富士登山2009
2009年8月29日

職場の酒席の戯言で富士山に登ろう、みたいな話になった。
記憶は無いが話が進んでいたらしい。
ネパールから帰国後、富士登山の日程が決まっていた。
思い返せば11年ぶりの富士登山。
当時は10代ですよ…

 

2009年8月28日 金曜日

11年前、学生で時間だけは充分にあった初めての富士登山。

その時は山小屋に泊まり、1泊2日で登頂を目指した。

今回は時間は無い社会人としての富士登山。

必然的にスケジュールも強行軍となった。

登山開始は土曜日の早朝を予定。

そのためには金曜夜には現地近くに着いていたい。

しかし哀しき社会人、金曜日は仕事。

というわけで金曜仕事終わりの夜に出発、麓で仮眠をして早朝から登山開始の予定。

今回のパーティーは職場のメンツ。

集まってみれば年齢が24,26,28,30と綺麗に2歳ずつ分かれた。

アレ?私だけ30代?でも私だけが富士登山経験者でもあった。

28歳が車を出すことになり、お互いの居住地や高速道路までのアクセスを計算して集合場所を決める。

結局、21時30過ぎにJR横浜線の某駅にて待ち合わせ。

晩飯を食べる時間が無かったメンバーもいたのでまずは街道沿いのファミレスへ。

4人中3人がドラクエ9を持っていたのでそこでドラクエ9のパーティープレイが始まる。

これから富士山登ろうってのに何してるんだか…

諸々済ませて東名高速に乗り、御殿場ICを目指す。

高速道路はスムーズに走り、時刻は0時近く。

そのまま進めば0時前に降りることは出来たが車はETCを搭載している。

土日は高速1,000円の恩恵にあずかるため、敢えてサービスエリアで時間を潰して0時を跨いで御殿場で降りる。

横浜町田から乗った東名高速を御殿場で降りて1,050円。

話題の高速1,000円を初めて味わった瞬間だった。

幹事役の事前の計画だと御殿場で高速を降りた後で目指すのは健康ランド。

ここで仮眠を取って翌朝の登頂に備える。

健康ランドに入ったのが0時10分過ぎ。

AM2時を越えると深夜料金で1,500円追加になるという。

こちらの出発予定時刻はAM3時過ぎ。

たった1時間程度で深夜料金を取られるのは癪だった。

しかしその1時間の睡眠がこの後の富士登山に影響するかもしれない。

素直に深夜料金前提で休憩をすることにした。

多種多様な風呂があり、数時間後に迫った登山に備えて入浴。

風呂から上がったのはAM1時近く。

AM3時には起きて車で5合目まで行く予定にしている。

強行スケジュールなのは分かっていたこと、リクライニングソファが並んだ仮眠室で眠る。

 

 

2009年8月29日 土曜日

AM3時、後輩に起こされて目覚める。

風呂から上がって、携帯も腕時計も何も無くそのまま眠っていた。

我ながらそんな状況でどうやってAM3時に起きるつもりだったのだろう。

むしろ起こしてもらう前提だったとしか思えない、というかそうでしたゴメンナサイ。

全員起きて準備が整ったのが3時20分頃、これから未明の道を走って富士山5合目を目指す。

富士山登山車道に入る直前のコンビニで買い出し。

朝・昼飯用のおにぎり、ペットボトル飲料、栄養補助食品、飴など。

持ち物を整えてAM4時前、富士登山道須走口5合目を目指す道路へ。

すぐに看板が見えてきた「5合目駐車場満車」。

そんなバカな、この時間から満車とか考えられない。

見たところずっと立ちっぱなしの看板に見えた。

ピーク時に出しておいたのをしまい忘れたのだろうと無視して登り始める。

外灯など無く、周囲は樹海で真っ暗な夜道をジグザグ進む。

お化けでも出てきそうで恐い。

真っ暗闇をマウンテンバイクで登山している猛者が数人。

最初に目に付いた時はうわぁっと声をあげるほど驚いた。

まさかAM4時に富士山を自転車で登っている人がいるとは。

少し走ると眼前に山のシルエットとおぼろげな光。

真っ暗な山のシルエットにぼやけて見える灯りはなんだか幻想的。

恐らくは山頂御来光を目指して未明の登山をしている人々のヘッドライトだ。

いよいよ富士登山が近付いてきたのだと心がはやる。

そして見えてくる路上駐車の列。

え?まさか…コレ全部駐車場に入りきらなかった車?

そのまさかを裏付けたのがこんな時間(AM4時過ぎ)に立っていた交通整理のようなオジさん。

「5合目の駐車場は満車だと思います。ココじゃUターン出来ないから上まで行ってUターンしてください。」

麓にあった「5合目駐車場満車」の看板は本当だったのだ。

それを裏付けるように対向車線から下りてくる車が。

8月とはいえ、土曜日とはいえ、月末最終土曜だから大丈夫だろうとタカをくくっていた。

まさかこんなに車が多いとは思わなかった。

とにかく一旦5合目駐車場まで行かないと引き返すことも出来ないのでとりあえず登ってしまうことに。

5合目駐車場にも係員がいて「満車です」と無情の宣告。

仕方ないので来た道を戻りつつ路上駐車の列で空いている隙間を探す。

勿論そう簡単に空いている所は無くどんどん下りていく。

するとカーブで車が途切れている所にギリギリ1台なら入れそうな隙間が。

そこに止めようと奮闘していると係員のオジさんがやってくる。

注意される、ダメか…と思ったら「ギリギリまでバックすれば大丈夫」と神の一声。

これでようやくスタートラインに立てる。

富士登山道須走口5合目を目指す車道から登山開始。

AM4:50、かなり肌寒く長袖のシャツを着てちょうど良いくらい。

まず目指すは本当のスタートとなる須走口5合目。

延々と路駐が連なる通りを進む。

ロチュー
駐禁の標識は無かった

じわじわと空が白み始め、20分ほど歩いて標高2,000メートルの須走口5合目に到着。

そして時を同じくして雲海の中から御来光。

バッチリのタイミング。

まさに雲の海となっている眼下から陽が昇るその瞬間を拝む。

前回は7合目の山小屋での御来光だったが、5合目でも充分すぎるほど美しい。

視野全体がじわじわ明るくなりつつオレンジの陽が昇る様は写真では伝わりきらないだろう。

これで目的果たしたな、と言えちゃうくらい綺麗だった。

御来光
写真でどこまで伝わるか素晴らしき御来光

時間は5時過ぎだったが既に5合目の土産物屋は営業していた。

前回は吉田口(別名河口湖口)の5合目からスタートだった。

それと比べるとだいぶスケールの小さい土産物屋だった。

先述の通り、既に須走口で標高は2,000メートル。

気休め程度だろうが多少は身体を慣らした方が良いだろうということで朝食がてら休憩。

買っておいたおにぎりを食べる。

メンバー全員がおにぎりを買っている、やっぱ力つけるには米でしょう。

時間がキリの良い6:00、いよいよ本格的に登山開始。

苦行の始まり
平均年齢27歳、いざ出発

登山道に入ってすぐの所にあった古御嶽神社とやらで登頂祈願。

最初の登山道は林の中。

10分ほど登って林を抜けると空は綺麗な青空で頂上まで見晴らせる。

事前の天気予報だと御殿場地方の降水確率は高めだったらしいが心配は無さそう。

地面は基本的に砂と土だが、整備された登山道で登り易い。

富士犬
犬も登るらしい

天気も良いのですぐに暑くなり、上着を脱いでTシャツ1枚に。

序盤は未だ疲れが無くても15〜20分おきに1度は休憩を取るように心掛けて登る。

登山開始から1時間ほどで6合目(標高2,400m)に到着。

山小屋前はチョットした休憩所のようになっていて多くの人が休憩している。

そこでは登山道よりも長く休憩を取って次に備える。

以後、高度が上がるにつれて休憩を取るペースが増えていく。

明らかに前回登った時よりも人が多い。

前回は9月上旬のしかも平日だった。

今回は8月下旬の土曜日、当然といえば当然か。

6合目の次が7合目かと思いきや次に現れるのは本6合目(標高2,700m)。

次は新6合目とか元祖6合目とか本家6合目とか出てこないよな…

下界
日本を見下ろす

「砂走り」と呼ばれる下山道も見えてまさに砂を巻き上げながら駆け下りていく人々が沢山。

傍から見ていると結構急な勾配を駆け下りているのでかなり恐そうだ。

遥か
目指す山頂と一直線に伸びる砂走り

本6合目辺りでは緑が見られるが標高が3,000mを越える7合目まで来ると点在している程度になる。

今回の須走口登山道は植物なども見られるルートとのことだったが頂上ばかり見ていて結局植物は殆ど見なかった。

7合目(標高3,090m)の山小屋で休憩中、急に辺りに雲が増えてきた。

気にせず登り始めると周囲が霧に包まれつつあった。

恐らくは雲の中に入ったのだろう、霧が辺りを覆う。

霧の中を流れる雲に触ることができ、それはまるでクーラーから出る風に手を触れたような感覚。

ヤバイ、天気崩れるかと思ったら上空は青空が見えていたりする。

山の天気は何とやら…というのを見事に感じた。

幸いにして雨が降ることは無く、序盤より明らかに休憩のペースが増えつつも先へ進む。

8合目(標高3,350m)に到着するとこれまでより明らかに人が増えた。

ここで吉田口と合流するのだという。

人気の高い吉田口からの登山者が合流するので一気に人が増えるらしい。

吉田口は前回私が登ってきたルート。

つまりココから先は前回も経験した登山道を登ることになる。

8合目から20分ほどで本8合目(標高3,400m)に到着。

これまでは1合につき1つの山小屋しかなかったのが、本8合目では2,3つある。

おまけに富士山ホテルなんて立派な名前がついたものまで。

人の多さも賑わいもコレまでの山小屋休憩所とは比較にならない。

しばし休憩して本8合目を出発、山頂まで1.2km80分の案内板。

前回もそうだったがこの辺りまで来ると少し歩いただけですぐに休憩を挟まないとキツイ。

激しい動悸と足の痛みと偏頭痛。

他の登山者も同じようで、倒れ込んで休んでいる人なども。

全てが非日常
クタクタ

殆どハイキングのような富士登山とはいえ、やはりそこは標高3,000メートル越えの世界。

何でもない行動に対して疲労は何倍にも増して襲ってくる。

それでも親子連れで小学校高学年か中学生くらいの連中もいたので我々に登れないはずがない。

登山道のクネクネを1,2つ曲がっては休憩を繰り返す。

本8合目越えて9合目か?と思ったら8合5勺(標高3,450m)とか…

富士霧中
霧中で登る、霧心で登る

簡単な神社があるだけの9合目(標高3,600m)を越えるとあと目指すは頂上のみ。

見上げると頂上の鳥居が視界に入る。

頂上が見えたからといって慌てて先を急ぐことはせず、落ち着いて1,2角進んで休憩のペースを維持。

頂上に近付くにつれて人も増えていく、噂には聞いていたが頂上に続く渋滞だ。

渋滞警報
あの鳥居がゴール

そして13時過ぎ、富士山登頂の碑が立つ頂上鳥居に到着。

AM6時に5合目を発ち、およそ7時間。

誰1人欠けることも怪我することも体調悪くなることも喧嘩することもなく無事登頂。

全ての苦労が報われる瞬間。

天気はもったが、下界は雲に覆われていて見晴らしはイマイチ。

それでもこの達成感で心は何よりも晴れ渡っている。

山頂比較

10代、私も若かった… 30代、捨てたもんじゃない

1998年、10代最後

2009年、30代最初

鳥居を越えて山頂へ。

頂上を示す碑が聳える。

到達点
富士山頂は浅間大社の領地らしい

山頂は山小屋が立ち並び、飲食物や土産物を売る人も多数。

前回私が登った時は9月上旬だったので頂上は開いている店も無く閑散としていた。

シーズンに登るとこんなにも賑わいが違うのかと驚いた。

もっとも前回は11年前なので、今はもう少し違っているのかもしれないが。

山頂比較

閑散 雑然

1998年9月上旬の平日

2009年8月下旬の土曜日

1つの目標を達成したんだし、ということで山頂価格の缶ビール(600円)を1本購入。

4人で1本飲むくらいだったら下山する頃にはアルコールも抜けているだろう。

ということで時間差乾杯で1本のビールを回し飲み。

これまで飲んできた様々なシチュエーションのビールの中でもかなり上位に入る美味しさ。

昼飯のおにぎりも山頂で食す。

気圧の関係かご飯が崩れ易かったような気がする。

しばし休憩して頂上を堪能、ここで今後の予定を立てる。

富士山山頂とはいえ、富士山の最高峰である剣ヶ峰はココから更に先。

山頂火口の周囲を回るお鉢巡りをしてようやく辿り着ける。

案内板によると50分ほどかかるという。

剣ヶ峰まで往復していると下山中に日が暮れる恐れがある。

山頂も霧に包まれてきたので、剣ヶ峰制覇は次回へ持ち越しということに。

次なる目標が出来たので良しとしよう。

そろそろ下山しようかという頃になると山頂の霧がますます濃くなり、細かい雨もパラついてきた。

山頂が我々を帰すまいとしているのかもしれないが、あまり遅くなると日が暮れてしまう。

ウィンドブレーカーを着込み、下山は砂走りという砂の道を駆け下りることになるのでマスクも装備。

下界じゃ不審者
完全防備

14:20下山開始。

細かな雨と濃い霧の中を滑り下りる。

1歩踏み出すとズサーッと滑っていくのをひたすら繰り返す。

予想通り砂埃が凄く、マスクが大いに役立つ。

しかし肌寒くて鼻水が出てしまい、マスクの内側を濡らしてかなり不快になったので外してしまった。

下りはスピードがかなり出るので恐い。

さらに砂が薄いところに足を着くと躓いて転ぶ恐れもある。

滑り下りつつも一瞬の判断で次の足の踏み場を考える。

登りでは同じペースで行けた我々4人パーティーだが下りでは明らかに差がつく。

若者の方が瞬発力と一瞬の判断力があるためかスイスイ進んでいく。

私は常に最後尾で恐る恐る滑り下りる。

登りでは持久力、下りでは瞬発力が要求される。

登りではまだまだ若い者には負けないと思えていたが、下りで若さの違いを思い知らされた気分。

砂に足を埋めつつ滑り下りるのでスニーカーの中は砂利だらけ。

途中で雨は上がったが周囲は相変わらずの霧なので景色も楽しめない。

頂上という目標も無いのでルーチンワークでただただ下るだけ。

山小屋のようなスポットも無く、休憩も数回しただけでアッという間にスタート地点に戻ってこられた。

16:40、スタート地点だった須走口5合目に生還。

明るいうちに戻ってこられて良かった。

登り始めた朝が遠い昔に感じられるほど、実に密度の濃い時間だった。

天気も快晴に始まり、曇り、霧中、雨、さらに下山中は霰が一瞬降ったりとほぼ全天候を経験。

気温も標高が上がるにつれて夏から秋、冬へと移行。

天気といい気温の移り変わりといい、どこか異空間にいたような気すらした。

万歳四唱
無事終了

登り7時間、下り2時間20分。

2時間ほどの睡眠時間で富士山日帰り登山。

11年前の10代の頃よりもハードなスケジュールだった。

それでも登山中の疲労度は前回の方が激しかった気がする。

2回目の余裕か、約1年のジム通いの成果か。

どちらにせよ2度目の富士登頂を果たすことが出来たのは収穫。

しかしまだ最後の砦、剣ヶ峰制覇が残っている。

来年もまた…誰ともなく誰もが口にした気がする。

 

帰りの東名高速はほぼ全区間で渋滞。

強行日帰り登山後の大渋滞は強烈な眠気に襲われる。

何度か落ちかけたが、幸いにして私がハンドルを握る局面が来ることは無く。

ファミレスで食事をして長い長い1日が終わる。

帰宅して驚くべき事実に気が付く。

富士山到達前の健康ランドでトイレに行って以来、1度もトイレに行っていなかった。

AM3時頃から帰宅した22時30分頃まで実に19時間以上。

その間にポカリスエット900ml、水500ml、ビール1/4缶を飲んでいたにも関わらず。

そのほぼ全てが汗で出て行ったということなのだろう。

 

詳細データ

6:00 5合目(標高2,000m)登山道を出発
7:05 6合目(2,400m)
7:47 本6合目(2,700m)
8:50 7合目(3,090m)
9:49 本7合目(3,200m)
10:33 8合目(3,350m)
11:06 本8合目(3,400m)
11:40 8合5勺(3,450m)
12:20 9合目(3,600m)
13:06 山頂(3,720m)
14:20 下山開始
15:26 7合目(3,090m)
16:43 5合目(2,000m)

 

持って行ったもの
装備:スニーカー・ジーパン・Tシャツ・ネルシャツ・ウィンドブレーカー・タオル2枚(頭用・汗拭き用)・バックパック
飲食:ポカリスエット900ml・水500ml・おにぎり5個・飴・グミ・ミントタブレット・栄養補助食品チョコバー

持って行けば良かったもの
軍手…幸い派手に転ぶことは無かったが、手を付くシーンは何度もあった
足首まで覆うくらいの靴…下山の砂走りのときはそう思った(焼け石に水かも)、転んだ時を考えると足首までフォローする靴は良い
100円均一レインコート…私はウィンドブレーカーで行ったが、100円均一のレインコートでも充分大丈夫そうだった
下山後の着替え…Tシャツは汗でビショビショ、靴下は砂利で埃まみれ

 

翌日

予想していた筋肉痛はそれほど酷くなく。

前回はトイレに座るのもキツイほど下半身全てが筋肉痛だったがそれも無く。

やはりジム通い効果か。

でも翌々日の方が筋肉痛が酷かった気がするのは気のせいにしておこう。

 

 

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