韓国旅行
2000年11月2日 木曜日
最後の夜なのでこのまま寝るのは忍びない。
明洞の街をウロウロして適当な飲み屋で飲むか、ということに。
夜の明洞、既に23時をまわり地下鉄も終わっていて街の人は少ない。
少し歩いていると前を行く人が
「ライター持っていますか?」と日本語で話しかけてきた。
我々は3人とも煙草は吸わないので誰も持っていなかった。
「日本語が聞こえたもので懐かしくて声をかけました」
とその男性は言った。
少し歩きながらその男性と日本語で話をした。
自動車関連会社に勤めていて3年前に日本にいたという。
私や友人の住んでいる街や大学名なども知っていて日本語も上手だった。
仕事で残業した後で飲んでいたら地下鉄がなくなってしまったのでタクシーを拾って帰るところだという。
少し話をして相手が「折角だから少し一緒に飲みませんか?」と誘ってきた。
今思うとこれが全ての間違いだった。
結論から言うとボッタクリに遭ったのだ。
前夜に韓国人5人組に純粋に奢られて気が緩んでいた、というのがある。
同様に純粋に奢ってもらったのにこっちはかなり警戒心を持ってしまったという罪悪感もあった。
向こうが1人でこっちが3人だったから気が緩んでいた、というのもある。
日本語をあまりにも流暢に喋って日本のことも詳しかったので安心した、というのもある。
最終日だから気が緩んでいた、というのもある。
様々な要素が絡み合ってあまり警戒することなくその人と一緒に飲むことになった。
明洞辺りでは開いている店があまりないので江南(カンナム)という飲み屋街へ行くことになった。
その人がタクシーを捕まえて江南へ向かう。
江南に着くと、「ここら辺は酔っ払いが多いので日本語は喋らない方が良い」と言われた。
やはり潜在的に反日感情というのがあるのだという。
その人はあまり迷うことなくバーのような店に入った。
我々も後に続く、昨夜よりも怪しげ。
カラオケボックスの個室のような部屋に通される、室内にはカラオケもある
瓶ビールが5本ほど来てとりあえず乾杯。
少し時間が経つと女性が2人室内に入ってきた。
片言の日本語を話せる女性で我々4人の間に座り、お酌をする。
何か妙な空気が流れる。
すると今度はウィスキーがボトルで来た。
女性が水割りを作ってくれる。
やばい、どう考えても高そうだ。
そうは思っても口に出せない、なんだかそういうことを言う雰囲気でなかった。
されるがままされていた、という感じ。
一緒に来た男性は平然と飲んでいる。
やがてカラオケが始まる、日本の歌も入っているカラオケだった。
一緒に来た男性は日本の歌も唄えた、かなり日本語が出来るらしい。
ソウル大学で日本語を学んだと言う。
帰るともなかなか切り出せないままダラダラと時間だけが過ぎた。
その男性や女性2人とは片言の日本語での会話など。
日本のクラブの安っぽい版みたいなものだろうか。
1時間半から2時間近くいただろうか。
ウィスキーボトル2本とビールが6本ほど、おつまみが3皿。
そろそろ帰りましょうと言うことに。
会計が640,000ウォン、一瞬我が耳を疑った。
64万ウォン?!6万4千円?!
しかもそれとは別個に女性2人に対してチップとして60,000ウォン(≒6,000円)。
合わせて1人1万9千円。
一緒に来た男性は「こんなもんだよ」と言って平然と190,000ウォンを払っていた。
私は財布に日本円で1万円を持っていた、友人も日本円で幾らか持っている。
高すぎると思ったが、飲んで食った手前そうは言えない。
何より一緒に来た男性が平然と自分の金額を払ったのだ。
最終日にとんでもないところへ来てしまった、後悔時既に遅し。
私と友人の日本円とウォンを合わせてようやく払うことが出来た。
帰りもその男性とタクシーに乗り、我々は明洞の駅で降ろしてもらった。
時刻は既に3時を回っていた。
ホテルへ戻ってどことなく重苦しい雰囲気の中で反省会。
あれはやはりボッタクられたのだろうか?
1人1万9千円(チップ込み)。
2時間程でウィスキーボトル2本にビール6本、つまみ3皿。
どう考えても高かった。
それならばあの男性がグルだったということになる。
しかしそれにしても日本人からボルために終電がなく、人通りもない明洞で待っているだろうか?
それだからこそ狙い易いのかもしれないが、あまりにも可能性が低いような…。
それにボッタクルだけにしては日本の事に詳しすぎた。
私の大学名や小田急線の駅まで知っているだろうか?
どちらにせよ最初に会った時に我々は金を持っていないという明確な意志表示をすべきだった。
前日に奢られているから今夜もという淡い期待が確かにあった。
それからハッキリとものを言えるようにならねば。
気が付けばウィスキーなどが出されたし。
「金がない」とハッキリ言えていれば、「その値段は高すぎる」とキッパリ言えていれば。
前日の彼らに抱いた警戒感の少しでもこの夜の彼に抱けていれば良かったのに…
今更ながら自分の浅はかさが悔やまれる。
過ぎたことだからこうやって自分を納得させるしかない、「良い勉強になった」と。
結果としてお金は取られたが危ない目にあったわけではない。
次回からもっと警戒心を抱くだろうし、そういう場ではハッキリとものを言うようになるだろう。
最小限の被害で済んだと思うしかない。
反省会やら風呂入ったやらで結局寝たのは4時過ぎになっていた。
翌朝は8時45分に空港へ向かう迎えのバスが来るというのに。