り歩いてからシェムリアップ中心部に戻る。

もはや新たにどこかへ行くくらいの時間と気力は無い。

バーストリートへ行って夕方のハッピーアワーで1米ドル(≒110円)1Buy1Getのビールを飲んでゆっくりする。

2杯で1米ドル(≒110円)ってことはコンビニで缶ビール買うより安い。

シェムリアップで最後に飯を食べる所は事前に決めていた。

ガイドブックに日本の有名なカメラマンが通っていた店として有名、と書いてあった所。

今回カンボジアへ来るにあたって読んだ本、一ノ瀬泰造「地雷を踏んだらサヨウナラ」。

ベトナム戦争を経て内戦下のカンボジアでアンコールワットの写真を撮ろうとした写真家。

「地雷を踏んだらサヨウナラ」というフレーズは聞いたことがあったが今回初めて一ノ瀬泰造の名前を知った。

現在の私よりも若くして逝ったカメラマン。

ベトナム戦争やカンボジア内戦下の写真を撮り続けた。

内戦下のアンコールワットの写真を撮りたくて単身潜入し、最終的には…という彼の手記を元にした本だった。

そう遠くない過去の出来事だと考えるとこうして平凡に平和に旅が出来るのは幸せなことだ。

日本の有名なカメラマンが通った店とは間違いなく一ノ瀬泰造が通っていた店だろう。

負傷してレストランに担ぎ込まれ、その後もそこで食事を取るシーンが本にあったのを覚えている。

地図で場所を確認して向かうとレストラン脇に「Spirts of TAIZO」の文字。

やはりココだったか。

17時開店のその店に開店と同時に入る、当然客は誰もいなかった。

綺麗な店内、一ノ瀬泰造が通っていた頃とはだいぶ違うだろう。

席に案内されると「Are you Japanese?」と聞かれる。

「Yes」と答えると店員がメニューのページを開く。

そこには日本語で「TAIZOさんが好きだった料理です」と。

苦笑しながらもそこからカンボジア風オムレツ3米ドル(≒330円)を注文してしまうミーハーな私。

最後のアンコールビールと共に可もなく不可もない食事が終了。

あとは空港に行って帰路につくだけ。

止まって休んでいたトゥクトゥクドライバーに声をかけ、この旅最後の交渉。

私「空港まで1ドルで行ってくれるか?」
シェムリアップに到着した時に空港から街までのバイクタクシーが1ドルだったのでそれを参考にした。
ト「1ドルは無理だ、4ドル」
私「1ドルと4000リエルでどうだ?」(4000リエル≒1ドル)
ト「1ドルと8000リエル」
私「1ドルと5000リエル」
ト「1ドルと6000リエル」
私「自分が持っているリエルは全部で5500なので1ドルと5500リエルにしてくれ」
ト「分かった、1ドル5500リエルだ」
というわけで交渉成立。

余ったカンボジアリエルも巧く処分することが出来たのでまずまずの成果。

本当は5600リエル持っていたのは内緒で(100リエル札は記念に取っておきたかった)。

夕暮れのシェムリアップを15分ほど走ってシェムリアップ国際空港に到着。

シェムリアップの街を少し外れるだけで風景はただ広大な土地が広がるだけ。

様々な国の主要都市のように、街中を空港に向かうよりも風情があって良い。

まだ発展途上なのか、だけどこれ以上発展しなくても良いと思えてしまう。

アンコール遺跡群は所々で遺跡の補修作業が行われていた。

野ざらしにされている遺跡の現状を考えれば頷ける。

街を発展させるよりも遺跡を修復した方が結果的に街の発展に繋がるような気がする。

なんてことを一見の観光客が偉そうに語ってみる。

シェムリアップ国際空港に到着したが半分くらいは日本人なんじゃないかってくらい日本人が多い。

空港内アナウンスでも日本語が流れるくらい。

余裕を持って早めに空港へ到着したが、それほど大きくないシェムリアップ国際空港。

免税店などを冷やかすもすぐにネタ切れ。

出国手続き代金(?)の25米ドル(≒2,872円)を払って手続きを済ませる。

なるべく人の少ないベンチで旅日記などを書きつつ時間を潰す。

帰りの飛行機はバンコク経由の日本行き。

ホーチミンからシェムリアップに来た時と同じくらいの小さな飛行機でバンコクまで1時間弱。

ここでも離陸直後に慌しく機内軽食が出てくる。

国際線では機内食を出さなきゃいけない決まりでもあるんかね。

すぐに到着したバンコク、窓から眺める夜景はシェムリアップとは比べ物にならないくらい明るい。

前回2002年に来た時とは違うスワンナプーム国際空港。

後で調べると2006年に開港したらしい、そりゃ2002年(ドンムアン国際空港)とは違うわ。

やたら大きい空港で乗継カウンターまでだいぶ歩かされた。

乗継までの待ち時間は2時間ほど。

その程度の時間だと外に出るわけにもいかない。

すぐ外はバンコクなのに入国できない悔しさ。

日本へ向かう飛行機は日本航空。

日付が変わる直前の23:55に出発。

機内で流れる日本語と出される日本産のビールを見ると帰るのを実感する。

 

 

2008年2月27日 水曜日

さすが日本航空、機内で日本語が通じてしまう。

機内の設備も1人1台のモニターがあったり「ビールのおかわりいかがですか」など至れり尽くせり。

ベトナム・カンボジア・タイ時間で朝の3:30頃に朝食が出てきて起床。

さすがにアルコールを摂取する余力はなく、義務的に腹にかっこんで完食。

ベトナム・カンボジア・タイ時間の5:30(日本時間7:30)に成田到着。

現地の気温は4℃との情報。

東南アジア仕様のTシャツ1枚で飛行機を出たので飛行機から空港までを結ぶ通路が寒い寒い。

バッグの奥底にしまいこんでいた圧縮袋から上着を取り出した。

早朝の到着で荷物もバックパック1つ、入国審査も税関もすぐに終了。

そういえば鳥インフルエンザの流行地から帰ってきたのに、それに関する何らかは何も無かったような気がする。

地元行きのバスがちょうど10分後くらいに出発だったのでそれに乗り地元に到着。

天気はしっかり晴れているのに物凄く寒い。

前日までのカンボジアの太陽と同じものとは思えない。

午前中には帰宅、とりあえずさっさとゆっくり眠りたい。

前日は丸1日風呂に入っていないのでシャワーを浴びる。

外気と身体は寒いのに皮膚は前日までの日焼けが残っていて熱い。

微妙な温度のシャワーを浴びて就寝。

午前中に日本着だと時間に余裕があって良いけど、基本的には疲れて寝るだけだな。

 

 

総評

ベトナムのホーチミンとカンボジアのシェムリアップ。

2カ国を2日間ずつ駆け抜けた感じだ。

ホーチミンはエネルギッシュな東南アジアそのもの。

バンコクよりやや規模は劣るが、都市部の交通量や熱気などはいかにも発展途上国。

5秒に1回はクラクションが鳴らされ、バイクの3人乗り4人乗りは当たり前、道を渡るのにいちいち命がけ。

1日ホーチミンの街を歩いただけで鼻くそが凄いことになりそう。

バイクの運転手の多くがマスクをしているのも頷ける。

ホーチミンはベトナム戦争後にサイゴンから名前が変わったという。

だが街にはサイゴンの文字ばかり溢れていた。

ホテルやレストランやその他の店などサイゴンと付くものが多い。

サイゴンバー、サイゴンホテル、サイゴンビール、サイゴン川…

逆にホーチミンという文字は殆ど見なかったような気すらする。

ホーチミン像や肖像画などはあったが、都市名としてはホーチミンよりサイゴンの方がはるかに優位に感じた。

そもそもホーチミンの空港コードがSGN(サイゴン)。

ホーチミンよりもサイゴンの方が定着している感じがした。

ベトナム人にとってみたらサイゴンの方が馴染みがあるのだろうか。

シェムリアップはアンコール遺跡のための町。

郊外のトレンサップ湖なども観光地ではあるらしいが、やはりアンコールに尽きる。

そのアンコール遺跡も有名なワットとトムだけでもちゃんと見たら1日かかる。

郊外に点在する遺跡も含めたら1週間でも見ていられそうだ。

幸か不幸か私はアンコール遺跡に造詣が浅いのでワットとトムでとりあえずは良かった。

また訪れる機会があれば東洋のモナリザと称されるバンテアイ・スレイなども行ってみたい。

距離的にも遠くない、その気になればすぐにでも?

どちらの国でも米ドルが普通に流通していて使い易い。

ただ米ドルを使うと巧いこと端数を切り上げされてしまう恐れも。

ベトナムでは1万ベトナムドン(≒70円)の缶ビールを米ドルで買おうとすると1米ドル(≒110円)請求された。

店員のレート計算もいい加減なことが多いので表示されている通貨で買うのが損しないことは確か。

その点でカンボジアは表示されている通貨も米ドルが殆どだった。

シェムリアップという観光の街にいたからかもしれないが。

ただドルで買い物をしてもお釣りは現地通貨で返ってくることが多いので使うならドルの小額紙幣が良い。

小額紙幣を沢山、というのは米ドルに限らず全ての通貨でいえることではある。

ただ日本の通貨は最小紙幣でも1,000円、その点で米ドルなら最小紙幣で100円前後なので便利。

余談だが今回帰国した2週間後位に世界的なドル安となり、一気にドルが100円を切りやがった。

もう少し出発が遅ければもっと景気の良い旅が出来ただろうか。

 

旅の費用

周遊航空券(成田−ベトナム(ホーチミン)−カンボジア(シェムリアップ)−タイ(バンコク)−成田)
83,000円

諸税(空港使用税+航空保険料+現地税+サーチャージ)
24,030円

ベトナム通貨(ベトナムドン)両替
3,000円(≒435,000VND)

その他の現地使用通貨は全て米ドル
約210米ドル(≒23,100円)…日本から両替
(観光/食事/移動/ビザ・出国手続き/土産等全て含む)

ホテル
ホーチミン2日間…1泊5,400円×2、日本からネット予約・清算
シェムリアップ2日間…1泊90米ドル(≒9,900円)×2、日本からネット予約・清算

海外旅行保険
今回は加入せず
(アンコール遺跡で高い所を登った時は入っておけば良かったかもと一瞬思った)

合計163,730円

 

 

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