5.山の雑学
5.1 準備運動について
5.2 山の歩き方について
5.3 スズメバチに注意
5.4 水分・糖分・塩分の補給について
5.5 山のマナーについて
5.6 山の服装・持ち物について
5.7 雷に遭わないためには
5.8 筋肉痛、こむら返りにならないためには
5.山の雑学
5.1準備運動について
歩き始める前に準備運動は必要です。特にストレッチ(伸ばす、張る)体操は、長時間歩いているときに起こりやすいこむらがえり(ふくらはぎの筋肉がつってしまうこと)や、アキレス腱炎の予防に有効です。
もしこむらがえりが起こったときは、アキレス腱をのばすような気持で足首の関節を直角になるまで曲げれば、簡単に治まります。
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5.2 山の歩き方について
上りも、下りも小股でリズムをとりながら歩くようにすると、比較的疲労が少なくて済みます。小股だと足が滑ったときに、歩幅が狭い方が片方の足が素早く着地出来るので、しりもちをつくことが少なくて済みます。
脚力増強のために普段のトレーニングは大切です。歩き方の基本は、かかとで着地してから重心を親指の付け根に移し、そこで踏み切る事を習慣づけして下さい。
多くの人は、小指に重心をおいて踏み切るという不合理なことをして、エネルギーをロスしています。そのような人は靴のかかとの外側の摩耗度が高いので、直ぐわかります。
足の踏みきり方を合理的に行えるよう習慣づけることによって、脚力の増強、運動能力の向上に役立ちます。それとともに、脚の内側(特に内もも)には、漢方医学で言うツボが各所にあって、親指の付け根で踏み切ることにより、内側の筋肉が刺激され、それがツボに及ぶことになるので、健康生活のためにも合わせて有効となります。
それから日常生活で大股で歩く習慣を身につけて下さい。大股で歩くためには、強く踏み切ることが必要となり、それが運動量を増やす結果になるからです。
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5.3 スズメバチに注意
初秋頃から、スズメバチが特に目に付くようになります。スズメバチは刺されると、非常に強い衝撃を受けるので注意して下さい。虫除けのスプレーを持ち歩くことも一つの方法だと思います。
ハチは黒いものに対して、攻撃的になる習性があります。それは、ハチの巣を好んで漁り、密を含めて根こそぎ食べてしまう熊が、生来の天敵になっているらしく、黒いものには反射的に襲いかかるということで、帽子や衣類、髪の毛「黒」は要注意です。また神経質で、高音が嫌いだと言われているので、甲高い声は禁物です。
- 襲われたら
ハチに刺されると激痛画は知り、赤く腫れ上がります。また、複数回刺されると抗原抗体反応によりアレルギー症状が出ることも多く、アナフィラキシーと呼ばれるショック症状で死に至ることもあります。
手当は毒液が非常に水に溶けやすいので、まず流水で洗うかぬれ手ぬぐいを当て、坑ヒスタミン剤入りのステロイド軟膏を塗って病院で診て貰います。
ひどい場合は坑ヒスタミン剤の内服も効果的でしょう。
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5.4 水分・糖分・塩分の補給について
水は十分に持ち歩きたいものです。それは、水分を補給しないと、血液が濃縮して筋肉の脱力感や頭痛を伴う脱水症状を起こしやすくなると言われています。
糖分については、エネルギー源として一般的に必需品になっています。
塩分については、必要性に気づいていない人が非常に多いように思われます。特に夏の山歩きでは多量の汗をかきますが、そのとき、水分と糖分だけの補給では、片手落ちになります。それは、汗の中には塩分が多量に含まれていることを思えば、理解できるはずです。塩分の補給を怠ると、血液が薄くなってしまい、筋肉の脱力感、意識不明、ケイレン等を伴う低張性脱水症をおこし、度を過ぎると、死に至ることもあると言われています。よくよく肝に銘じておきたいものです。
なを、塩分は、塩そのものを持ち歩くよりも、その代替えとして梅干しが適当でしょう。私は休憩の度ごとに少量ずつでも、以上の3点を補給するよう習慣づけております。
それから、人家が上に無いところでも、小沢の水は飲まない方が良さそうです。そのことについては、数年前に北海道で、小沢の水を飲んだ人の中から、狐の媒介による奇病にかかった人が各地で発見されたということを、新聞紙上で見たことがあります。それを知ってからは、たとえ奥山でも、地表面を流れている水は飲まないようにしております。あえて山の水を飲むときは湧水に限っています。
なお疲労回復に効能があると言われるアミノ酸や乳酸の分解を促して、血液の流れをスムーズにして、新陳代謝を高める働きがあると言われるクエン酸をはじめとし、糖分、塩分をともに含有したスポーツドリンクも、有用だと思います。(須藤恒雄著 秩父山歩 より参考)
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5.5 山のマナーについて
- 山では登り優先、木道では右側通行が基本。幅の狭い登山道では上り優先で、下りの人が道を譲るのがマナー。道を譲るときは、足下の確かな場所で山側に寄って、待ちましょう。
- 登山道や遊歩道、木道を外れて、お花畑や湿原に入れないようにしましょう。
- 動物や植物を持ち帰ったり、採取しないようにしましょう。
- ゴミは責任を持って持ち帰りましょう。気がついたゴミも持ち帰りましょう。
- どんなに気軽なハイキングでも、自然相手のこと、服装や装備を整えることもマナーと心得ましょう。
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5.6 山の服装・持ち物について
- タオル
- 汗拭きや温泉入浴の際にとっても重宝する。2枚はもっていた方がよい。
- 帽子
- 直射日光や寒さから頭を守るのに重要。ツバのあるものが望ましい。
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- 雨具
- ゴアテック製品が望ましい。雨を防ぐとともに防寒着としても活躍する。
- 防寒着
- フリースやセーターなどが最適。雨具でも代用出来る。
- シャッツ
- 長袖のもので速乾性のものが望ましい。
- 手袋
- 防水製の素材の物が望ましい。
- スボン
- シーパンは水に濡れると重くなるので山には不向き。山用のストレッチ製のスラックスが歩きやすい。
- ストック
- 体重の分散とバランスの保持。少しでも楽に登れるように使う。
- 靴下
- 吸水性、発汗性のある物、擦れによる豆の防止。濡れたときの着替えに予備1足必要。
- スパッツ
- 雨や雪・砂利などの靴への侵入を防ぐ。
- 靴
- 標高の高い山や道が悪い山などは革製の登山靴が望ましい。重たいザックの時など靴底が硬い方が疲れにくいし、歩きやすい。低山など道の比較的良い山では軽登山靴で楽に歩ける。また足首の保護のためにもくるぶしがかくれる靴がよい。
- ランプ
- 針葉樹など木々が生い茂っているところ等は日中でも必要となってくる場合がある。出来れば頭につけるヘッドランプが望ましい。予備の電球、電池も忘れずに入れておく。
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5.7 雷に遭わないためには
一番確実な方法は天気予報等をチェックし、可能性がある日には山に出かけない事です。
とはいえ、行ける日が限られている人はそうもいきません。
そのよう場合はなるべく早朝に登り始め、雷雨に遭いやすい午後3時位までには行動を終える様にします。
しかし、不幸にして雷雲に遭遇してしまったらどうすればよいでしょう。
雷から逃げる方法
- 雷雲までの距離を知る
まず雷鳴が聞こえてきたら、まずは雷雲までの距離を逐一把握できる体制を整えましょう。
音速は毎秒340mですから、雷雲までの距離は(毎秒340m×光ってから雷鳴が聞こえるまでの秒数)で求めることができます。
稲光がわかりにくいときはAMラジオを用意しておき、周波数を1600Hz以上に合わせておくと、雑音で判断できます。
初期の雷鳴は20〜30km先に来たあたりで聞こえてくるので、雷雲の移動速度が平均的な時速50kmとすれば、早ければ24分後に到達するわけですから、のんびりしているわけにいきません。
- 危険の少ないと思われる方へ逃げる
雷雲までの距離を把握したら、なるべく早く安全地帯へ避難しましょう。
稜線上にいるときは、その場所が一番高いところでなくても安心は出来ません。
雷雲の進行方向と逆の低地へ逃げるのがもっとも手堅い方法です。
なお、避難の際は集団でくっついて避難しないようにします。
人体は絶縁体に近いのですが、わずかに電気を帯びていて、これを向かい合わせると、即席コンデンサーのようになってしまうからです。
お互いが見える範囲でなるべく離れて行動するようにして下さい。
また、頭部や胸には金属をつけておかないようにしましょう。上半身から入電すると、呼吸中枢を破壊されて即死します。
ただし、ズボンのジッパーなど下半身の金属類は沿面放電を誘電し、体内への入電を減らすので、この限りではありません。
それと、ピッケル類を石突きを上にしてザックにつけている人は速やかにはずし、シャフトを横にして持つようにします。
- 保護角に入る
大粒の雨は霰(あられ)や雹(ひょう)になれなかったものなので、これが降ってきたら、雷雲はもう真上まで来ています。
これ以上逃げられないという所まで来たら、高い物があるときはその保護角の中に入りましょう。
保護角を求めるのには公式がありますが、だいたい仰角45度以内と考えておけばOKです。立ち木の下に避難する場合は、万一落雷した場合に感電するのを避けるため、根元から2m以上離れて下さい。
- 待避姿勢をとる
保護角に入ったら待避姿勢をとりましょう。大気中には常時きわめて微量の電流が流れていて、その電位は地表で0V、1mで100〜300V位ですが、雷雲が接近すると1mあたり1万Vの高圧になります。
したがって、これを突き破らないように、姿勢はなるべく低くしなければなりません。ただし、腹這いは逆効果です。ひとは突然大きな音を聞いたときなど、無意識にしゃがんで膝をかかえるような姿勢をとりますが、この姿勢が待避姿勢として有効でしょう。
その際、耳を押さえて口を開けると、少しでも鼓膜の損傷を防ぐことが出来ます。
なお、待避姿勢をとる際には、下に断熱マットなどを敷けばさらに良いでしょう。登山靴の底も絶縁体のゴムですが、薄いので沿面放電を誘発して爆発するぐらいで、役に立ちません。
- 万一被雷したら
雷の直撃を受ければ、まず間違いなく即死しますが、直ぐ近くに落ちてショック症状になった場合は、電気ショック療法と同じ様な経過をたどると言われています。
意識喪失→四肢屈曲→四肢伸展→全身痙攣→2〜3秒無呼吸→深い呼吸に移行→睡眠→20〜30分後意識回復というものです。
雷撃を受けた場合はたいていショックで心臓が停止していますので、無事な人がまず心臓蘇生を行います。雷によるやけど自体はあまりひどくならないので、冷やす程度でよいでしょう。
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5.8 筋肉痛、こむら返りにならないためには
登山の途中で、痙攣がおきたのか、足を伸ばしたり、トントンたたいたりしている人をよく見かける。
あるいは、夜中に足がつって困るといったことをよく聞く。これは筋肉が痙攣(硬直、攣縮ともいう)を起こしているからで、部分的に筋肉の緊張が強くなったために、筋肉が収縮して非常に強い痛みがでるのである。
- 筋肉痛の原因は
筋肉内の乳酸菌の過剰、PHの低下、温熱の低下などが重要な要素と考えられている。
筋肉痛になった筋肉組織は、乳酸、炭酸、その他の代謝産物によって過度に酸性になっている。
過度の負荷や不適切な負荷、トレーニング不足などが原因になることもある。筋肉痛は肉ばなれと筋断裂につながる初期段階とも考えられる。
- 筋断裂の原因は
一般には準備不足、寒さ、そして強度の疲労、度を超した練習などによって起こりやすい。この症状としては、ムチで打たれたり、蹴られたように感じる鋭い痛み、腫れ、血腫などが見られる。
- 肉ばなれの原因は
筋肉の運動神経の乱れ、ダッシュして急停止したきや、緊張亢進による弾性不足、筋炎と筋肉への血液供給の低下、ウォームアップの不足、局所的過度の疲労などで起こる。
またウエイトの掛けすぎ、地面の凹凸、低温と高湿も原因になる。
- こむらがえりの原因は
筋肉の緊張が局所的に高まり、その結果、強い痛みを伴う筋肉の収縮でおこる。主な原因としては、
- 過度のストレスや不適切なトレーニング(準備不足、寒さ、強度の疲労、度をこえたトレーニングなど)
- 血液の循環障害(低体温症、靴下のゴムやバンテージによる血管の圧迫など)。
- 体内のカリウムやナトリウムなどの電解質のバランスの崩れ(塩分の欠乏)。
- カルシウム不足
とりわけ中高年者が、足がつると訴える場合は、循環器の機能が衰えて血液の流れが悪くなっているためと考えられる。夜中によく足がつるという人は、冷えたり、カルシウム不足からくることが多い。
- 登山中のケイレンの原因は
登山中のケンレンであるが、経験者でないとわからないほどの痛さで、一度起こるといつまた起こるかと不安になる。これには筋肉への酸素不足が考えられる。
激しい運動で筋肉に十分な酸素がいきわたらなくなって、筋肉疲労を起こした状態になっているからである。また、汗ととともにカリウムやナトリウムが体外に放出されてしまって、電解質のバランスが崩れてもおこる。
休憩中のケイレンでは、汗をかいたために筋肉が急激に冷えて、血液の流れが悪くなったためにおこるものである。
あるいは、長い間運動していなかった人が、急に激しい運動をしたために急激な筋肉の疲労がきて、ケイレンをおこすこもある。
- 筋肉痛やケイレンの対処法
あきらかな筋断裂、肉離れなどの受傷直後ではRICE療法が必要である。
Rest(安静)-患部を安静にする
Icing(冷やす)-冷湿布
Comoression(圧迫)-腫れがひどくならないように圧迫固定
Elevation(高挙)-充血しないように、患部を心臓より高くする。
重症例では3週間、軽症例では2〜3週間の局所の固定の後湿熱療法、マッサージをおこなう。
登山中あるいは一休みしている間に起こる筋肉の痛み、ケイレンに対しては、
- 体をあたためる。
冷えた体や筋肉をあたためるために、ぬれた下着を着替えたりマッサージをする。
- 水分を十分にとる。
多量に汗をかいたために不足した水分を補い、食塩の錠剤やバランスのとれたスポーツドリンクを飲む。
崩れた電解質のバランスを戻すためにも、たっぷりと水分をとること。その際暖かい紅茶やココアなどがあれば、体を温める事もできるので、より効果的である。
- ケイレンした部分をゆるめる
四肢の圧迫を除去し血液の循環をよくし、ゆったりした気分で十分な休憩をとる。局所のマッサージとストレッチを十分に行う。多量に汗をかいたために不足した水分の補給を行う。
この3つが基本的な対処法であるが、水分と一緒に、エネルギーにかわりやすい糖分をたっぷりとることで、疲労回復もはやくなる。
- 山で足がつらないための予防法
冷え性の人は、体が冷えないよう、血液の循環をよくするために、日頃から衣類や食べ物などに気を配る習慣をつけておくとよい。
運動不足も急激な疲労の原因となるので、山登りをするには、少しずつトレーニングを重ねて、体力をつけておきたいものである。これは事故や遭難の予防にもなる。
そして山に登る数日前から、睡眠を十分にとるように心がけ、体調を整えておくことも大切である。
疲れた体のまま山に登ることは、よけいなストレスを体に与えることになる。
登る前には十分ストレッチングを行って、体に酸素を十分いきわたらせ、筋肉をほぐしておくと体もあたたまる。
下山後にもクーリングダウンを行って、疲れた筋肉をもみほぐしておくと、疲れも早くとれ筋肉痛にも有効である。
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