最高の第2試合
2000年5月1日 PRIDE GRAND-PRIX東京ドーム大会観戦記

 

総合格闘技系最強を決めるプライドグランプリ。1月に1回戦を勝ちあがった8名(イゴール・ボブチャンチン, ゲーリー・グッドリッジ, 桜庭和志, 小路晃, 藤田和之, ホイス・グレイシー,マーク・ケァー,マーク・コールマン)によるワンナイトトーナメント。ワンナイトトーナメントということは優勝するには2回戦、準決勝、決勝と1日3試合を闘わねばならないかなり過酷なトーナメントだ。この日最初の対戦、2回戦で誰と誰が戦うかの組み合わせは事前にファン投票で決められていた。つまりファンが1番見たい試合が最初に組まれることになったのだ。ファンの関心の第1はもちろん桜庭のグレイシー狩りである。桜庭がホイス・グレイシーを破ることが出来るがどうかが第1だった。もちろんこの試合が最もファンの票を得た。試合順は
第1試合 イゴール・ボブチャンチンvsゲーリー・グッドリッジ
第2試合 ホイス・グレイシーvs桜庭 和志
第3試合 小路 晃vsマーク・コールマン
第4試合 マーク・ケァーvs藤田 和之
となった。贅沢なカード編成である。ファンが1番見たいと思っている試合がなんと第2試合に組まれてしまったのである。

第1試合が終わると同時にドーム全体が異様な緊張感に包まれた。そしてオーロラビジョンにグレイシーのマークが写されて緊張感がどよめきと歓声に変わる。グレイシーの入場、事前のグレイシーのルール変更の要求などから完全にヒールと化したグレイシーに対してはブーイングも浴びせられた。続いて場内が大歓声に変わる、桜庭の入場だ。桜庭のテーマ曲が流れる、花道の下の舞台から桜庭が上がってくる。ん??オーロラビジョンに映ったその姿はなんとマスクマン、しかも後から2人同じマスクをかぶって出てきた。合計3人のマスクマンがリングへ向かう。被っているマスクはストロングマシンのマスク。過去に新日本プロレスのリングで謎のマシン軍団としてそのマスクをかぶっていたヒール軍団がいたのだ。そしてそのマシン軍団は次々と増殖して新日本のリングで暴れまわっていた時期があった。場内大喝采&大歓声、リングへも3人で上がりリング中央に進み出てこれ見よがしにグレイシーを挑発。一方のグレイシーは桜庭に背を向けと目を合わそうとしない。対極的な両者の構図が現れていた。

あれほど緊迫しながら試合を見たのは実に久しぶりだった。膠着状態が長く続く試合、1つの動きで大きなどよめき、膠着状態になったときホッとしたようなガッカリしたような会場の大きなため息。15分1ラウンドで休憩が1分、1ラウンドが終わるごとに会場から大きなため息が漏れる。一体いつになったら終わるのだろうか、そんな思いが交錯する。しかし徐々に桜庭のローキックを主体とした打撃がホイスに当たりはじめた。そして6ラウンド、桜庭のローキックにあからさまに嫌な顔をするホイス。ホイスが自陣のセコンドを不安気に見る、その時に東京ドームのオーロラビジョンに写されたグレイシー陣営のセコンドの手にはタオルが握られていた。会場全体を大きなどよめきが襲った。まさか、まさか…タオル投入か?。明かな桜庭ペースで6ラウンド終了、実にこの時点で試合開始から90分が経過していた。そして第7ラウンド…ホイス・グレイシーがコーナーの椅子から立ち上がらない、セコンドもコーナーに立ったまま。そしてタオル投入。思い出しただけでもあの時の会場の盛り上がりは凄まじかった。会場中が総立ちで桜庭の勝利に酔いしれた、既に大会が終わったかのような大歓声だった。その試合後に行なわれた第3試合、この試合では桜庭の勝利の余韻を味わっていたので殆ど呆然と観ていた。恐らく会場にいた多くの人もまた同じように余韻に浸っていたのではないだろうか?

第4試合でも再びピークが訪れた。霊長類最強の男と呼ばれていたマーク・ケァー相手に新日本プロレス出身でアントニオ猪木から教えを受けた藤田和之が勝ってしまったのだ。序盤では打撃をくらいながらもアマレス仕込みのタックルを決めて倒して殴る蹴る。会場は意外な展開に大歓声。「まさか勝ってしまうのでは…」みんなそんな気持ちだった。そして15分1ラウンド終了、誰の目にも藤田の勝利は明らかだった。ゴングと同時に大歓声、藤田の完勝だった。

その後の準決勝ボブチャンチンvs桜庭、コールマンvs藤田。その他にスペシャルマッチが2試合と決勝戦。正直観客は疲れていた。第2試合で今大会のピークを迎え、第4試合で思わぬお釣りが来た。その後の試合でその2つの試合のインパクトを越えることは出来なかった、それも仕方ない。17時に始まった興行だったが、決勝戦が終わったのは23時過ぎ。既に帰っている客も大勢いた。この興行は第4試合まで観ていれば充分だった。メインイベントへ向けて徐々にボルテージが上がって行くプロレスの興行とは違うなということを実感させられた。

(2000/07/29)

 

 

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