NOAHに望む
プロレスノア旗揚げ戦雑感

 

2000年8月5日、今世紀最後の注目団体「PRO WRESTLING NOAH」が旗揚げ戦を行なった。全日本プロレスを離脱した三沢光晴を筆頭に全日本の主力選手が殆ど移籍。近年のプロレス界で最も注目を浴びた彼らの旗揚げ戦のチケットは発売開始から20分ほどで完売、プロレスの前売りチケットが即日完売したのは1988年第2次UWFの旗揚げ戦以来の出来事だった。

旗揚げ戦は5日,6日と有明の格闘技専用としてオープンした会場施設「ディファ有明」。注目の試合組み合わせは5日がNOAHの主力選手である三沢、小橋、秋山、田上がタッグを組んで60分3本勝負で対戦。勝利した側のタッグチーム同士が翌6日のメインイベントでシングルマッチで激突する。5日と6日の連続ドラマ的要素を持った内容となった。

旗揚げ戦の8月5日、メインの試合組み合わせは三沢・田上vs小橋・秋山となった。この試合で秋山が弾けた。1本目は開始から3分弱でフロントネックロックにより三沢から失神レフェリーストップで衝撃の1本専守。続く2本目も田上を相手に得意技のエクスプロイダー(変形裏投げ)によりピンフォール勝ち。2本連取で秋山が獲ってしまった。試合後にタッグパートナーの小橋の手を上げて勝利を祝福するかと思いきやそのままバックドロップに持っていった。小橋・秋山組が勝利した時点で翌日のメインイベントは小橋vs秋山と決定したのだ。秋山によると「明日はよろしく」という挨拶代わりのバックドロップだったという。

翌6日、メインイベントは小橋建太vs秋山準。小橋の古傷であり手術をした箇所の右膝を狙って勝機を見出した後にエクスプロイダーから前日に三沢から失神レフェリーストップを奪ったフロントネックロックで勝利。前日のタッグマッチで三沢と田上から獲り、この日は小橋から勝利。一気に秋山が頂点に踊り出た。全日本プロレスの象徴といわれていたのが三沢・川田・小橋・田上の4人による四天王プロレス。全日本時代に秋山の急速な台頭により四天王プロレス+1(秋山)から5強プロレスと呼ばれるようになってきた。そして新団体NOAHで秋山は立て続けに四天王から勝利を奪った。全日本プロレスの象徴だった四天王から勝利を奪ったことによってNOAHがこれから新たな方向へ向かって行くであろうと感じる。

しかしそうは言ってもその新たな方向というものが未だ分からないのが現状である。旗揚げ2連戦の模様をネット,TV,雑誌で見たがやっているレスラー達にとっても模索中といったところではないだろうか。全日本時代にはあまり出来なかった"魅せる"という点もあるかもしれない。試合のサイドストーリーをはっきりとさせて期待感を煽り楽しませるという点もあるかもしれない。しかしファンとして望むのは現在の流行であるPRIDE等の総合格闘技への進出である。総合格闘技もただ殴るだけだという単調で安易なモノではなく、いかに巧くポジションを取るかなどのテクニック面がクローズアップされたスポーツ的要素が強く、プロレスとは一線を画している。そのために総合格闘技に挑むプロレスラーというのは少ない。しかし総合格闘技に勝つ=最強のような風潮が昨今にはある。プロレスラーに求めるものはやはり「強さ」「凄さ」。格闘技色の強い団体から出たプロレスラー(例.桜庭)よりもNOAHなどの純プロレス団体から総合格闘技に進出して「強さ」を見せて欲しい。プロレスラーは総合格闘技でも出来る、という「凄さ」を見せて欲しい。NOAHの主役に踊り出た秋山は専修大学時代にアマレス部の主将で総合格闘技系への対応力も充分に持っていると見られている。簡単なことではないだろうがNOAHには総合格闘技面へも出てプロレスの「強さ」という面を再認識させてほしい。

(2000/08/12)

 

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