新・闘わないプログラマ No.360

……勉強会


ええと、『「ネットワーク技術」勉強会』という本を書きました。12月1日発売予定でして、前作と違い完全書き下ろしになっています。え? 「正式なタイトルは『Lepton先生の「ネットワーク技術」勉強会』じゃないのか」ですか? いや、あははは……。

ええとですね、つまりその、なんと言いますか、最初に言い訳させてください。
確か、半年近く前の6月頃のことだったと記憶しているのですが、「今度の本のタイトル、どうしましょ」という話を編集者さんとしました。
「営業から、今度の本は『Leptonの〜』みたいなタイトルにしたい、という話がありまして」
「いやあ、それは……」
「そのほうが売りやすいそうで」
「そんな無名な名前をタイトルに入れたって売り上げに関係ないでしょ」
「いやいや、そんなことは……」
「帯に入るくらいなら仕方ないですけど、とにかく、タイトルに入れることだけは避けてください、お願いします m(_ _)m」
「ま、なんとかその方向で行くように頑張ってみます」
ということで、一件落着したはずだったのですが……

そして時は過ぎ、まだ夏の余韻を残している9月の某日の夜、舞台は、東京は四谷にある翔泳社の会議室。登場人物は、翔泳社の編集さんと営業さん数名、そして、会議室の出入り口から一番遠い席に座らされた私。
「で、本のタイトルのことなんですが」
「はいはい」
「営業としては、やっぱりどうしても『Leptonの〜』と入れたいと申しておりまして」
「ぜひともお願いしたい、と。もう、それだけで売り上げに天と地ほどの差が……」
「(んなわけ無いでしょ) いやあ、でも、その」
「了解していただくまでは、お帰りいただくわけには……」
そのとき、私は自分の置かれている状況を改めて認識しました。私の座っている席は出口から一番遠いところ。しかもこの狭い会議室では、他の人に立ってもらわないと出口までたどり着けそうにもありません。
「いや、あのですね」
「夜道は暗いですよね〜」
「へ?」
「もう、原稿は全部もらっちゃっているし、不慮の事故とかあっても……」
「へ?」
「東京湾の水は冷たかったりするかも知れないですよね〜」
「へ? いや、まだそんなに冷たくないかも……いやいやそういう問題じゃなくて……」
そんなわけで、泣く泣くタイトルに『Leptonの〜』と入れることを了承した私なのでありました。
(この物語はフィクションであり、実在の人物や団体とは一切関係がありません。たぶん)

その後、『Leptonの〜』が『Lepton先生の〜』にパワーアップ(?)して、正式タイトルは副題も含めると『Lepton先生の「ネットワーク技術」勉強会 なるほど!連発の9日間』となるようです。
いやもう、これだけ恥ずかしい思いをしたのですから、少なくとも10万部くらいは売ってください>翔泳社の営業の方 (←おい)。

って、言い訳だけしていても仕方ないので、本の紹介でも。
前作は、ここの内容をベースにして本に仕立て上げたわけですが、やっぱり書き下ろしでちゃんと本を書くべきではないか、とはずっと思っていました。あ、ちなみに余談ですが、前作については、翔泳社の「ワンダフルクリエイターズ」というサイトの「本づくりの横顔」というところに寄稿しましたので、ヒマがあったら見てみてください。
さて、今度の本は、ネットワーク技術の本です。ネットワーク技術についての知識があまり無い人でも読めるように書いてみました(一応)。内容的には、階層モデルで言えば下のほうの層を重点的にやっていて、逆に上位のアプリケーション層近辺の話はあまり入っていません。これは、限りあるページ数の中でどこを取捨選択するかという話と、できるだけ本としての独自性を出したい、ということで、あえて、意識的にそうしています。
とは言え、下の階層の話でも、ページ数の都合で泣く泣く割愛した話題もたくさんあります。それらは『「ネットワーク技術」勉強会 Part 2』をお待ちください(って、そんなもん出るのか?)
最初の構想の段階から「とにかく図をたくさん入れたい」と思っていまして、前作のイラストを描いて頂いた水野真帆さんに、それらの図を手書き風の絵にして頂きました。枚数が異常に多かったので、水野さんも大変だったのではないか、と思います。おかげで紙面が、技術書らしからぬ柔らかな雰囲気になったのではないかな、と思っていますが、どんなものでしょうか。
書き方のスタイルとしては「講義+会話」で、すべて話し言葉で書かれています。こういうやり方で1冊本が書けるか実験してみたかった、というのが一番大きな理由だったりするかも知れません(←って、失敗したらどうするつもりだったんだよ ←そもそも成功しているかどうかすら、まだわからないかも)。
ちなみに、今回の本を書き始めたのは5月の終わり。とりあえず書き終えたのが9月の終わり。執筆期間としては約4ヶ月でした。完全書き下ろしだったので、このサイトの文章をベースにした前作(執筆期間約2ヶ月)より、もっと辛かったような気がします。何せ、平日は仕事をしていて土日くらいしかまともに時間が取れないわけですから……と言いつつ、夏休みをしっかり取って北海道に遊びに行ってたりもしたわけですが。台風のせいで帰りが1日伸びて、執筆の予定が狂って慌てた、というのは秘密です。
今回の本は特に図が多かったので、文章を書いているより図を描いている時間のほうが長かったかも知れません。図は、私のほうで白紙に鉛筆で手書きしたものをスキャナーで読ませて、それをメールで編集者さんに送りました。それを、イラストレータの水野さんに絵にしてもらったものが本に載っています。コンピュータ関係の書籍でも、著者の書いた絵をそのまま載せている本を最近よく見かけるのですが、そういうことは絵画のセンスゼロの私には不可能なことだったりして、絵の描ける人がうらやましい限りです。

というわけで前作が、プログラミングとかプログラマとか、そういう内容だったので、今回は全然別のことを書きたいなあ、ということでネットワークをテーマにした本を書いてみました。
次作は、売れセンを狙って恋愛小説でも……タイトルは『ノルウェイの森で愛を叫んだ電車男』とか。ダメですかそうですか。

[前へ] [次へ]

[Home] [戻る]


mailto:lepton@amy.hi-ho.ne.jp