読書の頁

これまでに読んだ本の中からお薦めの本や感想など

完全なネタバレはしていないつもりですが、一部そう感じる人もいるかもしれません。
少しでもネタバレが嫌な方は閲覧をお控えください。

 

「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」

増田 俊也

戦後のプロレス界で昭和の巌流島とも呼ばれ、未だに語り草になっている力道山vs木村政彦の一戦。

引き分けにする、という事前のブック(台本)があったとされる試合で力道山がそれを無視して木村をKO。

この試合に至るまでの経緯をメインに、不世出の柔道家・木村政彦の生涯を描いている。

歴史は勝者によって作られる、というのが感じられた。

プロレス界の観点からは力道山目線の資料が数多く存在し、木村政彦は力道山の引き立て役というイメージしか無い。

一方、柔道界の観点からはいわゆる講道館柔道が正史とされ、戦後にプロ柔道へ走った木村政彦は異端とされる。

その木村政彦にスポットが当たったのが90年代の総合格闘技でグレイシー柔術が脚光を浴びてからと言われている。

私もプロレス・格闘技好きだった者の端くれとしてその名前は知っていた木村政彦。

本書は2011年刊行なので実際にはありえないが、仮に10数年前に読んでいたら私のプロレス・格闘技観が変わっていただろうと思わせる1冊だった。

神格・伝説化されている点や、木村政彦に肩入れして描かれているであろう点を差し引いても凄かったのを感じた。

そして1999年の2つの試合について、この本を読んで重なる部分があった。

1つはプロレスvs柔道という意味で1999年1月の橋本真也vs小川直也。

小川がプロレスの暗黙の了解を破って橋本を潰しに行ったとされる試合で、こちらも未だに語り草となっている。

力道山vs木村政彦のまさに逆を行った試合だったのだということを今にして初めて知った。

力道山vs木村政彦が昭和の巌流島ならば、橋本真也vs小川直也は20世紀最後の巌流島だったのかもしれない。

そしてもう1つが日本人vsグレイシー柔術という意味で1999年11月の桜庭和志vsホイラー・グレイシー。

当時、日本人格闘家をことごとく破ってきたグレイシー一族のホイラーを相手に桜庭が勝利した試合で、決まり手はアームロックだった。

その技こそ1951年10月に木村政彦がブラジルの地でエリオ・グレイシー(グレイシー柔術創始者)との試合で勝利した決め技と同じ。

それが縁で外国ではキムラロックとも呼ばれている技。

およそ半世紀の時を超えて同じ技で日本人がグレイシーを破るという因縁。

プロレスラーと柔道家、プロレスと格闘技、日本人とグレイシー柔術、ほぼ同じ時期の1999年にそれぞれの因縁がニアミスをしていた。

それから10年以上が経った今、改めてその2つの試合の深さにも気付かせてくれた1冊だった。

2000年代前半までのプロレス・格闘技を知っていれば楽しめると思うが、本書は分厚い2段組みの単行本、心して読むべし。

 

「百年法」

山田 宗樹

20XX年、不老不死の技術が一般的になったが人口抑制等のために100年での安楽死を強制する法律、百年法。

百年法の施行を巡る官僚や政治家、100年が近付いて怯える一般庶民。

SFをベースにした世界観ながらも政治や高齢化問題など現代社会への警鐘とも見られる側面も。

さらには百年法を阻止しようと動くテロ組織や誰が敵か味方か分からない政治家の権力闘争。

ミステリの要素も盛り込まれて総合的なエンターテイメント小説として楽しめる。

前回ココで紹介した「ジェノサイド」もそうだったが、この作品もSF要素にミステリも入り混じっている。

これまで意識したことは無かったがどうやら私はSF要素が入ったミステリが好きなようだ。

普通のミステリだと現実感が無いと醒めてしまうが、SFだとそれを感じずに純粋に楽しめるからだろうか。

この歳になって自分の趣向の新たな一端を垣間見た気がする。

 

「ジェノサイド」

高野 和明

人類滅亡の危機との情報を受けたアメリカ大統領。

難病の息子の治療費のためにアフリカでの作戦に従事する傭兵。

科学者の父から遺されたメッセージに基づいて研究を始める日本の大学院生。

3つの国で進行するストーリーがやがてリンクしていく。

科学・人種・人類・進化・情報社会・諜報・アメリカ・独裁者・戦争・頭脳戦・親子の絆などなど

様々なテーマが内包されつつも、支離滅裂にならず話の軸はしっかりしている。

江戸川乱歩賞を受賞した作家らしく、ミステリ要素も盛り込まれている。

一方でタイトルのジェノサイド(≒大量虐殺)からも察せられる残酷な描写も多々。

単なる娯楽小説というには重い内容や小難しい理系の描写もある。

理系の描写は流し読みしてしまったが、それでも充分に伝わる面白さ。

分厚い単行本だが苦にならない、ストーリーにのめりこむ小説を久々に読んだ。

そのままハリウッド映画にでも出来そうな壮大なスケール。

これが褒め言葉になっているのかは分からないが…

 

「69」

村上 龍

村上龍がこんな小説も書くんだなーと意外に思うほど、とことん明るく爽やかな青春小説。

所々に出てくる描写で笑えた小説も久しぶりだった。

1969年、米軍基地のある長崎県佐世保市を舞台にした高校生の青春譚。

ベトナム戦争や学生運動など時代を反映した描写も多い。

しかしいつの時代も高校生の男子の考えることは根本的に変わらない。

面白そうだからやってみよう!女子にもてたいからやってみよう!…というような。

そんな普遍性を感じられた。

あとがきを読んでこれが私小説だと知って驚いた。

私が小説から抱く村上龍のイメージとは随分かけ離れている。

この主人公もまさか数年後にドラッグまみれの小説を書いて芥川賞を受賞するとは思ってもみなかったのでは?

随分と楽しそうな高校時代を送っていたんだなと思う。

或いは楽しそうに描く筆力がさすがというべきか。

 

「1Q84」

村上 春樹

事前に内容を一切知らせない広告戦略も奏功し、アッという間に100万部を突破。

村上春樹の小説は欠かさず読んでいる者として当然読んでみた。

・同時進行する2つのストーリー
・どこか達観した主人公
・どこか普通じゃない美少女
・あけっぴろげな性描写
・少しのミステリテイスト
・超常現象
・特徴的な比喩
・象徴的な音楽
・印象的な料理
・すべてを解決させないラスト
etc.

ミリオンセラーを突破した話題作だからといって村上春樹初心者が手を出すのは危険な代物。

内容に関してはいつもの村上春樹作品そのもののように感じた。

"いつもの村上春樹作品そのもの"だって?

やれやれ、僕はいつから文芸評論家になったのだろう。

確かに彼の小説は一通り読んでいるが、それでも偉そうに語れるほどではない。

そもそも沢山本を読んだからといって文芸評論家になれるわけではない。

それ以前に僕は文芸評論家なんかになりたいと思ったことは無い。

何で文芸評論家が出てきたのかサッパリ分からない。

どうやらどこかで200Q年に紛れ込んでしまったらしい。

オーケー、認めよう。

村上春樹の文体をコピーするのは容易ではない。

それっぽく書いてはみてもそれはただの劣化版コピーにしかならない(あるいはそれにすらならない)。

簡単に書いているように見えて実はそうではない。

職業的な作家と素人モノカキとの違いはこうしたところにある。

それは単純なように見えて実に深いものだ。

まるで底の見えない井戸のように。

………

イヤ、1度やってみたかっただけです。

 

「砂漠」

伊坂 幸太郎

大学生活を描いた小説で、自分の頃と重ね合わせて当時を思い出す。

細かい部分での違いはあるが大学生活ってこんなんだったなとしみじみ思い出し羨ましくなる。

チョット前のような気もするが既に5年以上が経過している。

その気になれば何歳になっても大学へ行くことはできる。

何歳になって大学へ行っても友達は出来るかもしれない。

だけど同時代を育った連中に囲まれ、勉強よりも遊びやバイトにいそしんだあの頃。

未熟という名の若さも持って学生生活を送っていたあの頃には戻れない。

そうノスタルジーに浸っている今もいつかはあの頃になる。

今があの頃になったときのために、頑張れ。

読み終わってからいてもたってもいられず、社会人入学が可能な大学をネットで検索していた。

なんてことはまるでない。

 

「夜のピクニック」

恩田 陸

久しぶりに良い小説だったなぁ…と思える本を読んだ。

主役は高校生、一昼夜をかけて80kmの道のりを歩く歩行祭なる学校行事が舞台。

この本を読んで共学の高校って良いなぁ、としみじみ思った。

作者が実際に高校の頃に体験したイベントが元ネタらしいが、後に読んだ作者の書評では

「現実には後半はクタクタで小説の中のように綺麗なものではない」と語っていた。

確かにそうだろうなと思う。

私の高校でも強歩大会なる何十キロかを歩き続ける行事があった。

かったるくて仕方なかったのを覚えているし、友人と歩いたが何を話したのかも覚えていない。

実際に共学校へ行ってそうした行事があったとしても男同士で固まって歩いている自分も想像できる。

綺麗過ぎるきらいのあるフィクションだが、どこか懐かしさを感じさせる。

高校生くらいの頃ならそういう考えしそうだなー、というような。

誰もが何となく思いながら叶わなかった高校時代の綺麗な理想を巧く小説化している。

分かり易い爽やかな青春小説。

 

「坂の上の雲」

司馬 遼太郎

国民的作家の代表作の1つで日露戦争を中心に描いた大作。

明治維新という歴史的改革を経て近代国家の仲間入りを目指した先人の活躍が描かれている。

過去の日本にはあのような素晴らしい人物が存在していたのかと思うと心強い。

その一方で現代日本にも通じる嫌な面も見せる。

明治維新の主役となった薩摩と長州。

国家の一大事である戦争の指揮官を決める人事ですら薩長のバランスを重視。

陸軍と海軍がお互いの体面を維持するために連携した動きが取れない場面が多数。

派閥に基づいた人事、省庁や国と地方の連携の無さ。

そのまま現代の日本に当てはめられてしまえる所が哀しいかな。

構造改革といっても随分根は深いものだということを感じさせられた。

しかしそれらを差し引いても読むべきところがこの本にはある。

バルチック艦隊がじわじわ日本に近づいてくる様子の描き方。

そして日本海海戦での歴史的大勝利の爽快感。

ストーリーは勿論だが、登場人物の発する言葉や立ち振る舞いに重点が置かれているように思う。

海軍の東郷平八郎・秋山真之、陸軍の乃木希典・児玉源太郎・秋山好古など…

要所要所での指揮官達の言動がこの小説をより引き立てている。

文庫全8巻、単行全6巻

 

「模倣犯」

宮部 みゆき

映画化もされたベストセラー。

公園で見つかった女性の右腕が発端となり、事件が明るみに。

犯人は被害者家族を、警察を、大衆を挑発する。

犯人、被害者家族、警察、ルポライター…複雑に絡み合う人間関係。

現実離れしているような事件なのだが、ありえない話ではない、と思わせてしまうリアリティがある。

模倣犯、そのタイトルの意味は最後に判る。

しかし、本を読み進むうちにこのタイトルは読者に向けられているような気がしてきた。

誰でも作中の事件の模倣犯たりえそうな気がしたのだ。

作中の犯人の如く大胆なことは出来ないだろうが、そうしてみたい願望というのが心の底に潜んでいるような。

妄想癖や自尊心が強く、頭の弱い人間が読んだら危険かなと思わせるような内容だった。

読み易くスイスイ読み進めたが、厚いハードカバー上下2巻、更に1ページ2段組なので長かった。

 

「深夜特急」

沢木 耕太郎

この本は読む前から知っていた、あまりにも有名な旅の記録。

インドのデリーからイギリスのロンドンまで乗合バスで向かうというテーマだが、デリーに着くまでに全体のほぼ半分のページを費やしている。

実際は香港からロンドンまでの旅の記録である。

鉄道等ではなく乗合バスを使うという点で著者は、

まるで何の意味も無く、誰にでも可能で、しかし、およそ酔狂な奴でなくてはしそうにないことを、やりたかった

と記している。

この本に興味はあり、読みたいとも思えたのだが、なかなか読む気になれなかった(矛盾しているが…)。

読んだ後の自分の気持ちというのが読む前から容易に想像が出来た。

読めば確実に面白いだろう。

面白いが故にそして私も旅好きの端くれとして自分も同じように旅に出てみたい、と思うだろう。

しかし恐らく読めば読むほど自分にはああいう旅は出来ないと思うようになるだろう…。

そう思わされるのが嫌だった。

また、自分がこれまでしてきた旅も本の内容に比べれば小さいものだと思い知らされるのも嫌だった。

読むと羨ましくなり、自分もしたくなるが出来なさそうで、自分のこれまでの旅が小さく思えそうで…

様々な要素が絡み合って読みたいと思う反面、どうにも手を出しかねていた本だった。

ところが、ひょんなことから単行本全3巻が同時に手に入り、そのページをめくることになった。

本を読みながら、読む前に想像していた通りになっていった。

とても面白かった、自分も共に旅をしているような感覚。

最後の巻で残りのページの厚みがなくなってくると、もうすぐ終わってしまうのだという寂しさを感じた。

読みながらもっと読んでいたい、続いて欲しいと思えた本は実に久しぶりだった。

筆者の年齢から計算すると1970年代の旅なので各国とも本の内容と現在の状況とはだいぶ違うだろう。

だが、香港の描写では私も行ったことがあるので街並みを思い出しながら「そうそう」と妙に懐かしみながら読んでしまった。

ローマの描写では、自分ももっとよく見ておけば良かったと後悔するものもあった。

行ったことのない国々(それが殆ど)の描写ではその風景を想像しながら同時にやはり自分も旅したくなった。

各国での現地人やバックパッカー、ヒッピーなどとの交流も実に面白かったし味わってみたかった。

だが私はどんなに安くても巨大なゴキブリが這ったり、南京虫の巣窟であるホテルの部屋に泊まることが出来るとは思わなかった。

インドで大便後に左手で尻を拭いて"道具から開放される"という感覚を味わえるとも思わなかった。

そしていつ終わるとも知れない旅を1人限られた予算でするだけの勇気もない。

自分の小ささも感じてしまった。

でもやはり自分もそういう旅をしてみたいと思っている。

氏が旅に出た動機の1つに仕事に対するモラトリアム的な要素もあり、そこに共感もした。

氏がこの旅をしたのが26〜27歳にかけての約1年間。

まだチャンスはあると思う反面、そんなものアッという過ぎ去ってしまうとも思える。

氏が本の最後に友人に宛てた電報の内容は「ワレ到着セズ」。

未だ旅は終わっていない…

単行本全3巻・文庫本全6巻

 

「働くことがイヤな人のための本」

中島 義道

私が会社を本格的に辞めたくなっていた時期に見つけた本。

この作者は以前から知っていた。

哲学者で大学教授である氏の作品で私が最初に読んだのは「うるさい日本の私」という本。

日本の生活に溢れる騒音について書かれたものだが、本人が到って真面目なのが大爆笑を誘う。

その本を読んで以来、少し気にしていた作者だったのでこの本のタイトルに目を奪われた。

本書は、作者が架空の人物4人と行なう会話の形式で書かれている。

その4人はそれぞれ働くことや生きることに悩みを抱えているという設定。

4人それぞれの境遇や悩みはかなり極端な部分もあるように思うが、

誰もがそれらの設定のどこかには共感できる部分があるような気がする。

人生とは理不尽なもの、勝手に生まれさせられて、そして死ななければならない。

ならば何の為に生まれてきたのか…本書ではそういった部分にまで発展する。

働くこととは、生きることとは…少々難解な部分もあるし結局答えは出ていない。

勿論そんな簡単に答えが出るものではないだろうし。

結局は各々が考える、哲学するしかないということか。

 

イン ザ・ミソスープ

村上 龍

読売新聞夕刊紙上に連載されていた小説。

かなり強烈な殺人シーンの描写もされている。

ちょうどその時期に神戸の児童猟奇殺害事件が発生。

そして小説の中の殺人犯が半生を語る頃に神戸の事件で14歳の少年が容疑者として逮捕された。

殺戮のシーンはかなり強烈な部分がある。

それも含めて小説の中にのめりこんで行ったというのもあるが…

かなり読みやすかった、そして考えさせられもした。

一見珍妙なタイトル、「イン ザ・ミソスープ」。

その謎は物語の最後に解けるだろう。

多分我々もミソ汁の中に…

 

買ってはいけない

『週刊金曜日』編

市販されている様々な商品の問題点を突き一大ブームになった本。

「買ってはいけないは買ってはいけない」などというややこしい本まで生み出した問題作(?)

地元の古本屋で100円だから買ってしまった。

食べ物、飲み物、洗剤、化粧品、薬、雑貨

ジャンル分けされて各メーカーの商品を名指しで化学的な問題点を突いて批判している。

書いてあることはとりあえず事実だろうが、科学的な説明が多くチョット解り辛い。

そんなに目くじら立てなくてもいいんじゃないかな?ってのが第1の感想。

どんなものにも危険性はあるわけだから。

4者の共著なのだが彼らは一体どのような生活をしているのかが気になる。

さぞ健康的な素晴らしい生活をしていらっしゃるのだろう。

最後に4者の座談会の様子が掲載されている。

子供が買ってきたおかしもチェックして色のついたものはその場で取り上げてしまうという。

健康にいちいち気を使って食べたいものも食べられない人生。

添加物や着色料など気にせずに食べたいものを好きなだけ食べる人生。

どっちが幸せかな?

 

「梟の城」

司馬 遼太郎

司馬遼太郎の出世作(?)、1960年の直木賞を受賞した作である。

戦国時代のスパイたる伊賀忍者を描いた作品。

秀吉が天下を取り、朝鮮出兵等をしていた時代背景。

秀吉を暗殺せよとの指令に己の生き方を見つめる主人公葛籠重蔵。

彼を取り巻く同じ伊賀忍者、そして甲賀忍者、くノ一。

誰が敵で誰が味方か、裏にいるのは誰か、様々な人間模様。

常人離れした忍者の生き方や術がうまく描写されている。

クライマックスでは読んでいながら緊張した。

最後にはどんでん返しとまではいかないが、妙に納得できる一説もある。

惜しむらくは最後があまりにも綺麗に平和にまとまりすぎている点。

もっと最後まで波瀾に満ちていても良かったのではないかとも思う。

長編1巻

 

「燃えよ剣」

司馬 遼太郎

新選組副長・土方歳三の生涯を描いた歴史小説。

私が新選組に興味を持つきっかけになった本。

高校時代に一度読み、最近読み返して改めて名作だと実感。

幕末に興味のない人でも是非読んでほしい。

新選組を強くすることに己を賭け、闘いに明け暮れた歳三。

滅びゆく幕府側で最後まで新政府に抵抗した。

近藤勇、沖田総司らの味もよく出ている。

古武士を思わせる近藤、純粋無垢な沖田、そして表面上はあくまでも冷静・冷徹な土方。

自らの思想などは持たず、戦いの中でしか己を表現できなかった歳三。

その彼が近藤・沖田や恋人の前でだけ見せた人間臭さ、優しさもうまく描かれている。

幕末の流れもつかむことが出来る。

 上下巻

 

コズミック

清流院流水

1200の密室で1200人が殺されるというミステリー。

犯人は密室卿と名乗る人物、マスコミに犯行予告声明文を送りつけてきた。

正月1日から毎日何人も殺されていく、そして殺された人の背中には"密室"の血文字。

前半部分では不可能犯罪と思わせるシーンで多数の密室での被害者を描いている。

後半部分になると日本探偵クラブという組織が登場、事件の謎を解いていく。

…と、ここまではかなり本格ミステリーの様相を呈している。

しかし後半ではかなりコミック的になってくる。

探偵クラブの登場人物が現実離れしすぎている。バカバカしさに笑えるシーンが多数ある。

それでも密室のトリックや犯人なども一応の解決をみせる。

トリックも犯人もかなり壮大、思いもつかないという点では納得できる。

新聞の本紹介の欄に載っていたので図書館で借りて読んでみた。

かなりブ厚い新書本。おまけに1ページ2段組。暇つぶしにしてはチョット長いかもしれない。

 

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