富士登山2011
2011年8月20日
3年連続の富士登山。 2011年8月20日 土曜日 今年の富士登山のテーマは山頂御来光。 そのために山頂の山小屋を予約して1泊2日のスケジュール。 しかし登山の1週間前、週間予報が出始めた頃から天気が芳しくないことを知る。 週間予報だから持ち直すだろう…と思っていたがその兆候が無い。 前日の金曜には大雨も降り、これまでの真夏日から一気に気温も低下し、土曜の天気も微妙。 登山メンバーから急遽メールで質問が来る、「今回の登山を決行するか否か」。 協議の結果は全会一致でとりあえず現地までは行ってみようということになった。 土曜未明に登山メンバーの車で御殿場方面を目指す。 東名高速で大型トラックが横転という事故で30分ほど渋滞させられて足柄サービスエリアへ着いたのは6時30分過ぎ。 登山メンバー全員が集まり、朝食と共に改めて作戦会議。 雨は降っていないが厚い雲が空を覆い、朝になっても太陽の気配が一切無い。 いっそのこと本降りになってくれた方が諦めもつくのだが。 やっぱり麓か5合目までは行ってみよう、ということになりコンビニで買出しを済ませて出発。 この時期の富士山はマイカー規制を実施しており、自家用車で5合目まで登ることは出来ない。 麓の駐車場に車を止めてそこからバスで5合目まで向かうことになる。 麓の水ヶ塚公園の駐車場(1000円)に着いたときには霧雨が降っていて寒い(標高約1500mだとか)。 そんな天候にもかかわらず駐車場はそれなりの入りで、レインウェアに身を包んだ登山客も多数。 オイオイ本当に行くのかよ…と思ったがとりあえず5合目までは行ってみることに。 登山用装備に加えて雨用装備も身につけて富士宮口5合目へ向かうバスに乗り込む(往復1300円)。 30分ほどで富士宮口5合目に到着。 5合目まで来たら雲の上だし晴れているかも…という淡い期待は脆くも崩れ去った。 むしろ下界より酷い濃霧が辺りを包み、どこに山頂があるのかすら分からない状況になっていた。 そんな状況でも結構な登山客が登ろうとしているのには驚いた。 もはや登る気持ちは失せていたが、とりあえず登山道入口(標高2400m)まで行ってみる。 なんとなくこのまま帰るのは惜しい気がしたので次の山小屋まで行ってみようかと軽い気持ちで登り始めた。 常に周囲は霧に包まれて全く景色を楽しめない。 下界から見るとココは完全に雲の中のはず。 雲の中を歩くなんて言葉だけだとロマンチックだが、実際には微塵もそんなことは無い。 霧しか見えず寒いし濡れるし…な状態で20分ほど歩くと6合目(標高2490m)山小屋に到着。 これで終わりにして引き返すかと思っていたら目に付いた標識「宝永山60分」。 宝永山は富士山の宝永大噴火の影響で出来た側火山と言われる富士山の子供みたいな山。 そこにも山頂があるらしいので、今回の登山は富士山から宝永山に変更。 1時間ならこの気象条件でも耐えられるだろうということで出発。 10分ほど歩いて到着した宝永山第1火口には登山客が多数。 しかし一面が濃霧に覆われているので何も見えない。 そこから我々は宝永山山頂を目指して歩き始める。 宝永山第1火口にはそれなりに登山客がいたのにその先に登山客は無く、今回のメンバー5人だけの登山。 ずっと濃霧が続き、数メートル先も見えない状況。 60分程度の登山と舐めてかかったが、意外に急勾配がキツイ。 そして激しくなってくる風雨。 雨は降っているというよりも風と共に前後左右あらゆる方向から身体を包む。 雨が身体を打つという状況ではなく、ミストサウナの中にいるような感じ。 全身ビショビショで登っているから寒いのだが、身体の内側は汗をかいて暑い。 身体の感覚が変になりそうだった。 おまけに視界が非常に悪いので目標地点が何も見えない。 休憩するポイントも視界が良ければ「あそこまで行ったら休もう」と言えるが、何も見えないとそれも出来ない。 視界の悪い状況が気力を、強風と霧雨と冷気が体力を奪っていく。 他に登山客がいないので何かあっても助けを求めることが出来ない。 あの寒さだったら低体温症になってもおかしくなかった気がするし、強風に煽られて滑落なんて事態も想像できた。 真夏の富士山でもこの状況なら、冬の富士山で遭難者が出るのも頷けた。 脳裏を過ぎったのは6合目の山小屋で見た看板。 イヤイヤ、無理だろ…と思ったが冷静になって考えると「入口迄約7分」はお子様、お年寄でも行けますってことだろう。 少し紛らわしい看板な気がする。 そんな中をひたすら登っていくが、視界が悪い状況でどこまで進んでいるかの判断基準は時間だけ。 6合目の標識には宝永山まで60分と書いてあった。 6合目を出発してから50分ほどが経過しているからあと10分ほどで到着するのではないか。 目標とするものが見えないので時間だけを頼りにあと少しだと信じて登り続ける。 そして霧の中に見えてきた案内標識によると到着したのは「宝永山馬の背」で宝永山まで5分とのこと。 「馬の背」が富士山と同じだと考えるとこれは宝永山の火口周囲だと思われる。 宝永山のお鉢巡りコースなのか道が平坦になり、恐らくは周囲に遮るものが減って風が一段と強くなった。 左右両脇が濃霧に包まれた登山道で吹きすさぶ強風。 ゲームか映画で最後の敵が出てくる直前のワンシーンかのような状況。 相変わらず数メートル先も見えない状態のまま標識が指す方向へ進んでみる。 すると霧の中から登山客がこちらに向かってくるのが見えた。 これまで全く登山客と出会っていなかったので、濃霧から出てきた人は幻かとも思えた。 久しぶりに人に出会えたので情報収集。 少し歩くと宝永山山頂の碑があるとのこと、この後も道は平坦だということ。 それを聞いて安心して歩を進める。 すると確かにあった、宝永山山頂の碑。 それ以外は濃霧で何も見えず、登山客もいない。 先ほど会話した登山客が「濃霧に包まれてひたすら不気味なだけでした」と言っていたのも納得。 富士山頂の碑と比べると明らかにスケールダウンの宝永山頂の碑。 景色も何も楽しめないので「宝永山登頂」という事実だけ残した。 しかしまぁこれで富士登頂はダメだったにしろ、1つの成果は得られた。 下山は足取りも軽くなり、登山時とは逆に進めば進むほど風雨が弱まって楽になっていく。 登山より下山の方が気楽に感じたのは初めてだ。 下山時には多くの登山客とすれ違った。 登山時に一緒だったら精神的にもう少し楽だった気がする。 6合目の山小屋を経てスタート地点の5合目に戻ってこられた。 山小屋の関係者らしき人たちの会話が聞こえてきたところによると富士山9合目では立っていられないほどの強風だとか。 宝永山ですらあの状況だったなら富士山なんて言わずもがな。 今回は富士登山を諦めて正解だったと思う。 退く勇気というのを教えられた。 時間的にはこれまでで最も短い登山だったが、過酷さはこれまでの登山より上だった気がする。 自然の脅威というものを知ることが出来た今回の登山は良い経験になった。 下りのバスで水ヶ塚公園の駐車場に戻り、濡れた登山装備を着替える。 登山メンバー全会一致で暖かいものが食べたいという意見。 少し距離はあったが山中湖まで車で行き、名物のほうとうと鳥モツ煮を食す。 登山で疲れて冷えた身体に具沢山のほうとうが染み渡る。 例年の登山より歩行距離自体は少なかったからか、食事をするとかなり回復した。 来年こそ山頂御来光と気持ちを新たにし、2011年の富士登山は宝永山登頂という結果を残して終了。 来年は寒さと風雨に耐えられる装備で臨みたい。 それよりもなによりも好天を祈願しよう。 詳細データ
剣ヶ峰制覇を果たし、残るテーマは山頂御来光。
しかしそこに立ちはだかったのは山の天気という自然の脅威だった。
霧の富士宮口5合目登山道入口
一寸先は霧
但し、好天時に限る
異世界のような雰囲気
濃霧に佇む山頂碑
富士ではないが登頂を果たして無事生還
疲労と寒さと空腹は最上のソース
9:00 6合目山小屋(2,490m)
9:10 宝永山遊歩道へ(遊歩なんて甘っちょろいもんじゃなかったが…)
9:25 宝永山第1火口(2,420m)
10:10 宝永馬の背
10:20 宝永山山頂(2,693m)
11:15 6合目山小屋(2,490m)
11:30 5合目(標高2,400m)富士山表口(富士宮口)
午前中だけで全て終わっていた。