＊憲法資料 「聖徳太子十七箇条憲法」 一ニ曰ク、 和ヲ以テ貴シト為（な）シ、忤フコト無キヲ宗（むね）ト爲セ、人皆熏（たむ ろ）有リ、亦達（またさと）レル者少シ、是ヲ以テ、或ハ君父ニ順（したが）ハ ズシテ乍（ま）タ隣里ニ違フ、然レドモ上和（やは）ギ、下睦（むつ）ビテ、事 ヲ論（あげつら）フトキハ、則チ事理自（ことわりおのづか）ラ通フ、何事カ成 ラザラム 二ニ日ク、 篤（あつ）ク三寶ヲ敬ヘ、三寶ハ佛法僧ナリ、則チ四生ノ終？（よりどころ）、 萬國ノ極宗（きわめのむね）ナリ、何ノ世何ノ人カ是ノ法ヲ貴バザル、人尤（は なは）ダ悪シキモノハ鮮（すくな）シ、能ク教フルヲモテ従ヒヌ、其レ三寶ニ？ （よ）リマツラスバ、何ヲ以テカ枉（まが）レルヲ直サム 三ニ日ク、 詔ヲ承ハリテハ必ズ謹メ、君ヲバ則チ天トス、天覆（おほ）ヒ地載セテ四時順 （めぐ）リ行キ、萬氣通フコトヲ得、地天ヲ覆ハント欲（す）ルトキハ則チ壊（ やぶ）ルルコトヲ致サムノミ、是ヲ以テ君言（のたま）フトキハ臣承ハリ、上 かみ）行フトキハ下靡（なび）ク、故ニ詔ヲ承ハリテハ必ズ慎（つつし）メ、 謹マズンバ自カラニ敗レナム 四ニ日ク、 群卿百僚、禮ヲ以テ本ト爲（せ）ヨ、其レ民ヲ治ムルノ本ハ要（かなら）ズ禮 ニ在リ上禮ナキトキハ下齊（ととの）ホラズ、下禮無キトキハ、必ズ罪有リ、是 ヲ以テ群臣禮有ルトキハ位次亂レズ、百姓禮有ルトキハ國家自カラ治マル 五ニ日ク、 餮（むさぼり）ヲ絶チ欲ヲ棄テテ、明カニ訴訟ヲ辨（さだ）メヨ、其レ百姓ノ 訟ハ、一日ニ、千事アリ、一日スラ尚爾（しか）ルヲ、况ヤ歳ヲ累（かさ）ネテ ヲヤ、頃（このご）ロ訟ヲ治ムル者利ヲ得テ常ト爲シ、賄（まかなひ）ヲ見テ？献 （ことわり）ヲ聽（ゆる）ス、便（すなは）チ財有ルモノノ訟ハ、石ヲモテ水ニ投 グルガ如シ、乏シキ者ノ訟ハ、水ヲモテ石ニ投グルニ似タリ、是ヲ以テ貧シキ民、 則チ所由（よるところ）ヲ知ラズ臣ノ道亦焉（ここ）ニ闕（か）ケヌ 六ニ日ク、 悪ヲ懲（こら）シ善ヲ勸ムルハ古ノ良典（よきのり）ナリ、是ヲ以テ、人ノ善 ヲ匿スコト無ク、悪ヲ見テハ必ズ匡（ただ）セ、其レ諂（へつら）ヒ、詐（あざ む）ック者ハ、則チ國家ヲ覆ヘス利器タリ、人民ヲ絶ツノ鋒刄タリ、亦侫（かたま） シク媚（こ）ブル者ハ上ニ對（むか）ヒテハ則チ好ミテ下ノ過（あやまち）ヲ説キ、 下ニ逢ヒテハ則チ上ノ失（あやまち）ヲ誹謗（そし）ル、其レ如此ノ人ハ皆君ニ忠 無ク、民ニ仁ナシ、是レ大亂ノ本ナリ 七ニ日ク、人各任有リ、掌ルコト宜シク濫 （みだ）レザルベシ、其レ賢哲官ニ任ストキハ、頌音則チ起リ、奸者官ヲ有（たも） ツトキハ、禍？亂則チ繁（しげ）シ、世ニ生レナガラ知ルコト少ナケレドモ、剋 （よ）ク念ヒテ聖ト作（な）ル、事大小トナク、賢ニ遭ヒテ自カラ寛（ゆたか）ナリ、 此ニ因リテ國家永ク久シクシテ、社稷（いへ）危キコト？（な）シ、故レ古ノ聖王、 官ヲ爲（さだ）メテ以テ人ヲ求ム、人ノ爲ニ官ヲ求メタマハズ 八ニ日ク、 群卿百僚、早ク朝（まい）リ晏（おそ）ク退（まか）デヨ、公事監靡（いとま な）シ、終日ニモ盡シ難シ、是ヲ以テ遅ク朝（まい）レバ、急（すみやか）ナル ニ逮（およ）バズ、早ク退レバ、必ズ事盡サズ 九ニ日ク、 信ハ是レ義ノ本ナリ、事毎ニ信有レ、其レ善悪成敗、要（かなら）ズ信ニ在リ、 群臣共ニ信アルトキハ、何事カ成ラザラム、群臣信ナケレバ、萬事？ニ敗（やぶ ）ル 十ニ日ク、 忿（こころのいかり）ヲ絶チ瞋（おもてのいかり）ヲ棄テテ、人ノ違（たが） フヲ怒ラザレ、人皆心有リ、心各執ルコト有リ、彼レ是（よし）ムズレバ、則 チ我レハ非（まし）ムズル、我レ是ムズレバ、則チ彼レ非ムズル、我レ必ズシモ 聖ニ非ズ、彼レ必ズシモ愚ニ非ズ、共ニ是レ凡夫ノミ、是非ノ理、？（たれ）カ 能ク定ム可キ、相共ニ賢愚ナルコト、鐶（みみがね）ノ端尤キガ如シ、是ヲ以テ、 彼ノ人ハ瞋（いか）ルト雖モ、還ツテ我ガ失（あやまち）ヲ恐レヨ、我レ獨リ得 タリト雖モ、衆（もろもろ）ニ従ヒテ同ジク擧（おこな）ヘ 十一ニ日ク、 功過ヲ明察（あきらか）ニシテ、賞罰必ズ當テヨ、日者（このごろ）、賞、 功ニ在テセズ、罰、罪ニ在テセズ、事ヲ執ル群卿、宜シク賞罰ヲ明カニスベシ 十二ニ日ク、 国司、國造、百姓ニ斂メルコト？レ、國ニ君非（な）シ、民ニ両主無シ、率 土（くにのうち）ノ兆民、王ヲ以テ主ト爲ス、所任官司ハ、皆是レ王臣ナリ、 何ゾ敢テ公（おほやけ）ト與（とも）ニ、百姓ニ賦（おさ）メ斂（ト）ラム 十三日ク、 諸ノ任セル官者（つかさびと）、同ジク職掌ヲ知レ、或ハ病ヒシ、或イハ使シ テ、事ニ闕（おこた）ルラム、然レドモ知ルコトヲ得ル日ニハ、和（あまな） フコト曾（いむさき）ヨリ識（し）レルガ如クセヨ、其レ與（あずか）リ聞ク コト非（な）シトイフヲ以テ、公務ヲ妨グルコト勿レ 十四日ク、 群臣百僚、嫉妬（ねたみ）有ルコト無カレ、我レ既ニ人ヲ嫉（ねた）メバ、人 亦我ヲ嫉ム、嫉妬ノ患、其レ極ヲ知ラズ、所以ニ智己レニ勝（まさ）レバ則チ 悦バズ、才己レニ優レバ則チ嫉妬（ねた）ム、是ヲ以テ五百歳（いほとせ）ノ 後、乃賢ニ遇ハシムレドモ、千載（ちとせ）ニシテモ以テ一聖ヲ待ツコト難シ、 其レ賢聖（けんせい）ヲ得ザルトキハ、何ヲ以テ國ヲ治メム 十五ニ日ク、 私ヲ背キテ公ニ向クハ、是レ臣ノ道ナリ、凡ソ人私有レバ必ズ恨有リ、憾 うらみ）有ルトキハ必ズ同（ととのほ）ラズ、同ラザレバ、則チ制ニ違ヒ 法ヲ害ル、故ニ初ノ章ニ云ヘラク、上下和（あまな）ヒ諧（ととのほ）レト、 其レ亦是ノ情（こころ）ナル歟（かな） 十六ニ日ク、 民ヲ使フニ時ヲ以テスルハ古ノ良典ナリ、故（か）レ冬月ニハ間（いとま） 有リテ以テ民ヲ使フ可シ、春ヨリ秋ニ至リテハ、農桑ノ節ナリ、民ヲ使フ可 カラズ、其レ農セザレバ何ヲカ食（は）マム、桑トラズバ何ヲカ服（き）ム 十七ニ日ク、 大事ハ獨リ斷（さだ）ム可カラズ、必ズシモ衆ト（もろもろ）ト興（とも） ニ論（あげつら）フベシ、小事ハ是レ輕シ、必ズシモ衆トス可カラズ、唯大 事ヲ論フニ逮（およ）ビテハ、若シ失（あやまち）有ラムコトヲ疑フ、故ニ 衆ト與ニ相辨（わきま）フルトキハ、辭（こと）則チ、理（ことわり）ヲ得ム -------(以上で「聖徳太子十七条憲法」の全文の表示が終了しました。)--------- Copyright (C)1994 AICON.M COL.TD by MORIKUNI HIDEO / 11.19.1994 (HEISEI6)