富士登山2010
2010年9月4日

2年連続の富士登山
今回の目標は単なる登頂ではない
昨年果たせなかった日本最高地点の踏破
強行スケジュールなのはもはや定番

 

2010年9月3日 金曜日

今回の富士登山は昨年のメンバーから2人加わって総勢6人。

6人なら大き目のワンボックスカーを借りて行った方が効率が良さそう。

そんなわけでレンタカーを手配した。

しかし現在は職場が変わっている2名が当日になって一緒に現地へ向かえないことになった。

2名はそれぞれ富士山まで車で行くというので、結局4名で7人乗りワンボックスカーを贅沢に使うことに。

昨年は東名高速を使い御殿場から行ったが、今回は中央道を使って河口湖から行く。

仕事を終えて一時帰宅、21時に八王子で待ち合わせてレンタカーを手配して出発、談合坂サービスエリアで飯を食う。

談合坂SAからの運転は私が受け持ったが、実家を出てから殆ど運転していない現状。

今年初めてハンドルを握ったのが初めての7人乗り車の運転でかなり戸惑った。

サイドブレーキが左手元に無い!?とか…。

クラッチかと思ったコレがサイドブレーキ!?とか…。

久々の運転を強調しすぎたせいか同乗者を必要以上に不安にさせてしまい、アレやコレやと指示がうるさい。

イヤイヤ、そんな基本知ってるよって…私だって免許持ってるって…

おまけに累計運転時間は免許保持歴考えたら私の方が上だって…多分。

そんなことがありつつも無難に河口湖インターに着いたのは23時過ぎ。

翌早朝の登山に備えて健康ランドで仮眠をする予定だった。

事前に調べておいた健康ランドへ行ってみるが電気が殆ど消えている。

嫌な予感を覚えつつ入口へ行ってみると営業時間が22時までだった。

河口湖周辺は湖畔のホテルがいっぱいあったが、我々に必要なのは宿泊ではなく仮眠。

数時間の仮眠のために湖畔ホテルは勿体無い。

検討の結果、登山開始予定の富士山5合目まで行ってしまうことに。

高地順応も含めて車中泊にした方が良いという結論になった。

コンビニで登山用の食料・飲料を購入。

その途中で遅れていた1名が車で合流。

総勢5人で車2台、車中泊用の車が増えて助かった。

時刻は0時を過ぎた頃、富士スバルラインへ。

その途中にメロディーロードという道路に凹凸を付けて音が出る仕組みの道を通過。

♪あたまを雲の上に出し〜…唱歌・富士山だと分かったのは少し経ってから。

左右が森(樹海?)に囲まれた深夜の真っ暗な道路で急に聞こえてきた音。

最初はお経のように聞こえて何事か分からずかなり恐かった。

夜道を1人で運転してたらパニックになりそうだ。

富士スバルラインは有料道路(2,000円)、料金所には係員がいて…

「5合目駐車場は満車なので手前1〜2kmの所に止めてもらうことになります」…と言う。

昨年の須走口5合目も満車だったのである程度覚悟はしていた。

1〜2km手前なら許容範囲内なので、そのまま富士スバルラインを登る。

夜の空に浮かび上がる富士山頂のシルエットと登山者か山小屋かの灯り。

9月になったから登山者が減っているかと思ったが、満車の駐車場を考えてもそんなことは無いようだ。

初めての富士登山が9月初旬でガラガラだったのでそのイメージが強かった。

しかしそういえばアレは学生だったからこそ出来た平日富士登山だった。

今は軽い登山ブームでもあるらしいし、9月とはいえ週末の富士山は未だ混んでいるようだ。

そうこうしているうちに係員が出てきて誘導された。

昨年のように路上駐車ではなく、5合目ではないがちゃんとした空き地で駐車場のようになっている。

最初は空きがあった駐車場も後からどんどん車が入ってきてすぐにイッパイになった。

恐るべし、週末富士登山。

既に標高は2,000メートル越え、外に出ると当然寒い。

そして空を見上げると絵に描いたような満天の星。

まさに「満天の星」とタイトルをつけて飾れるくらいの星空にしばし見とれる。

持参した防寒着を全て着用して車中泊に備える。

寝る準備が出来たところで麓で買ってきた景気づけビールで乾杯。

満天の星を肴に富士登山の成功を祈って飲む。

1:50頃に就寝。

 

 

2010年9月4日 土曜日

寒さで熟睡は出来ないまま、4:20頃に起床。

おにぎりの朝食を済ませ、荷物の整理(不要なものは車に置いていく)をして登山準備を整える。

5時が近くなってくるとじわじわと空が白み始める。

しかし方角的にこちら側からは御来光は望めず、気が付いたら周囲が明るくなっていた。

明るくなってきて気が付いたのが仮設トイレがあったこと。

簡易とはいえ駐車場も仮設トイレもあるとは、通行料2,000円とるだけのことはある富士スバルライン。

5時過ぎにスタート地点となる5合目を目指して出発。

その途中で今回の登山メンバー最後の1名が合流。

仕事を終えて横浜に0時過ぎに帰宅した後で夜通し車を走らせてさっき到着したばかりだという。

我々以上に強行スケジュールで感心すると同時に心配にもなる。

なにはともあれこれで今回の富士登山者6名が全員集合。

昨年の4人に加えて、2人が追加参戦。

参加者6人中5人が来年のフルマラソン挑戦者でもあった。

富士山頂上はあくまでもフルマラソン完走の通過点に過ぎないと意気込みを新たにする。

5合目は駐車場の規模・お土産屋・レストランなどそれだけで1大観光地。

朝から大きな観光バスが客を乗せていた。

トイレ休憩や最後の準備を整えていよいよ登山開始。

後方が目指す点
平均年齢28歳、いざ出発

6時登山開始は昨年と全く同じスタート。

今回のルートは富士スバルライン5合目、通称・河口湖口。

途中から吉田口と合流するルートは、私が最初に富士登山をしたのと同じルート。

歩き始めると平坦な道、それどころか緩やかな下り坂になっている。

これから登山だって言うのに山を下らせるとは何事か。

分ほど歩いて富士登山道吉田口の入口に到達。

むしろココからが本当のスタートだったか。

12年前もここから登り始めたのを明確に思い出した。

スタート比較
デジカメではなく、L版写真をスキャナで取り込んだ画像 看板は変わらない

12年前、1998年

1周回った2010年

ココからはひたすらの登り。

昨年同様天気が良く、少し歩いただけで早くも暑い。

すぐに長袖Tシャツを脱いで半袖Tシャツ1枚になる。

頂上辺りまで見通せる登山道には山小屋が沢山。

昨年の須走ルートよりも山小屋は多そうだ。

山小屋が沢山あると休憩のポイントになって良い。

9月に入ったとはいえ土日なので登山客も大勢。

山小屋も8月中には閉まってしまうとの話も聞いていたが殆ど(全部だったかも?)開いていた。

岩登山
岩場も登る

7合目辺りまでは良いペースで登れた気がするがそこから先はじわじわとペースダウン。

ただ山道を進むという行為がこれほどまでに体力を奪っていくとは。

昨年より人数が増えた分だけペースが遅くなってしまうのは仕方ない。

登山中は喋るのも息が切れて辛いが、喋っていた方が気が紛れる。

黙々と登るよりは結果的に喋った方が気分的にも楽。

そう考えると時々見かけた1人で登っている人は何を思って登っているのか大したものだと思う。

ひたすらに己と向き合う時間という意味では良いのかもしれないが、普通だと心が折れそうだ。

富士登山
絶景の登山道

本8合目まで到着すると昨年の須走ルートと合流する。

頂上の鳥居も肉眼で確認できるが、そこからが遠い。

何気ない1歩がえらく消耗する標高3,000メートル越えの世界。

2,3つのジグザグを進んでは休憩、休んでは進みを繰り返してじわじわと距離を稼ぐ。

モチベーションはただ1つ、頭上に見える頂上のみ。

焦らず急がず1歩ずつ進むことでしか近づけない。

そんなこんなで13時10分過ぎ、昨年同様の登頂に成功。

空も表情も晴れやか
2年連続3回目の登頂

昨年より遅れをとったかと思いきや、10分ほどしか違わない。

山頂の山小屋も全部では無かったが開いていて、昨年同様の賑わいを見せる。

何より昨年と違うのは天気が良いということ。

昨年は7合目辺りで雲行きが怪しくなり、途中では雲の中・霧の中を登る局面もあった。

山頂についてからも曇り空で、途中から火口が霧に覆われて何も見えなかった。

しかし今回は眼下こそ雲海だったが、頭上は常に晴天。

山頂に着いてもそれは変わらず、火口の向こうの富士観測所も綺麗に見渡せた。

富士山登頂は3回目だが、ココまで良い気象コンディションは初めてだ。

これは何が何でも剣ヶ峰(日本最高地点)へ行きたい。

逸る気持ちを抑えてまずは山頂に着いたということで昼飯。

今回はメンバーの1人がコッヘルを持ってきていたので山頂で湯が沸かせる。

山頂でぜひカップラーメンを食べたいというささやかな希望。

標高3,700メートルでの沸点は90度弱だとか。

そんなお湯で作ったカップラーメン。

下界で食べたら大したことない代物でも、富士山頂の達成感というスパイスが加わると極上の料理に変化。

確実にこれまで食べたどのカップラーメンよりも美味しかったと言える。

料理は味よりもシチュエーション、というのがよく分かった富士山頂のカップラーメンだった。

飯も食って落ち着いたが、今回の富士登山はコレで終わりではない。

最終目標は日本最高地点の剣ヶ峰だ。

昨年の須走ルートと今年の吉田ルートの頂上から剣ヶ峰は火口のほぼ対角線上にある。

富士山の火口を回る通称・お鉢巡りをして辿り着ける場所だ。

昨年は霧が出て視界も悪くなり、帰りの時間も考慮して諦めたお鉢巡り。

今年も帰りの時間を考えると不安はあったが、先述の通りにこれまでに無いくらいの好天。

この機を逃すのは惜しいし、今回の富士登山の目標はただの山頂ではなく真の山頂。

今回が初富士登山だった2人は山小屋前のベンチで休むと言う。

結果、昨年富士登山をした4人で剣ヶ峰を目指すことになった。

やはり最後はオリジナルメンバーか。

山頂到達で緩みかけた気持ちを引き締めなおしてお鉢巡りへ。

頂上とはいえ火口周りなので当然平坦ではないデコボコ道を進む。

しばし歩くと富士宮口の頂上に辿り着く。

こちらの山小屋は閉まっていたが、公衆トイレは開いていた。

曰く、日本で最も高いところに位置するトイレらしい。

日本一高いトイレから見える日本最高地点。

しかしそこへ辿り着く最後の難関が「馬の背」と呼ばれる急斜面。

まだだ、まだ終わらんよ…
ファイナルアタック

そう簡単に日本最高地点へは到達させまいとする富士山の最後の意地が垣間見える。

最後の最後にこれまでで1番かもしれない急斜面を登る。

そう長くは無い急斜面でもこれまでの疲労の蓄積から一気に登ることが出来ないし気を抜くと滑り落ちそうで恐い。

しかしそれを登りきった先にあるのは日本最高地点。

登り終えたらクタクタだったが、晴天の中で辿り着いた最高の地点は最高の充実感。

今は無人で観測を続けているという富士山観測所の手前にある日本最高地点の碑。

12年前も昨年も果たせなかった頂上の中の頂上の踏破。

3度目の富士登山でようやく達成することができた。

Top of the Top
日本の頂点

富士観測所の脇には展望台が設けられていた。

日本最高地点よりも高いところに位置する展望台から下界を見下ろすも一面の雲海。

これで雲が無ければ最高なんだが、昨年は頂上すら霧の中だったことを考えるとそこまで高望みしちゃダメか。

剣ヶ峰を後にしてお鉢巡り再開。

もう半周歩いて戻らないといけない。

お鉢巡りの道は途中で火口に降りる道になっている。

火口の中といっても石や岩がゴロゴロしているだだっ広い場所なだけ。

日陰になっている部分には万年雪(氷?)も見えた。

火口を下降
火口内の僅かな万年雪、上の方に見えるのが日本最高地点

富士山は休火山だというがその火口の光景はどう見ても死火山だった。

お鉢巡りは90分弱でスタート地点に戻ってきた。

休憩をしていた2人と合流して下山準備。

お鉢めぐりをした分、昨年より2時間近く遅れた16時に下山開始。

昨年の須走口は直線を一気に下る砂走りがあったが、吉田口にはそれがない。

砂走りのような細かな砂ではなく、硬めの砂利や石が多いので地面が硬く足への負担も大きいような気がした。

そんな下山道がジグザグに延々続く。

吉田ルート下山道には山小屋も無く景色も変化を感じない。

山頂というモチベーションが無い下山は会話もあまり無くただただ黙々と下るだけ。

下山中に日が沈んできて次第に薄暗くなっていく。

下山中の唯一とも言えるかもしれない見せ場は日が沈みかけた頃。

富士山が太陽を背にした状態になり、雲海のキャンバスに富士山の影が綺麗にクッキリと。

雲海に映える富士山は富士山からでないと見ることが出来ないだろう。

その壮大な光景は一瞬ではあるが下山の疲れを忘れさせた。

雲海富士
写真だとスケールが伝わらない

5合目付近に戻ってきたときには完全に暗くなっていた。

外灯などあるわけが無く、ヘッドライトを持ってきていたメンバーがいなかったらかなり危なかった。

登山開始時には緩やかな下り坂と感じた道が戻るときには強烈な登り坂に感じる。

下山で疲れ果てた身体に最後の登りは結構きつい。

5合目に近付くとこれから登山という団体客と沢山すれちがう。

山頂御来光を目指す集団だろう。

私も日本最高地点を踏破した今、最後の目標は山頂御来光だろう。

しかしあの真っ暗な中をヘッドライトの灯りだけで登山道を登るのはかなり至難の業に思えた。

景色も楽しめないし、目標が見えない闇をひたすら進むのも精神的にきつそう。

日が落ちないうちに山頂まで辿り着いて山小屋一泊で御来光が現実的な気がする。

19時、スタート地点の富士スバルライン5合目、通称・河口湖口に戻ってきたときには皆クタクタ。

登山道・山頂でのお鉢巡り・下山道、合計すると昨年よりも長いルートを歩いてきた。

これまでの人生で最も疲れたんじゃないかと思えるくらいの疲労。

スタートから約14時間後
登山後

僅か13時間前に始まった登山が遠い昔のことのようだった。

富士登山という非現実体験の中では時間の流れが地上とは全然違うように感じられた。

登山は人を成長させる、というような格言があるかは知らないがそれも一理ありそう。

あれだけの濃密な時間を経たら何らかの成長はありそうだ。

そういえば登山中に中学生くらいの少し太めの男の子が両親と一緒に登っていた。

7合目くらいまでは我々と同じくらいのペースで登っていたが男の子は泣き言ばかり言っていた。

途中で我々の方が先に進んでしまい、その男の子一家の行く末は分からないまま我々は山頂へ。

そしてお鉢巡りをして剣ヶ峰に到着した頃、なんとその男の子一家も剣ヶ峰にいた。

あんなに泣き言ばかり言っていた男の子が晴れ晴れとした表情で饒舌になっている。

彼もこの登山で成長したんだなと実に微笑ましかった。

さて、私は成長したのだろうか。

今回の富士登山は日程もルートも最初の富士登山だった12年前と同じだった。

あれから一回りも年が経ったのかと思うと感慨深いと同時に焦りも覚えてしまう。

改めて問う、私は成長したのだろうか。

 

 

詳細データ

6:00 5合目(標高2,305m)富士スバルライン5合目、通称・河口湖口登山道出発
6:35 6合目(2,390m)
7:30 7合目(2,700m)
9:25 8合目(3,100m)
11:10 本8合目(3,400m)
11:40 8合5勺(3,450m)
12:30 9合目(3,600m)
13:15 頂上(3,700m)
14:10 お鉢巡り開始
14:50 剣ヶ峰(3775.63m)
15:35 お鉢巡り終了
16:00 下山開始
17:55 7合目(2,700m)
19:10 5合目(2,305m)

 

持って行ったもの
装備:ミドルカット登山靴・スポーツウェア(下半身)・半袖Tシャツ・長袖Tシャツ・ウィンドブレーカー・帽子・タオル・バックパック・100均レインコート(幸い使用局面なし)
持物:ポカリスエット900ml・水2リットル・おにぎり4個・ミニカップ麺・飴・カロリーメイト

 

今回は初参戦のメンバーが張り切って登山グッズを揃えていたのでつられて色々と購入。

装備は殆どがスポーツブランドの速乾性素材を使ったウェアで揃えた。

昨年のジーパンやネルシャツに比べるとだいぶ動き易くて良かった。

3度目の富士登山にして初めてまともな装備で臨んだ気がする。

持ち物の生命線である水分に関して昨年はポカリ900ml・水500mlで後半はかなり抑えて飲んだ。

今回は山頂でカップ麺を食べるためにも多目の2リットルを持っていった。

大きくて重くはあるが水は生命線。

チョット多すぎるかと思ったがあればあるだけ飲めるのが水。

2リットルでも決して多すぎることは無かった。

昨年の反省で用意した軍手も使えた。

手を使って登るとだいぶ楽な局面が多いのと転んだとしても安心できる(幸い転ばなかったが)。

装備とノウハウが付いてきた3度目の富士登山。

4度目は、あるのか?!

 

 

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